2001年度 採集記(茨城県 カミキリ編 -10-)

ネキダリス

「とうとう」と言うか、「やっと」と言うか、7月に突入した。昨年の冬から、指折り数えて待ちに待ったシーズンの到来である。本当に長かった...。

フィールドでは春のムシが徐々に姿を消し、それに代わって「夏のムシ」が続々と発生している状況だ。

さて、その「夏のムシ」のなかに「ネキダリス(Necydalis:通称ネキ)」というカミキリの一属がいる。

以前にも日記などで紹介したが、日本名をホソコバネカミキリ属といい「ハチに擬態」したカミキリ達である。上翅が短く、その形態、そしてその振る舞いはまさにハチそのものなのだ。

ネキダリスはその独特の風貌から、往年のカミキリ屋達を心底熱狂させ「ネキダリス狂騒曲」なる一大ブームを巻き起こしたカミキリである。昔はそれでもまだ採り易かったと言われる本属も、特に関東地方の里山では高度経済成長に伴う宅地開発やホスト(樹木)の伐採などにより年々生息環境を追われ、今では採りにくくなった種類が多いと聞いている。

今年からカミキリを始めた私は、当然採集したことなどあるわけがなく、そもそも実物を拝んだことさえ一度もない。これほど採集意欲を奮い立たせるターゲットは、今の私には他に類を見ない。

本邦では現在、11種のネキダリスの生息が確認されており、比較的採集が容易なものからいまだ1個体しか得られていない超ド珍品まである。一生をかけたとしても全種の採集は不可能であろう。

そんなユニークなカミキリムシであるが、今回はその「序章」として「ブナ林」に生息するオオホソコバネカミキリ [ Necydalis solida ] をメインに据えて探索を開始したいと思う。

それでは、「たった一人のネオ・ネキダリス狂騒曲」を始めるとしよう。



2001.07.03 (Tue)

茨城県 某所

   天気:晴れ
   気温:31.4 度
   湿度:82 %
   風力:2(軽風)
茨城産カミキリ、夏のブナ林編
たった一人の「ネオ・ネキダリス狂騒曲」 序章

●今日も暑い... 

ここのところの「猛暑」は、太平洋高気圧の勢力が強いためらしいが、本日もうだるような暑さになるという。

気温が低いのも大いに困るが、あまりに暑いのもムシが出てこないため困ったものである。

さて、今回は冒頭でも書いたように、ネキダリスの入門編として恰好のターゲットと言われる「オオホソコバネカミキリ」を狙うため、久々に茨城県内のブナ林へ行くことにした。


● ネムノキ

両窓を全開にし、遠くが蜃気楼で揺れる道を走る。

しばらく走っていると、「ネムノキ」が生えているエリアに差しかかったため少々寄り道する。

というのも、図鑑によればネムノキは「ホタルカミキリ」や「アオスジカミキリ」のホストと書いてあったからだ。

これがネムノキ。

白と赤にぼんやり見えているのが「花」である。


葉のアップ。

葉の裏、幹、そして枯れた部分などを隈無く探してみたが、な〜〜んもいない...。

早々に移動する。


● クリの花

県道を大きく左に曲ると、先週多数のベニカミキリを採集した「クリ」が見えてくる。

幸い花が健在なようなので、2〜3掬いしようと車を停めた。

「クリの花」独特の芳香が充満するなか、網を伸ばす。

すると、コガネムシやコメツキムシは網にたくさん入るものの、カミキリは全然採れない...。先週はあれほど簡単に採れたというのに。

もう、ピークが終わってしまったのか?

結局、何度スイープしてみても駄目であった...。

う〜〜ん、この1週間の差はあまりに大きい。しかし、自然のダイナミックな移ろいを見られることは、ある意味幸せなことだろう。

外道であるが、けっこう綺麗なゾウムシ。

オオアオゾウムシというらしい。

[ Chlorophanus grandis ROELOFS ]


● 白い花

あともう少しで「ブナ林」というところ、道沿いに白い花を見つける。

走っている車からも、ムシの群がっている様子が分かるほどだ。

というわけで、ブレーキをベタ踏み...。

ウツギの仲間かな。

呆れるほど、すごい数のハチやアブが乱舞している。


なんとも可憐な花だ。

甘く酔ってしまいそうな香りがする。

じ〜〜っと各花へ視線を配りつつカミキリを探してみたが、どういうわけか甲虫自体がいない...。

なんで〜?

やはり、この猛暑の影響なのか??

近くにあった別の白い花。

こちらも咲き競っている。

アリだけ...。

本当に甲虫がいないのである。
不本意ながら、ここまで痛恨のボーズ...。

むむむむむ、うな垂れつつブナ林へ突入する。

後編へ