2001年度 採集記(山梨県 某所編 -1-)

ふらっと

今回の採集行は事前に予定したものではなく、本当に行こうかと思いはじめたのが前日の夕方であった。

相棒へも一応、「行くかも知れない」ということを同時に告げたが、最終決定を報告しないまま当日となってしまった。電話をもう1回入れれば済むだけの話だったが、なんともだらけた先輩だ...。

昨日の雪中採集で死んでいる相棒へ、朝の5時半に行こうというのも気が引けたので、結局、単身で採集へ赴くことに決めた。

ということで、ふらっと山梨まで車を走らせることになった。



2001.04.01 (Sun)

山梨県 某所

山梨産小型種、雪中採集@氷点下の攻防編

● 雪

早朝の都内、車を走らせながら思い返したのだが、そういえば昨日は雪が降っていた。

当然、これから行く採集地にも相当量の降雪が容易に予想される。しかし、出発してしまった以上行くしかない。もう、後には引けない。

採集のターゲットは、とりあえずホソツヤと決めていたので、雪上の材を中心に見ればなんとかなるだろうという安易な思考にも後押しされ、中央自動車道へと吸い込まれていったのである。

途中のサービスエリアで、給油の最中に撮影した山々の姿。

のっけから一面の雪景色である。

この先が思いやられる...。

と、同時に強烈な不安感が襲ってきた。


● 完全路面凍結

高速は渋滞もなく順調に流れ、けっこう早い時間に最寄りのICを降りることができた。

IC周辺の畑などにはそれなりに雪が積もっているが、道路に関しては既に乾いており、少しは不安も治まる。

その後もしばらくは、心地よいドライビングを堪能することができたのであるが、標高を上げるにつれて様子が変わってきた。日陰となっている路面に、だんだんと路面凍結が見られるようになり、恐る恐るそれらをクリアーしていく。そして、ようやく峠道の入り口に到着した。

が〜〜ん、「この先、路面凍結につき通行不能」、無念にもゲートががっちりと閉じられている。

これじゃ行けないじゃん...。

途方に暮れ、相棒に電話を入れてみる。相棒によれば、別ルートから峠へアプローチできるとのこと。というわけで、そちらへ向かってみることにした。そっちも駄目なら、おとなしく帰るしかない。

再び、凍結した路面に注意しながら、もうひとつのルートをとる。

なんとか、その入り口へ到着した。幸いこちらにはゲートがない。ただ、立て看板には「この先、路面凍結、途中までは上がれますが危険ですので慎重に通行してください」なることが書いてあった。

確かに入り口から先はず〜〜っと路面が真っ白で、アスファルトがまったく見えない状態である。

私の車は4駆だが、タイヤはスタッドレスでもないし、チェーンも積んでいない。いくら4駆でも、路面凍結だけは侮れない。

もう少し準備をしておけと自分に言いたい。が、ないものはないので、意を決してハンドルを峠道の方向へ切ったのである。

いやいや...。

まじで怖い。

アクセルを踏み込むとスリップするのがわかる。

微妙に尻を左右に降りつつ、果敢に峠道を攻めた(というほどのスピードは出ていない...)。


● 限界

ある程度のところまで進むと、この車でもさすがにこれ以上は行けない状況になってきた。

仕方なく路肩に車を停め、ここから歩くことにした。

林内はどこもこんな感じ。

一面の銀世界だ。

ブナ・ミズナラ帯と思われる場所にて、林内突入を決心し、笹藪をかき分けた。

ところが、第一歩で腰まで雪に埋もれてしまい、かなりブルーになる。

ケガもなく抜け出せたのはいいが、ズボンが凍りついてしまい下半身が異常に冷たい...。
あとどれぐらい耐えられるだろうか...。

ここでも自分の準備不足に嘆く。


● 寒い...

