2001年度 採集記(茨城県 カミキリ編 -4-)

小型甲虫の宴(うたげ)

北関東においても、カエデが満開の時期を迎え、カミキリ採集も本格シーズンに入った感がある。

カミキリ採集を始めるまで、カエデの花でカミキリが採れることなど考えてもいなかっただけに、春の楽しみがひとつ増えたことは非常にうれしい。そもそも、カエデに花が咲くこと自体よく知らなかったのだから、余計にそう思う。

今の時期、晴れた日のカエデの花上は、まさに「小型甲虫の宴」が連日催されている状態なのだ。

かつて、カミキリ屋達は「春物」と呼ばれるこの時期のカミキリを血眼になって追い求めていたそうだ。なかでも「ヒラヤマコブハナカミキリ」や「ヒゲナガコバネカミキリ属」などは珍品(ヒラヤマ>>ヒゲナガ)と言われ、ポイントへ日参しては争奪戦を繰り広げていたのである。

できるなら、私も当時のカミキリ屋が夢中になっていたある意味「異常な感覚」を味わってみたい。

ただ、本日は低気温に加え風も強く、条件が悪いのが気にかかる...。



2001.05.01 (Tue)

茨城県 某所

   天気:曇り
   気温:10.0 度
   湿度:48 %
   風力:4(軟風)
茨城産カミキリ、雨は止んだが...編

● 寒い...

雨は免れたものの、本日は朝から気温が低く、はっきり言って寒い。

さらには風も強く吹いており、カミキリ採集には最悪の条件である。

しかし、東京へ直帰するのも悔しいので「今日のような条件では、どれだけ採れないのか」ということを最低限確認してくるつもりだ。

「何事も経験である」と格好良く言い放ってみたいところだが、やはり気は重い...。

出発時の気温は12度、これから行くポイントは標高がやや上がるため、これより低いことが予想される。

どうみても、カミキリ採集(スイーピング)なんて正気の沙汰とは思えない...。


● 先週のカエデ

モヤモヤしながら車を走らせていると、先週3種類のカミキリを採集したカエデのポイントが近づいてきた。

とりあえずは、ここから見てみようと車を停めた。

すると、この周辺にあるカエデは見事に花が散っており、1週間前とは随分と印象が異なる。当然、虫の気配はない。

いや、それ以前に、吐く息が白くなるほど冷え込んでおり、カエデが咲いていようがいまいが関係ないといった状態である。

ちなみに気温を測ってみると、なんと「10.2 度」。

寒すぎる...。

いずれにしても、カエデがすでに咲いていないのだから、掬う気にもなれない。

というわけで、先を急ぐ。


● 先週つぼみだったカエデ

さて、標高をゆっくり上げていくと、カエデの群生地帯が見えてきた。

先週はその大半がつぼみだったエリアである。

開花状態はどうだろうか?

恐る恐るのぞき込んでみると...。

おおおっ!、満開状態じゃないか!!


アップでもう一枚。

開いている!!

ただし、気温は10度。

ムシなんか飛んでいやしない...。

仕方ないので、花をもう一度よく観察してみた。

ハムシでもいいから停まっていてほしい。

ん!!

いるじゃん。

葉の陰でじっと寒さに耐えているようだ。

ルリマルノミハムシのようだ。

[ Nonarthra cyaneum BALY ]

さらに観察を続けていると、ふと、どこかで見たような影が動いているのが視界に入った。

わ〜〜お、ヒナルリハナカミキリだ。

動きは遅いものの、ちゃんと活動している。

超普通種なのだが、うれしいのでもう一枚。

この悪条件下では1頭も拝めないと思っていただけに、異常に可愛く見える。

おおおおっ!、こんなところにも。

なんだ、けっこういるんじゃないか。
そうか、じゃあ、ちょっくら掬ってみるか。

タコ採れは望めなくても、何かしらは網に入るかも知れない。

早速、車へ網を取りに戻り、スイーピングを開始した。

まずは、適当に10個所ほど花房を掬ってみると...。

なんだかんだで、ハムシなどに混じってヒナルリハナカミキリが5〜6頭入っている。

なんと、ヒラタハナムグリまで採れた。

どうやら、寒い日は葉の陰などに相当数のムシが隠れているようだ。

飛来組は全滅だが、残留組を狙えばそこそこいけるかも知れない。


[ Nipponovalgus angusticollis WATERHOUSE ]

