2001年度 採集記(徳島県 某所編 -1-)

四国の小型種

関東在住の私にとって、四国は異国とも思えるほど馴染みの薄いエリアである。日常生活においても、四国のことを考えることはほぼ皆無に近い。四国各県に関係のあるものを挙げてみても、香川なら讃岐うどん、徳島なら阿波踊り、愛媛ならミカン、高知なら坂本龍馬、ぐらいしか思い浮かばないほどしょぼいレベルだ。

もちろん、今までに四国へ行ったことは一度もなく、もしクワガタ採集をやっていなければ、今後も一生足を踏み入れることがなかった可能性が高いだろう。

図鑑などによれば四国に棲息する小型種は、ルリクワガタ、マダラクワガタ、ミナミコルリクワガタ、ニセコルリクワガタ、ミナミツヤハダクワガタということになっている。いずれも1000mを越える高山に産するクワガタだ。

このうち、ルリとマダラ以外はどうがんばっても関東ではお目にかかれないクワガタであり、この機会に採っておかなければ次がいつになるか分からない。いや、もう2度と行くチャンスがないかも知れない。昨日のネブト以上に気合いを入れる必要がある。

それでは出張採集の第二弾、あこがれの小型種を求めて四国へ初上陸するとしよう。



2001.04.06 (Fri)

徳島県 某所

徳島県、四国初上陸@あこがれの小型種編

● 出発前夜

滋賀県にて、かろうじてネブト3頭を採集することができた。ほっと一安心しつつ黄昏の中を神戸へ向けて車を走らせる。安堵の気持ちと、明日からの四国採集への期待感で何とも言えない昂揚した気分である。

ところで、これから神戸にて相棒と合流することになっている。

当の相棒は前日から四国入りを果たしており、すでにニセコルリ、ミナミコルリなどを採集したという一報を聞いている。相変わらずきちんと結果を出してくるところはすごい。一刻も早く、より具体的な話を聞きたくて仕方がない。

7キロ程度の渋滞をなんとか切り抜けつつ神戸へ到着する。レンタカーを返し、無事相棒と合流することができた。

適当にレストランへ入り、明日の作戦会議をすることとなる。

席に着くやいなや、早速、四国での成果を見せてもらう。

頭数的にはさほど多くはないものの、電話での報告のとおりニセコルリ、ミナミコルリ、ルリをきっちり採ってきている。ニセコルリはつーさんから標本を頂いているため実物を見たことがあるが、ミナミコルリを見るのはこれが初めてだ。

サイズ的にはニセコルリよりも小さく、色もやや黒ずんでおりガンメタリックのような渋い光沢を放っている。後翅のシワもかなり密であり、独特なコルリクワガタであることが一目で分かる。

ああああ、早く採りたい。

ちなみに、ルリに関しては、関東で採集できるものとあまり変わらない印象だ。ルリはどこまで行ってもルリなのかも知れない...。

夕飯をつつきながら、四国の様子を逐一聞きだす。もう、話を聞いているだけで今から行きたくなってしまう。デジカメの画像も見せてもらうが、なかなかの環境のようだ。

とりあえず、明日の出発は4時と決め、その時間を待つことになった。


● いざ徳島!

早朝の4時、ホテル近くまで相棒に迎えに来てもらい、いよいよ出発である。

さくっと高速へ乗り、明石海峡大橋を越えて淡路島へと入る。

淡路島を縦断した後、鳴門海峡大橋を渡りきり、日の出とともに人生初の四国上陸を果たした。

最寄りのICにて高速を降り、唸るような峠道を走破すると、ようやくブナ林との対面だ。

峠道でかなり揺られたため少々気分が悪いが、ブナ林を見た途端にどこかへ吹き飛んでしまった。

さぁ〜、採るぞ〜!


● いきなり...

