2001年度 採集記(福島県 カミキリ編 -2-)

家族旅行

いよいよ本格的な採集シーズンに突入し、虫達もどんどん発生している状況である。

とくにこの時期は梅雨に入る前であり、夏日となる1日1日が貴重である。

限られたスケジュールの中で採集をやっている私にとっては、1日たりとも無駄にしたくない。

どのチャンネルのニュースでも、この週末は梅雨に突入する前の「最後の好天」と口を揃えて伝えている。何が何でも採集へ行きたいところである。

とは言っても、「毎週毎週」置き去りにされている家族のことを考えると、さすがに単独で家を飛びだすのも気が引ける。

今まで随分と我が儘を言ってきただけに、せめてもの罪滅ぼしとして、今回は温泉旅行を兼ねて家族で出撃することにした。

どれだけ今までの鬱憤を晴らしてあげられるかどうかは分からないが、家で悶々と時間を過ごさせるよりは遥かにいいだろう(私の勝手な判断)。

まあ、普段私がどんなところで虫採りをしているのか見てもらいたかったというのもある。

無論、今回の虫採りはそれなりの程度になると思うが、出かけられるだけ幸せだ。

それでは、大自然の佇む南会津へ家族で出かけるとしよう。



2001.06.03 (Sun)

福島県 南会津郡

   天気:快晴
   気温:28.5 度
   湿度:46 %
   風力:2(軽風)
福島産カミキリ、さくっと南会津編

● 前日から南会津入り

今回は家族連れである。

南会津へ初めて行く人間にとって、日帰りというのは酷な話だろう。

というわけで、土曜日の昼過ぎに東京を発ち、ゆったりとしたスケジュールで行動できるよう配慮した。

まずは温泉にゆっくり浸かって、美味い焼肉を食べて、南会津の醍醐味を存分に楽しむというのも良いと思う。

舘岩村には午後4時過ぎに到着し、宿泊先である「焼肉フロンティア」へ顔を出し、無事到着したことを告げた。

すると、店内ではOBCむげんさんを始め、インターネット上でお名前を知っている方々が5〜6人いらっしゃった。釣りとコルリの新芽をやりに来られたそうだ。

どなたも初対面であり、まさにグッドタイミングであった。

家族連れのため、ほとんどお話できなかったのが残念である。

次回お会いしたときはゆっくりとお話ししたい。

さて、我々は隣の伊南村にある「小豆温泉、窓明けの湯」へ車を走らせ、1〜2時間どっぷり心地の良い湯に浸かって日頃の疲れを癒した。

そして、風呂上がりのビールと焼肉。もう言うことはない。

とにもかくにも、いつもとは違った南会津を十分に楽しめたと思う。


● 大自然を満喫(=虫採り...)

この時期の南会津は、昼間は都会と同様に夏日となるのだが、一転深夜から朝方にかけては気温4〜5度と信じられないぐらいに冷え込む。ストーブが無いとやっていられない状態である。

とにかく昼夜の寒暖差が大きいのである。

さて、フロンティアでこれまた美味い朝ご飯を食べた後、いよいよ南会津観光の始まりである。

観光ポイントを回りつつ、なぜか材木の積んである所や、白い花の咲いている場所を見ていく予定である。

年に何回あるかわからないほどの「ドピーカン」。

これで採れなきゃ、南会津のカミキリが絶滅したとしか思えない。

湧き上がる期待感とともに車へ乗り込んだ。


● 先々週行けなかった林道へ

前回の南会津採集行で行きそこなった林道があるので、まずはそちらの方向へ向かってハンドルを切る。

しばらくはポイントとなりそうな場所がまったく見られないが、奥へ進むにつれて雰囲気が出てきた。

そして、途中で「材置き場」や「ウツギの花」を幾つか見かけるも、とりあえず車を停めずにどん詰まりまで行ってみることにした。

ここがどん詰まり?

積雪のため「全面通行止め」と書かれているが、まだ先へは行けそうである。

ただ、単独ではないため今日は行くのをやめておこう。

この看板の近傍には、古めの材を置いた場所が2ヶ所あり、早速ルッキングを開始する。

う〜〜ん、なにもいない...。

やはり材が古すぎるか。

と思っていた矢先、小さな甲虫が目の前の材に飛来した。

うおおっ!、カミキリだ。

一目で未採集種であることが分かった。

これはクロニセリンゴカミキリ。

初っぱなからラッキーだ。

[ Eumecocera unicolor (KANO, 1933) ]

前胸背の「白い正中線」が鑑別のポイントである。

材の周囲をぐるぐると何周もしてみたが、追加個体はなし。また、新たな種類が飛来する雰囲気もないため、来た道を引き返すことに。

往路で目をつけておいた材置き場とウツギを見ていこう。

各ウツギポイントにて車を停め観察する。

ところが、大半のウツギはまだ蕾であった。

ハチやアブは多数みられるが、カミキリはいないようである。

数分間ぼ〜〜っと花を眺めていると、ウツギの葉上に緑色のカミキリがとまっているのを発見した。

条件反射で右手が出る。

っしゃ〜〜!

