日本産カミキリ大図鑑がやってきた!

大図鑑の購入記

日本産カミキリ大図鑑といえば、1984年に講談社より刊行された唯一無二のまさに「大図鑑」である。

日本鞘翅目学会が監修し、当時第一線で活躍されていたカミキリ専門家らによる執筆に加え、美しい写真をふんだんに収載した噂に違わぬレベルの高い内容と漏れ聞く。そのため、カミキリ屋垂涎の図鑑として長年君臨し続けてきたことはご存知の方もいらっしゃるだろう。

ところが、発刊後しばらくして惜しまれつつも絶版となってしまったため、入手するには古本屋を当たるか、誰かに譲ってもらうしか方法がなかったのである。この年になってからカミキリに目覚めた私は、どうにも手に入れられない代物であった。

神保町の古本屋にてたまたま見つけたこともあったのだが、そのプレミア価値は半端ではなく定価の2〜3倍で売りに出されていた...。当然、諦めることとなる。

そのような背景の中、再販を望む声は多く「TTS昆虫図書」など昆虫関係の書籍を専門に扱う書店が再販を前提とした購入予約を募り、ある程度集まった時点で講談社へ再販要請することを知ったのである。

どうしても適正価格(といっても元々高価だが...)で新品を手に入れたい私としては、またとないチャンスの到来だ。

ということで、私も大図鑑を入手すべく購入予約を入れることになった。

記載日:2001.04.25

購入予約

まずは福島県いわき市にある「TTS昆虫図書」へ大図鑑の購入予約を入れる。

店の人の話では、だいたい予約が300ぐらい集まった時点で再販に向けた具体的なめどが立つらしい。

だが、「あまり期待しないで、気長に待ってくださいね」という返事であった。

ちなみに、予約の電話をしたのが昨年の10月初めである。当時の発刊予定は11月下旬となっており「なんだ、2カ月弱ほど待てばいいのか」とかなり楽観視してはいたのだ。

なお、予定されている定価は5万円だが、1割ほど割引があるとのこと。つまり、4万5千円ということになり、これでもかなり高価である。しかし、欲しいものは欲しいので、こればっかりはどうしようもない。


ところが...

さて、実際にその11月の下旬になってくると、いつ発刊されるのか気になってしょうがない。

かといって、電話して確認するのも億劫だったので、そのままにしておいたらいつの間にか21世紀になってしまった...。

う〜〜ん、手に入れられるのはいつになるのだろうか?

予約したのはいいが、購入できる保証がないとはいささか不安なものである。


3月下旬...

そんな状況のなか、1月のある日「TTS昆虫図書」からカタログが送られてきたので、早速封筒を開けて貪り読むと...。

カタログの後の方には、「日本産カミキリ大図鑑は3月中に発刊予定」と書いてあった。どんどん発刊予定日が先延ばしになっている。

ふ〜〜む、あとさらに2カ月以上も待たねばならないのか...。

どれほど再販の話が具体化しているのかは分からないが、もう本当に諦め半分で待つしかないだろう。

もしかしたら、一生手に入らないかも知れない...。


いきなりやってきた!!

いずれにしても、1〜2月は発狂するほどの忙しさであった。図鑑のことなどすっかり忘却の彼方であり、正直、どうでもよくなっていた。

日々の仕事をこなすだけで、精も根も尽き果てていたのだ。

3月も下旬に差しかかったある日、職場から自宅に電話を入れた際、話の最後で「何か大きな本みたいなものが届いてるよ」と女房が一言漏らした。

うおおっ!、それはもしかして大図鑑か?

間髪入れずに、どこから送られてきたのか、内容に関する表書きはないか、などマシンガンのように質問を浴びせる。

すると、「どうせムシの本なんじゃないの?」と確認するのも億劫な様子。

「ちゃんと見てよ、送り元は福島県いわき市なの?」、それだけでも教えてくれとせがむと、「そうみたい」

っしゃ〜〜〜!!

大図鑑であることを確信した。

ただ、その日は茨城への出張当直があったため、図鑑との対面にはあと丸1日という時間が必要であった。

う〜〜ん、1冊の本のことでこれほどやきもきしたこともあまり経験がない。

あああ、明日が待ち遠しい...。


対面!!

さて、当直業務を無事にこなし、膨らみきれないほど膨らんだ期待感とともに帰宅する。

忘れもしない3月20日のことだ。

玄関のドアを開けるなり、部屋中図鑑を探してまわる。

んんん!!、これか?

「こわれやすい」

まあ、確かに壊れたら困っちゃうけど...。

ラベルを見てみると、「TTS昆虫図書」からの小包みだ。

っしゃ、無邪気な子供のように段ボールの包みを開けてみた。

かなり厳重な包装が施されている。

新聞紙でぐるぐる巻き状態だ。

はっきり言ってまどろっこしいが、傷口に当てた絆創膏をはがすように、一枚一枚丁寧に新聞紙を剥ぎ取っていく。

くっ、今度はプチプチのついたラップでタイトに包まれている。

玉ネギじゃないんだから...。

でも、徐々にその全貌が明かとなってきた。

う〜〜ん、早く見たい。

そして、最後にプチプチ・ラップをはがし、いよいよ待ちに待った大図鑑との対面だ。

う〜〜む、でかい、そして分厚い...。

ケースも2枚重ねだ。

まさに大図鑑、その貫録はただ者ではない。

いや〜〜、とにかくここまで長かった。

なにせ、半年以上もの時間がかかったのだ。

もっとも、手に入れられただけでも幸運だが。

早速、ページをめくってみる。

ぷ〜〜んとインクの臭いが辺りに充満する。

わ〜〜お、噂通り印刷の発色も綺麗であり、巻末にある種別の解説も盛りだくさんだ。

ふぅ〜〜、感無量である。

さて、その晩はじっくりと図鑑を読み込み、かなり夜更かしをしたことは言うまでもない。

また、当初はこんな重い本を職場にまで持っていくほど「大図鑑バカ」になってしまったのだ。

さぞや上司は「なんちゅう部下なんだ」と思ったに違いない...。

いやはやなんともだ。


エピローグ

カミキリ大図鑑の購入記など、仰々しい題名をつけて文章を書いてみた。

というのも、たった1冊の図鑑を購入するだけで子供のようにワクワクした思いを書き留めておきたかったのである。

私は30歳を越えたいわゆる「いい大人」だが、こういう気持ちはいつまでも大切にしたいと思う。

さて、21世紀という新たな世紀を迎えた今年は、私にとって「カミキリ元年」となるだろう。

もちろん、この大図鑑とも末長くつきあっていくことは疑う余地が無い。

今後も、自然と触れ合うことを第一とし、節度を守りつつ採集を楽しんでいきたいと思う。

つまらない文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。

日本産カミキリ大図鑑 <復刻版> 日本鞘翅目学会編 講談社 (566p, 31cm)
ISBN4-06-124047-1
定価:本体50,000 円(税別)


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