2001年度 採集記(茨城県 カミキリ編 -14-)

ケブカヒラタカミキリ [ Nothorhina punctata (FABRICIUS, 1798) ]

先週は台風により一頓挫したが、今回から茨城県においても「秋のカミキリ」を狙うべく下見を始めたいと思う。

まず最初は「ケブカヒラタカミキリ」という、ちょっと、いいやかなり地味なカミキリをターゲットに据えてみた。

このカミキリは学名から「ノトリナ」という愛称でも呼ばれており、アカマツやクロマツをホストとする種類である。図鑑によれば、平地から低山地にかけてのアカマツ林に普通に見られるという。

生態面として、日中は樹皮下に潜んでいることが多く、それ以外は大径木の樹皮上を徘徊しているらしい。まれに灯火にも飛来するが、基本的には発生木から離れないとのことだ。

茨城県下でも採集記録のあるカミキリだが、あいにく詳細なポイント情報はない...。

ということで、敢えて採集記録地にはこだわらず、県の植生調査報告書を参考にしてアカマツ林の存在するエリアを適当に1ヶ所だけ選ぶことにした。

まあ、運が良ければ採れるだろう。



2001.08.28 (Tue)

茨城県 某所

   天気:晴れ
   気温:26.4 度
   湿度:71 %
   風力:1(微風)
茨城産カミキリ、ひたすら下見編

● 3重苦

地図を参考にして、延々と下道を走る。ポイントまではかなり距離があり、時間がかかりそうだ。

今回、頼りとしている情報は「アカマツがある」ということだけで、実際のところは「ノトリナの実物を見たことがない」「採った経験がない」「採集記録地ではない」と、ないない尽くしの「3重苦」である。

まさに無謀な出撃だ。

文献的には、ノトリナはアカマツがあれば都市部にも生息している普通種とあるが、果たして今日行くエリアで見つけることができるだろうか?

ちなみに、アカマツはマツタケが付くことでも知られるマツ科の植物で、尾根や崖上など土壌の貧しい場所でも生息することが可能であるそうだ。

道中、ヌルデが満開の時を迎えていた。

植物図鑑によると、8〜9月が開花時期のようだ。

ちょっとだけ掬ってみたが、甲虫はまったくいない。

ことごとく「ハチ」、ことごとく「アブ」...。


ヌルデといえば、ヨツキボシカミキリ、イッシキキモンカミキリなどのホスト(寄主植物)として知られている種類である。

食害されている様子は皆無であり、健康そのもののヌルデであった...。



● アカマツはどこ?

さて、途中で土場などをチェックしつつ、なんとかポイント付近へ到着した。

車のスピードを落とし、アカマツの探索を開始する。

おおおおっ!

