2001年度 採集記(長崎県 小型種編)

ウンゼンルリクワガタ [ Platycerus delicatulus unzendakensis FUJITA et ICHIKAWA ]

今回の採集行は、長崎県にてウンゼンルリクワガタを狙う予定である。

それも「日帰り」で行こうというのだから、はっきり言って正気の沙汰ではない...。

さて、そのウンゼンルリクワガタ、本種は長崎県の高山に産するルリクワガタの亜種である。他県に生息するルリクワガタ(通称タダルリ)に比し、幅が広いとか、体色が青みがかっているという特徴があるそうだ。

私自身は茨城県において青いルリクワガタを採集した経験があり、それよりどのぐらい青みが強いのか非常に興味の尽きないところである。ウンゼンルリの「メタリックブルー」は格別だと紹介する人もいるほどで、かねてから挑戦してみたいと思っていたクワガタであったのだ。

さあ、東京−長崎の日帰り採集で、そのメタリックブルーの宝石を手にすることができるのだろうか?



2001.12.16 (Sun)

長崎県 某所

   天気:曇り時々晴れ
   気温:非測定
   風力:1(微風)
長崎産小型種、「日帰り」ウンゼンルリクワガタ編

● 長崎は遠いのか?、それとも近いのか?

年末ということもあり、ここのところ非常に慌ただしい日が続いている。恒例の火曜日採集すらままならない状況である。

従って、ストレスが目に見えるスピードで溜まっていくのであるが、どうにもその解決策が見つからないでいた。

そんなある日、相棒が「ウンゼンルリを採りに行きませんか?」という突拍子もない提案をしてきた。

言葉で言うことは容易いことだが、東京と長崎との間には気の遠くなる距離が存在しており、通常は土日などの連休を利用して(時間に余裕を持って)行くということが体力的な面からも必要であろう。

しかしながら、今の私は日曜日を空けることだけでも大変な状態であり、ウンゼンルリを採りに行くということなどは、まさに夢物語であった。加えて、かつてあ〜さんが実家の山口県から延々と電車に乗り、ウンゼンルリの採集に果敢にトライしたにもかかわらず、結局時間的な理由により採集できなかったという事実もそれを後押ししている。

私の頭の中で、ウンゼンルリはかなり手ごわいターゲットとなっている。

ところが後日、相棒が長崎県内のポイントを調べ、なんとか日帰りでも可能だということを私より数段に明晰な頭脳ではじき出した。

要するに、朝一の飛行機で長崎へ乗り込み、最終便で東京へとんぼ返りすることになるのだが、その間の約10時間が長崎における滞在時間ということになる。日没時間を勘案し、さらに現地での移動時間を差し引けば、正味4〜5時間をポイントでの採集へ充てられる計算になる。

う〜〜ん、確かに強行軍ではあるものの、それなら可能だ。

ということで長崎行きが決定し、みるみる現実味を帯びてきた。

それにしても、長崎が遠いのか近いのかよく分からなくなってきた...。


● いざ、長崎へ

当日の長崎の天気予報は晴れのち曇り。予想最高気温は13度となっており、まずまずのコンディションの中で採集ができそうだ。

しかし、内山田ひろしとクールファイブの調査によれば、日本一雨の降る県でもあるようなので、しっかりと折り畳み傘を入れておくことにした。

それはそうと、問題は「オノ(斧)」である。このご時世、空港におけるセキュリティチェックは厳しいと聞いている。何のトラブルもなく長崎へ降り立てればよいが...。

では、ひとまず羽田空港へ向かうとしよう。


● 離陸!

JR線とモノレールを乗り継ぎ、とりあえず羽田空港へ到着した。

相棒ともすぐに落ち合うことができ、まずは機械でチェックインを済ませる。そしてオノの入った荷物を預けるため、カウンター手前のX線装置に荷物を通す。

一応「オノが入ってます」と一声かけると、係官は頷くのみですんなり通してくれた。

ということで、すべてのチェックインが無事に終わり、いよいよ出発である。

乗るぞ〜。


東京地方の天気はすこぶる良く、空気も澄みきっている。

富士山まで遠望できる。


では、行ってきます。

東京にしばしの別れを告げる。

早起きしたせいか、とても眠い...。

離陸するやいなや、うとうとしていたのだが、眼下にものすごく美しい光景が広がっていたため、一気に目が覚めた。

うっへ〜〜。

これは絶景!

さっきまで遠くに見えていた富士山がもう真下に...。

なんて飛行機って速いんだろうか。

本土を縦断する飛行ルートは久しぶりだったので、思わず子供のように興奮してしまった。

機長からのアナウンスでは、約8500メートルの上空を飛んでいるらしい。思いの外、低空飛行だ。

1時間45分の飛行の後、長崎空港に着陸した。

う〜〜ん、あっという間だ。

天気は少し曇っているようだが、雨は降っていない...。

ちなみに気温は4度と寒い。


● ポイントへ

休む間もなく事前に予約しておいたレンタカーを駆り、一路、ポイントを目指すことに。

パワーのない小型車へムチを打つように、ぐいぐいと峠路を攻める。

それにしても、長崎の山林は手入れがされておらず、どの林もボサボサだ。基本的にはスギやヒノキの植林と、照葉樹林が中心だが、悲惨な状況である。

本当にウンゼンルリが生息しているのだろうか、ふと心配になってしまう。

さて、やっとのことで登山口へたどり着いた。ここからは1時間近くの登山が待っている。

首尾よく採集準備を整え、山へ入る。

実際に登山を開始すると、これがけっこうキツい。

あっという間に息が上がってしまった...。

5〜6分登っては1分休むという行程を繰り返す。

またもや運動不足を思い知らされた。


苔むした石の上にはうっすらと雪が積もっている。

このところの寒波の仕業だろう。

序盤はうっそうと茂る照葉樹林であったが、しばらく歩くと遠くが明るくなってきた。

あそこがポイントか?

