2001年度 採集記(東京都 カミキリ編 -1-)

奥多摩

奥多摩は東京の北西に位置し、北は埼玉県、西は山梨県と境を接する山岳地帯である。

東京都の最高峰「雲取山(2018 m)」を始め1000mを優に越える山々を多数抱えており、一部はカモシカの保護地区にも指定されている。東京では最も自然が残されたエリアと言えるだろう。

奥多摩はまた、関東におけるカミキリ採集のポイントとしても有名であり、とくに春のカエデ採集、晩夏の「イッシキキモンカミキリ」などを狙い、往年のカミキリ屋達が通い詰めた場所とも聞く。

私自身、学生時代にキャンプをしに何度も訪れたことのある場所なのだが、実は昆虫採集のメッカであったとは1ミリも知らなかった。私が頭の中に描く「奥多摩」は、スギの植林というイメージが強く、あまり虫採りとは直結しない場所であったのだ。

そんなにいいポイントなのか?

ど素人の私には想像もつかないが、とにかくこの目で確かめてこようと思う。

それでは、カミキリの有名ポイントと言われる奥多摩へ向け出発しよう。



2001.05.04 (Fri)

東京都 奥多摩町

   天気:曇りのち晴れ
   気温:21.2 度
   湿度:38 %
   風力:2(軽風)
東京産カミキリ、カエデ@奥多摩編

● 奥多摩へのアプローチ

GW後半の連休が始まった昨日、関東を抜け出す車により高速道各所にて大渋滞がみられた。毎度のことながらGW中の遠出は気が重い。

本日は昨日ほど高速道の混雑はないと思われるが、念には念を入れ、早朝から行動を始めることにした。目的地が東京都内であるとはいえ、渋滞に巻き込まれては何時間かかるかわからない。

というわけで、午前5時に相棒をピックアップし、一路、関越自動車道を目指す。

以前、東京23区内から奥多摩へ行く場合、青梅街道をひたすら走り続けるルートか、中央自動車道八王子ICから秋川渓谷を抜けるルートなどを使っていた。いずれにしても、とにかく出にくい場所であった。

ところが、現在では関越自動車道から「圏央道」へ乗れば、奥多摩の玄関である「青梅」まであっという間に到着することが可能だ。驚くほど身近なエリアになったと言えよう。

今回は当然、この圏央道ルートでアプローチすることになる。


● 林道

今回の目的は、カミキリのカエデ採集である。

過去の記録を参考にすると、GWの奥多摩はカエデシーズンの終わりに当たる年が多いようだが、反面、5月中旬ぐらいまでいわゆる「春物」と呼ばれるカミキリが採集されていたりする。

今年の状況はどうだろうか?

まずは、林道沿いのカエデを探すため、ある林道を攻めてみることにした。

青梅街道を右に折れ、林道へ入る。

時間が午前7時前のため、気温も8度と寒い...。

林道を順調に登っていくと、なんと「通行止め」となっていた。

う〜〜ん、路肩が崩れてしまっているのではしょうがない。

しかたなく、その辺にある植物を観察してみた。
ぱっと見た印象では、カエデはなく、雰囲気としてはいまひとつ。

ふと、足下のノイチゴ(?)の葉上に何か停まっているのを発見した。

おおおっ!、タマムシだ。

夜露に濡れてじっと佇んでいる。

正式には、シロオビナカボソタマムシといい、普通種だがけっこう美しい種類である。

ここでは2頭を採集することができた。

[ Coraebus quadriundulatus MOTSCHULSKY ]

2頭とも葉の基部に停まっており、何か生態的な要因があるのかもしれない。

葉の裏側には、ルリホソチョッキリもみられた。

ちなみに、こいつは写真を撮っただけ。
[ Eugnamptus amurensis FAUST ]

時間が早いためか他は何も採れず。

というわけで、次の林道へ行くこととした。


● カエデはあるのか?

今回、見ておきたい林道は数本ある。

そのうちの2本には、地図上でも「カエデマーク」が付けられており期待が膨らむ。

もっとも、「秋には紅葉の名所ですよ」ということを表しているのは言うまでもないが、GWにこのマークを頼ってカエデを見に来る人間もそうはいないだろう。本日に限れば、私と相棒だけかもしれない...。

それはさておき、2番目の林道へ到着した。

カエデの開花状態はどうだろうか?