採集準備を整え、相棒とともに急斜面へ降りていく。

ちなみに、林道よりも上の斜面ではニセコルリ、下ではミナミコルリが見事に棲み分けているらしい。なかなかコンビニエントなポイントである。

ずるずると滑りながら沢沿いに到着した。

まずは、相棒からレクチャーを受ける。

基本的にはコルリ材をひたすら割っていくだけらしいが、材の取捨選択には若干のコツがあるという。

ふと相棒がその辺に転がっていた小さなコルリ材を拾い上げ、「こんなのがいいかも知れませんね」と、私に見せる。

おおおおっ!

しっかりと産卵マークがついている。

見るからに感じの良さそうな材である。

相棒がちょっとこの材を削ってみると...。

「出ました〜」

一声とともに、その削り口を私に向けた。

うおおおっ!

小さな蛹室の中にコルリが横たわっているではないか!

出すの早すぎるよ!
蛹室から取り出し、よく観察してみると、どうやらミナミコルリ(♂)のようだ。

めちゃくちゃ羨ましい。なにしろ、斜面に降りて数分と経っていないのだ。

まあ、格好のレクチャーにはなったわけで、私も一層の気合いを入れつつ沢沿いの斜面の探索を開始した。


● 幸先がいい

さて、単独で斜面を彷徨い始めてしばらくすると、先ほど相棒がミナミコルリを出したような絶好のコルリ材を引き当てた。

産卵マークもついており、有無を言わさず入っている予感がする。

丁寧に表面を削っていくと...。

おおおっ!

まずは材の端から幼虫が出てきた。

そして...。

やった!!

相棒に続き、早くも成虫を割り出すことに成功した。

綺麗に折り畳まれたオレンジ色の足が見事だ。


ひっくり返してもう一枚。

標高的にミナミコルリかと思ったが、ニセコルリ(♂)のようである。

なにはともあれ、人生初のニセコルリを採集し得た。

天にも昇る気分だ。


● さらに下へ

さあ、次はミナミコルリだ。

どうも先ほどの場所は、ミナミコルリとニセコルリが混生している可能性があるので、より標高を下げる方向へ歩いていくことにした。

その途中で似たようなコルリ材を発見したため、再度削ってみる。

っしゃ〜〜、一発で出た!!

今度はニセコルリの♀だ。

凄まじいほどの輝きを放ち、とにかく美しい。

まじ?、もしかして、ここはものすごく濃い場所なのではないだろうか?

この後どうなっちゃうんだろうか?、めちゃくちゃ大漁だったりして。

それとも俺は天才か?