おそらく、落葉樹林が広がっているはずである。

ややペースを上げて、ラストスパートをかけた。

視界が一気に開け、そこには小型種を狙えそうな環境が広がっていた。

っしゃ!、ここがポイントに違いない。

もう少し登ったところから採集を始めるとしよう。


● ウンゼンルリクワガタ

ウンゼンルリとは言っても、その採り方に大きな違いはないだろう。

そういう勝手な思い込みに支配され、まずはルリの好きそうな「ルリ材」を今までの経験を踏まえて探してみることにした。

しかし、これがなかなか難しい。

(イヌ)ブナもそこそこあるのだが、どれも細く、あまり立ち枯れているものが見られない。しかたなく、倒木をメインに探してみる。

ところが、絶好のルリ材(倒木)は見つかるものの、出てくるものはキュウシュウオニの幼虫ばかりだ。

まさにザクザク出てくる。

また、幼虫がハチに寄生されているものも多い。食痕を追っていくと、大抵ハチあるいはコメツキの幼虫にぶち当たるのだ。

なにより、これまでにウンゼンルリの産卵マーク自体が見つけられていない...。

う〜〜む、関東での常識や経験はあまり役に立たないのか?

すると突然、相棒が「あった〜」と一声をあげる。どうも産卵マークを見つけたようだ。

すかさず駆け寄ってみると...。

あった〜〜!!


裏側にもびっしりと。

出ろ、出ろ、ウンゼンルリ。

相棒が気合いと期待を込めて材を削いでいく。が、出るのは幼虫だけ...。

しかし、これでウンゼンルリポイントの「るつぼ」にいることが判明したのだ。

私もエンジンがかかってきた。

すごい場所で激しく越冬中のカメムシ。

風邪引かないようにね...。

しばらく林内を徘徊していると、感じのよさそうなルリ材を発見することができた。

私の見た目では、合格なのだが...。


おおおおおっ!

裏側には産卵マークがしっかりと刻まれているぞ。

これは期待が持てる。

心地よい緊張とともに慎重に表面を削っていくと...。


だぁ〜〜っ!!

だぁ〜〜っ!!

うおっしゃ〜〜!!

ウンゼンルリだ!!

「うお〜〜い、出たぞ〜〜」大声で相棒に知らせるが、返事がない...。

まあいいや、不随意に震える手で、落とさないようにそ〜〜っと蛹室から取りだしてみる。

あれっ?

ち〜〜っとも青くない...。

君はウンゼンルリなの?


私の目が悪いのだろうか、とてもメタリックブルーには見えないのだ。

どこから見てもただのルリ。それも小さい。

ぱっと見は、茨城のルリと何ら変わりがない...。

まだ出るだろうということで、さらに削り進めると...。

だぁ〜〜、今度は見事にすり潰してしまった...。なんということを。

♂のようだが、ああああああ、もったいない...。

その後も躍起になって削ってみたが、とうとう追加の個体が出ることはなかった。

別の材にて撮影したウンゼンルリの食痕。

基本的にはタダルリと同じだ。

とりあえず、相棒に採集したことを報告するが、一方の相棒は幼虫のみで成虫はヌルのようだ。

いろいろ情報交換した結果、材は立ち枯れと倒木でやや湿っているものに多く産卵していることが分かった。

さあ、残り時間もあまりないことから、再び別れて採集に没頭することとした。

私の後半戦は「外道」との格闘が中心となってしまい、クワガタはキュウシュウオニの幼虫ばかりであった。

これは寄生蜂だろうか?


さらにはゴキまで...。

というわけで、追加のウンゼンルリを出せないまま、敢え無くタイムリミットを迎え、急ぎ足で山を後にしたのであった。

ちなみに相棒は♀の死骸を割り出したものの、生体はボーズを喰らってしまったそうで、これは非常に珍しいケースである。

また挑戦するということで。 >相棒

どっぷり日の暮れた道を引き返し、多少の余裕をもって長崎空港へ戻ることができた。

すでに2人とも体力的にボロボロであるが、それに追い打ちをかけるように採集用の「オノ(斧)」がチェックイン時に問題となった。

係官に日帰りで登山採集をしに来たといっても、怪訝そうな顔をされ、まったく信用してくれない様子。羽田では問題なかったと言っても、う〜〜むと首を横に傾ける始末。

とてもハイジャックなどをする気力も体力も残っていないのだが...。

結局、警察官立ち会いの元、私の身分を根掘り葉掘り聴取され、納得してもらった。

ということで、東京へとんぼ返りし、本日の強行軍を終えたのであった。

あああ、疲れた...。


● エピローグ

かなりキツイ行程であったが、なんとかウンゼンルリ1♂の採集に成功し、今回の目標は達成することができた。

航空運賃だけでも往復5万円近くかかっているため、かなり高価な1頭ということになる。

ウンゼンルリは一筋縄ではいかないようだ。

それはどうでもいいとして、一番期待していた「メタリックブルー」が見られなかったことが悔しくてしょうがない。

長崎県にはウンゼンルリ以外に普通のタダルリもいるんですよ、なんてことはないだろうなぁ...。

場合によってはまた行かねばならないだろう。

もし、ご存知の方がいらっしゃる場合はぜひ教えてください。

※ 後日、ウンゼンルリと判明


★★ 採集成績 ★★

ウンゼンルリクワガタ 1♂

キュウシュウオニクワガタ 幼虫多数


記載日:2001.12.17、追記日:2001.12.18
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