しばらく悪路を走っていると、谷側の斜面に赤い花をつけたイロハカエデを発見した。

恐ろしいことに、最近の私は走る車から「カエデの花の有無」がわかるようになってきた。以前はそれこそ、ヤナギに付いたヒメオオクワガタさえ大量に見落としていたというのに...。

早速車を停め、スイーピングを開始した。日陰となる谷間に生えているのだが、小虫はそこそこ集まってきており、何か採れるかも知れない。開花状態もまずまずである。

すると、相棒が早くもピックニセハムシハナカミキリを1頭ゲットした。

私も数ヶ所掬ってみたが、カミキリは入らず。

適当に見切りをつけ、前進を続けた。

林道の風景はこんな感じ。

朝方はどんよりと曇っており、この段階でも気温はあまり上がっていない。

車の温度計は10度を示している。


山の頂上付近には霧が立ち込め、なんとも寒々とした風景だ。

本当に今日は春の陽気となるのだろうか?

天気予報を疑いたくなる。

結局、この林道をどん詰まりまで見てみたが、目ぼしいカエデは発見できなかった。

そもそも散ってしまったものが多く、すでにシーズンが終わった印象である。

今年の4月は例年よりも暖かかったため、1〜2週間ほど季節の進みが早かったということなのだろうか?

また、どの林道もこんな感じなのだろうか?

真相は不明だが、せっかく来た以上は何か収穫を得て帰りたい。

結局、標高を上げれば、まだカエデの花が残っているかも知れないという仮定のもと、別の林道へ向けハンドルを切ることに決めた。


● 3本目の林道へ

一端、幹線道路へ戻り、舗装道路の心地よさを堪能しながら快調に車を走らせる。

ふと相棒が「あっ、カエデがありますね」と言うので、急ブレーキ。

こんな排気ガスのかかるようなカエデに、カミキリが飛来するかどうかを知りたいのでスイーピングすることにした。

花はばっちりと咲いているようだ。

遠目にもハチやアブが飛んでいる。

カミキリはどうだろうか?


相棒がすかさず網を伸ばす。

ガサガサっと数ヶ所を掬い、網の中をのぞき込んでみると...。

ヒナルリハナカミキリが入っていた。

さすがは「いつものやつ」。

さて、しばらくして今回いち押しの林道へ到着した。

ほのかな期待感とともに、ガシガシと砂利道を登り始める。

カエデがあるごとに車を停め、その都度ルッキングとスイーピングを繰り返していく。

思ったほどカエデは多くなく、花を付けていないものが大半を占める。

う〜〜ん、けっこう期待外れ...。

かつてはカエデ採集のメッカであったとのことだが、あまりそのような印象は感じられない。時期を外して花が散ってしまっていたとしても、そもそもカエデが少ないのだ。もちろん、斜面の上の方にはたくさんあるのだろうが、林道沿いの網の届く範囲になければあまり意味がない。

そんななか、やっと良さそうなカエデとめぐり会うことができた。

車を飛び降り、ぐい〜〜っと網を花房へ誘う。

3〜4回目かのスイープだったか、小虫に混じりカミキリのような小さな甲虫が網の内側を這っているのを見つけた。

もしかして、ピドニア(ヒメハナカミキリ属の俗称)?

自信はなかったが、ピドニアであると信じ確保した。

帰宅後の鑑定では、フタオビノミハナカミキリであることが判明した。

これで、1種追加である。

や〜〜っと採れた。

[ Pidonia puziloi (SOLSKY, 1873) ]

しっかし本当に小さい...。

さらにスイーピングを繰り返すと、変わったものが採れた。

前胸背がパープルメタリックに輝くコメツキムシだ。

図鑑を参照した結果、ヒメクロツヤハダコメツキ(※)とよく似ている。

普通種かも知れないが、色が綺麗なので採集した。
※ 後日、ムラサキヒメカネコメツキと判明(2002.06.05)。

[ Kibunea eximia LEWIS ]


● 晴れた!!

引き続きカエデを求め、標高を上げる。

午前9時を過ぎたあたりから、陽射しが強まってきた。

遠くの山容を望んでみると、すっかり晴れ渡っているのが分かる。

この調子でどんどん暖かくなって欲しい。

さぁ〜〜、採るぞ〜!

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