ちょっと調子がいいと、すぐ天狗になるのが私の悪い癖である...。

良いことなのか悪いことなのか分からないが、さらに快進撃は続く。

なにげなく拾った乾燥気味の材を適当に削っていると、オレンジ色のスマートな足が目に飛び込む。

もう笑いが止まらない。

一瞬、何コルリか分からなかったが、よ〜〜く見てみると、ただのルリクワガタのようである。

徳島産ラベルのゲットだ。

今日は運がいい。


● 幼虫地獄

かなり下まで降りてきた。

さすがにここまで下ればミナミコルリの楽園だろうと材を物色するが、今度はなかなか良い材と巡り会えなくなってしまった。

う〜〜ん、快進撃もここまでか...。

なんとかマークのついた材を発見し、削ってみるも...。

幼虫...。

幼虫、また幼虫...。

おそらくミナミコルリであると思う、というよりそうあって欲しい。
ついに幼虫地獄へ陥ることとなる。

まったく成虫の姿を拝めなくなってしまったのだ...。


● 一休み

その後も幼虫地獄と闘い続け、どうにも集中力がなくなってきた。ぱっと見で、材の善し悪しが判断できないほどだ。

と同時に、強烈な空腹感に襲われたため、この辺で昼食をとる。

これ、材のコケからよく生えているモヤシみたいなやつ。

クローズアップしてみると、自然の作りだす造形美といった感じがする。

しっかし、新しいデジカメの性能には大満足だ。


● 車で移動

さて、その後も散々斜面を探索した挙げ句、とうとう成虫の追加採集はならなかった。

林道にて自然と相棒と合流し、相棒の成果を聞いてみるも、私と似たり寄ったりのようだ。

ここらで、車でより下のポイントまで移動することに決めた。

間もなくポイントに到着する。

雰囲気的には先ほどのポイントと同じであるが、標高的にはミナミコルリが中心だろう。

気力を振り絞って斜面を降りる。
沢沿いの斜面を精力的に攻めるが、このポイントでも出るのは幼虫ばかり。一向に成虫はその姿を現さない...。

さすがに疲れてきた、この段階で幼虫を一体何頭採ったのか分からない。これはうまく羽化させて標本とするしかないか...、などとかなり弱気になってきた。

そんな中、相棒は根性でミナミコルリを1頭追加採集したとのことだが、やはり幼虫地獄にはまっているようだ。

さあ、どうするか?

時間的にはまだ多少余裕がありそうなので、もう一回だけ上のポイントで頑張ってみようかということになった。


● 夢よもう一度

一体、初っぱなの快進撃は何だったのだろうか...。

すっかり「天才」から「三流採集人」へと自己評価は急降下、採集意欲も沈滞してきた。しかし、どうしてももう一回、成虫を割り出した時の「あの快感」を味わいたい。

その一心で、再度斜面へ分け入った。

もう何でもいい、ミナミコルリなんて贅沢は言わないから、とにかく成虫が採りたい。そうリフレインしながら材を割っていくが、幼虫地獄に変わりはなかった...。

ちなみに、写真は撮っていないが、比較的太い赤枯れ材からマダラあるいはミナミツヤハダらしき幼虫を採集することができ、ちょっとだけ嬉しい。ただ、成虫まで上手に育てられるかどうかは別だが...。


● タイムアップ

ふと時計を見てみると、もう終了の時刻が間近に迫っている。

そう、今晩は神戸にてつーさんを始めとした近畿の方々との飲み会が予定されているのだ。

時間に遅れては申し訳ないので、そろそろ終了モードである。実際、両足はすでにボロボロであり、自分の体の一部とは思えないほどになっている。

というわけで、ミナミコルリを採集できず心残りではあるが、予定時間に相棒と合流し、一路、神戸を目指した。


● 美しい橋

朝方は暗くてはっきりと見れなかった鳴門の渦潮を、車窓から見ることができた。これも初めての体験であり、本当に渦潮が巻いているのには今さらながら驚いた。

渦潮のど真ん中で漁をしている小舟は大丈夫なんだろうか?

神戸へ入る前に撮影した「明石海峡大橋」。

日没後はライトアップされるとのことで、とても美しいそうだ。

今回の採集はこれで終わりだが、とことんやった充実感で満たされていた。
そして、刻々と神戸の夕日は暮れていくのであった...。


● エピローグ

いや〜〜、疲れた。

しかし、相棒は神戸−徳島間を2往復したことになり、その疲労度は私の比ではないだろう。本当にお疲れさま。

なにはともあれ、生まれて初めて四国へ渡り、あこがれの小型種を採集することができたのだ。強行日程を押してでも行ってよかった。

そして、何をおいても今回の出張は、採集・麦ともに近畿の方々に大変お世話になった。さらに予想外の素晴らしいお土産までいただき、お礼のしようもないほどの手厚い歓迎を受けた。

本当にありがとうございました。

心よりお礼を申し上げます。そして、今後ともよろしくお願いいたします。

最後に、今回の関西遠征は採集以外においても、とても充実したものとなり、地域の離れた方々との交流など、インターネットの成せる業に驚いた3泊4日であった。


★★ 採集成績 ★★

ニセコルリクワガタ 1♂1♀
ルリクワガタ    1♂

ルリ属系      幼虫多数
ミナミツヤハダ(疑)幼虫3頭

→ 『ジャパンクワップ・2001


記載日:2001.04.09
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