よし、ただやみくもにスイーピングするのもなんなので、カエデを無作為に10本選んで、それぞれ10ケ所ずつ掬い(合計100回)、どれだけのカミキリが採れるか数えてみよう。


● サンプリング

それではサンプリングを開始しよう。

適宜カエデをセレクトし、スイーピングしていく。

最も個体数が多いのはヒナルリハナカミキリであり、カエデ1本当たり、だいたい4〜5頭は確実に採れる。

カエデ採集における「いつものやつ」の称号を贈ろう。

おめでとう!

そして、同じく「いつものやつ」キバネニセハムシハナカミキリ。

こいつらは、だいたい2〜3頭入っている。

まあ、毎度代わり映えしないメンバーではある...。

いずれにせよ、あとまだ5本のカエデをスイーピングしなければならないので、引き続き作業を続ける。

次のカエデへ移動し、10回スイープする。

ああああ、またお前か...。

と思ったのだが、どことなくキバネニセハムシハナとは色が違うことに気がついた。

前胸背が赤く、上翅の赤味も濃い。

車に積んである図鑑で同定してみると、ピックニセハムシハナカミキリであることが判明した。

[ Lemula rufithorax PIC, 1901 ]

きっとつまらない種類なんだろうけど、1種増えたのはうれしい。

さらに次のカエデでは、もう1種追加することができた。

アカイロニセハムシハナカミキリ。

前出の2種に比較し、明らかに上翅の幅が広いことで区別がつく。

[ Lemula nishimurai SEKI, 1944 ]

これで、あっけなく茨城県で採集可能なニセハムシハナカミキリ属(Lemula)を全制覇である。

結局、10本のカエデを10ケ所ずつスイーピングした結果、ヒナルリハナ45頭、キバネニセハムシハナ22頭、アカイロニセハムシハナ2頭、ピックニセハムシハナ1頭、合計4種70頭ものカミキリが採集できたことになる。

今日の条件からは、まずまずと言ったところではないだろうか。

さて、一向に気温も上がらず、風も絶え間なく強く吹いているので、ここら辺で終了ということに決めた。


● 材場

帰りがけに、前回目をつけておいた材置き場を念のため見てみた。

やはり、アリ1匹いなかった...。

まあ、この寒さじゃいるわけないよな。
今までの私のカミキリ採集は、このような材場回りが中心であっただけに、今日の寒中カエデ採集の成功は新鮮な驚きであった。


● エピローグ

今回の採集行では、寒くてもカミキリ採集が可能であることが分かった。

もし、出発の時点で諦めていたら、ずっとこの事実を知らないで過ごしてしまっていたかもしれない。

珍品は採れなかったが、結果オーライと言えるだろう。

来週も今日のポイントへ行く予定である。


★★ 採集成績 ★★

ヒナルリハナカミキリ  45 exs.
[ Dinoptera minuta (GEBLER, 1832) ]

キバネニセハムシハナカミキリ  22 exs.
[ Lemula decipiens BATES, 1884 ]

上記2種、カウントのみ(すべてリリース)

アカイロニセハムシハナカミキリ  2 exs.
[ Lemula nishimurai SEKI, 1944 ]

ピックニセハムシハナカミキリ  1 ex.
[ Lemula rufithorax PIC, 1901 ]

ヒラタハナムグリ  1 ex.
[ Nipponovalgus angusticollis WATERHOUSE ]


記載日:2001.05.01
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