ニセヤツボシカミキリだ。

[ Saperda mandschukuoensis BREUNING, 1943 ]

「ニセ」と名前の頭に付くからには、当然「ニセ」の付かない「ヤツボシカミキリ」というのもいる。

一般的に「ニセ」と「ニセ無し」は外見的に非常に類似しているが、詳細な検討の結果、違いがあることが分かり別種として区別される。後に判定されたほうが「ニセ」となる例がほとんどだ。

ニセヤツボシの場合、前胸背側面に黒斑(黄矢印)がある点で見分ける。

ヤツボシにはこの黒斑がない。

というわけで、こいつは「ニセ」だ。

その後しばらく花を見つめていたが、な〜〜〜んも来ないので移動することにした...。

ちょっとまだ時間が早すぎるのかもしれない。

材置き場を数ヶ所回って予想外のボーズを喰らった後、珍品オニヒゲナガコバネカミキリ(学名からの通称:ピニボーラ、 Molorchus pinivorus )のポイントへ行くことにした。

その途中で寄った「材置き場」にて、池修さんとお会いすることができた。

池修さんは、HP「カミキリムシ情報館」で有名な方であり、私もカミキリを初めて以来いろいろお世話になっている方である。

普段は埼玉県をメインフィールドにされている方なのだが、今年から南会津へも通い始めたそうである。

しばし、標本を見ていただいたり、カミキリの話をさせていただいた。

後日、ゆっくりとお話しましょう。 >池修さん


● ピニボーラ・リベンジ

しばらくして先々週と同じポイントへ到着した。

材はちゃんと残っているようだ。

香ばしい針葉樹材のほのかな香りが風に乗って鼻をくすぐる。

照りつける陽射しの中、材とにらめっこを開始した。

すると、ハイイロハナカミキリがすでに多数飛来してきているようだ。

しかしながら、ピニボーラの姿はない...。

材の陰、材の裏、奥の奥まで見てみたが、見つかるのはことごとくハイイロハナのみ。

前回と同じく少々待ってみたが、ヒゲが長く、翅の小さなカミキリはとうとう私の前に姿を現さなかった...。

今日を逃せば、次回のチャレンジは来年になってしまうかもしれない。

まあ、こればかりは「一期一会」。

出会い、あるいはめぐり合わせの要因が大きいので致し方ないだろう。


● たった一人で林道へ

その後、相棒ご用達のポイントへ行きたくなった。

この陽気で林道沿いに花が咲いていたら、きっとカミキリも「タコ採れ」だろうという安易な発想である。

ただ、クマが出てもおかしくない林道へ家族を連れていくことは憚(はばか)られる。

事情を話し、一人で乗り込むことにした。

途中のコンビニで購入した「熊よけ鈴」を腰にしっかりと結びつけ、網を片手に林道へ突入した。

周囲の物音に耳を澄ませながら林道を上っていく。

しかし、予想に反し花が咲いていないのである。

う〜〜ん、これはまいった...。

しかたなく、これは!、と思う植物の葉などをスイーピングしてみたのだが、網に入る甲虫はコメツキムシ、ゾウムシ、オトシブミ、ジョウカイボンなど、外道のオンパレードだ。

カミキリなど影も形もない...。

辛うじて薄黄色をした花が咲いているのだが、甲虫はゼロ...。

怖い思いをしている割には報われない。

それにしても、抜けるような青空だ。

恐る恐るかなり奥まで入ってみたが、状況は変わらない。

仕方なく引き返すことにした。

ボーズの上、クマに出会ったらシャレにならない。

ちなみに、今年の熊出没頻度はけっこう高いらしい。

戻る途中で見つけたエゾハルゼミ。

カエデの幼木にとまっていた。

山はこいつらの「大合唱」である。


他に撮る対象も無いので、こいつをメインに一枚撮影。

なかなか雰囲気のある写真が撮れた。

なにはともあれ、無事に車までたどり着くことができた。

ほっと一安心。


● 午後は標高を下げる

丁度いい時間なので、「檜枝岐そば」を食べにいく。

ここら辺の「そば」は、蕎麦粉100%使用のため、とくに風味が良い。

家族も満足してくれたようだ。

高標高地はあまり状況がよくないと判断したので、午後は標高を下げたところで勝負しようと思う。

あと、コルリの新芽を少しだけやりに某有名林道まで行こうと思ったが、諸事情のため今回は断念ということになった。

それでは、午後の部へ突入しよう。

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