軽自動車が1台しか通れないような細い県道の脇にアカマツを発見。

早速、降りて樹皮を観察してみる。

そこそこ歳の若い木だ。

剥がれかかった樹皮の隙間などを舐めるように見ていくが、なにもいない...。

ここには数本のアカマツが生えていたのだが、結局、ゴミムシ1匹発見することができなかった...。

いずれにしても、アカマツ林と言うにはほど遠い環境なので、そもそも勝負にならないだろう。

というわけで、先を急ぐ。

小高い峠を越え、さらにもう一つ峠を越えるが、アカマツは1本たりとも生えていない。

おかしいなぁ、この辺にアカマツ林があるはずなのだが...。

そして、とうとう栃木県へ入ってしまった。

県を跨いでも、スギ・ヒノキの植林と広葉樹のしょぼい2次林が続くだけで、ちっとも雰囲気が変わらない。

う〜〜ん、どこまで行っても生えているのはスギ、そしてヒノキだ。

アカマツはその名の通り樹皮が赤味がかっているので、遠くからでも、あればすぐに判別できるのだが、そんな木は一向に見当たらない。

かなり奥まで入ってみたものの、埒が開きそうにないので、一端引き返す。


● 神社

引き返す途中、神社を見つけたため、探索してみることにした。と言うのも、寺社仏閣には手つかずの大木、巨木が残されていることが多いからである。

境内はけっこう広く、短時間ではとても見回れないほどだ。

予想通り、巨木が林立しているが、それらはすべてスギとヒノキ。

マツなどありゃしない...。

しばらく歩いていると、境内の植生を書いてある看板を見つけた。

それによれば、ここはスギ、ヒノキ、モミなどの針葉樹の他に、イヌブナ、コナラなどの落葉樹、そしてカシ、シイなどの照葉樹が生える混生林であるらしい。

なんとも、とらえ所のない場所である...。

残念ながら、アカマツのことは書かれていなかった。きっと、ほとんど生えていないのだろう。

調査報告書にあったアカマツ林は一体どこなのだろうか?

う〜〜ん、まいった...。

がっくり肩を落としながら、かつての水戸藩主が歩いたという小道を歩く。

たくさんアカマツ植えといてよ。 >黄門様


● そういえば... 

とりあえず車へ戻ったが、次なる目標を見失って途方に暮れる。

さあ、どうしようか?

ない知恵を振り絞って考えた末、過去に関東(茨城)ネブトを狙った場所がここからさほど離れていないということに気がついた。確か、多数のアカマツが生えていたと思う。

っしゃ!、いざ再出撃!

移動を考えると、あまり時間も残っていないため、さっさとこの場を後にした。

あれ?

はるか彼方の尾根沿いに、樹皮の赤い木がたくさん生えているぞ。

来るときには気がつかなかった。

おそらく、あれが報告書にあったアカマツの小群生なのかもしれない...。

しかしながら、どうあがいてもアプローチできる場所ではないため、涙を呑んでそのまま走り去った。

あああああ、ノトリナよ、さようなら...。 ← 本当にいるかどうかは不明... 


● ビンゴ!

さて、1時間ほど車を走らせて、ようやくそのポイントへ到着した。

おおおお、のっけから尾根沿いにボリュームのあるアカマツ林が見える。

ただ、ここもアプローチ不可能...。

ということで、まずは過去にネブトを狙った林道の奥へ行ってみることにした。

記憶が正しければ、そこにも生えているはずである。

ここが、その入り口。

前回は冬に来たため、随分と印象が異なる。

奥はうっそうとしていて、ちょっと不気味だ...。

虫よけスプレーを忘れてきたので、仕方なくゴキジェットを体中に吹きかけて突入する。

クモの巣をまといながら奥へ進んでいくと、斜面の上の方にアカマツが見える。

しかし、そこへ到達するためには、急斜面にある強烈なヤブを漕がねばならず、敢え無く断念...。

今日はとことんツイていない。もう帰ろう。

失意に暮れる中、車を発進させる。心なしかハンドルも重い。

ところが、帰りがけ、ゴルフ場の脇に小規模なアカマツの群生を発見!

道路脇にあるため、アプローチも問題ない。

なんか、九死に一生を得た気持ちだ。

急いで車を飛び降り、緩い斜面を「クモの巣大王」になりながら駆け登る。

おおおお、アカマツだ。

お前を探していたんだよ。

なんと愛おしいことか。


樹齢の若い木が中心だが、他にもたくさん生えている。

あああ、やっと採集らしい行動ができそうだ。

うれしくなって、樹皮の割れ目という割れ目を食い入るように見て回る。

まあ、申し合わせたように何もいないのだが、それでもよかった。

強いてカミキリの痕跡らしい痕跡といえば、この羽脱孔ぐらいか。

ノトリナのものではないかも知れないが、一応、載せておく。


● エピローグ

というわけで、本日も惨敗...。

もっとも、かなり無謀な採集行であったのだから当然であろう。

既産ポイントへ行くことが、いかに効率が高いかということを実感する。

しかし、この非効率な採集プロセスがある意味面白いのであり、それを経て採集し得た暁には喜びが何十倍にも増幅されるのである。

今後も既産ポイントで十分に勉強しつつ、今回のような新規開拓も並行して行なっていきたいと思う。

しっかし、ここ数週間ムシを見ていないなぁ...。


★★ 採集成績 ★★

ボ〜ズ


記載日:2001.08.29
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