凍てつく両足にムチを入れながら林内を探索する。

いや〜〜、産卵マークを探すどころではない。とにかく寒い、冷たい。今日の気温はこの時点で氷点下3度である。

せっかく来た以上、ボーズはいやなので懸命に視界に入る材を観察していく。

30分ぐらい寒冷地獄を彷徨っただろうか、やっとそれらしい材を発見した。

おおおおっ!、あった。

産卵マークだ、これはホソツヤに違いない。

やっとオノの出番である。
ものすごい期待感を込めて割っていったが、食痕内はアブの幼虫で占められており、再び地獄へ突き落とされることに...。

あああああ...。


● やっと

林内の積雪は少ないところでも20cmはあり、とにかく足を取られて歩きづらい。

両足の感覚はすでに無くなり、意識ももうろうとしてきた。

けっこうやばい状況だ...。

そんななか、神の恵みかと思うほど一層目を引くブナ材とめぐりあった。

すかさずオノを一振り、木屑とともに、ぽろっと究極の煌めきを放つ青い物体が真っ白な雪の地面に転がり落ちた。

ん!

っしゃ〜〜!!

っしゃ〜〜!!

っしゃ〜〜!!

ホソツヤの♂だ!!
たった1頭のホソツヤのゲットで、ここまで喜んだことは今までにない。

とにかく心の底から嬉しかった。

寒さ、冷たさも一瞬にして銀河系の彼方へすっ飛んでしまったほどだ。

この材からは、幼虫1頭を追加採集することができた。

♀が採れなかったのは残念だが、もうそんなことはどうでもいい。


● どこも真っ白

このエリアはだいたい見てしまったので、少し場所を変えてみることにした。

しばし真っ白な林道を歩いていく。

前も...

後も...
「わけいっても わけいっても 白い山」、種田山頭火でも絶対にこう詠むはずだ。

結局、埒が開かず、一度車へ戻ることにした。

ズボンを履き替えないことには、両足が凍傷になってしまう。


● 移動

車まで無事に戻り、ズボンを履き替える。

さて、どうするか...。

まだ時間は11時過ぎであり、もう少し採集する余裕はある。本日の天候は気持ちの良い快晴であり、気温もぐ〜〜んと上昇してきた。そのお陰で、路面凍結も随分と解消されているようだ。

よし、採集続行!

ということで、新たなポイントへ向け車を走らせた。

雪解けの路面を順調に走り抜け、ポイントへ到着した。ここからは少々登山をしなければならない。

猛烈に息を切らしながら、尾根にたどり着いた。

う〜〜ん、かなりの急斜面。

一歩間違えば、奈落の底まで滑落するだろう。

実際はもっと急です→
かなり迷ったが、やはり採集は続行だ!

という無謀な決心のもとに雪の急斜面を降りはじめた。

ところが、ぜんぜんいい材が見当たらない。ここはホソツヤの採集ではよく知られたポイントなのだが...。

この雪が最大の原因か?、とにかく駄目であった...。

しかし、こんな誰も来ないような場所で、そして命の危険を感じる雪の急斜面でクワガタなんて採るかね〜?

自分のアホさ加減に涙が出る。

結局、このポイントでは痛恨のボーズ、潔く下山し本日の採集を終了することにした...。

山梨といったらやはり富士山。

その雄大さには心を和ませるものがある。

ふと、日本に生まれて良かったと思うるどるふであった。


● エピローグ

かなり辛い採集行であったが、なにはともあれホソツヤが採れてよかった。

特に、白い雪とサファイアのような美しいブルーのコントラストが素晴らしかった。

こういう嬉しさは、実際に採集へ行かないと味わえないものであり、ぜひ皆さんにも体験していただきたいと思う。

本当にいいものだ。

でも、こんな雪の中、きっと誰も行かないだろうな〜...。


★★ 採集成績 ★★

ホソツヤルリクワガタ 1♂
        幼虫 1頭
→ 『ジャパンクワップ・2001

記載日:2001.04.02
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