2002年度 採集記(海外採集編 -4-)

最終日

ああああ、とうとう日本へ帰る日がやってきてしまった...。

これまでの3日間、ボルネオの大自然を本当に様々な形で満喫させていただいた。見るもの、聴くもの、香るもの、触れるもの、それらすべてが私にカルチャーショックを与え続けた。これだけの純粋な喜びを享受できる経験は、人生の中でもそうはないだろう。

本日でここを去るのは本当に寂しい。

あとは悔いの残らないよう、残された時間を目一杯エンジョイするだけである。

それでは、ボルネオ採集記「完結編」をアップしたいと思う。



2002.04.11 (Thu)〜
2002.04.15 (Mon)

マレーシア サバ州
(ボルネオ島)
Trus madi 山麓

外国産甲虫、灼熱の熱帯雨林@究極の「ボルネオ」 - 素敵な仲間達編 -

● またまた好天

朝、目を覚ましてみると、本日も抜けるような青空であった。私は晴れ男に違いない。

ただ、今までと違うところは、昨日の深夜に大雨が降ったことだ。

これがどうムシ採りに影響するのか楽しみである。

さて、本日はボルネオ採集行の最終日であるものの、午前中は採集をする予定になっている。さほど時間をかけられないのだが、今日こそはネキを採って、凱旋帰国したいものだ。

ということで、いつものように「吹上げポイント」へ行ってみる。

ひょ〜〜、天気が良いぞ〜〜。

はるか彼方まで鮮明に見渡せる。
本日はいつもより多少スタート時間が遅かったためか、早くもムシが飛び始めているようだ。

早速、戦闘態勢に入る。

まずは順調に中型のカミキリムシをネットイン。


その数分後にもう1種。

なかなか幸先のいい出だしだ。

やはり、雨が降った影響だろうか?

他のメンバーも盛んに網を振り回している。

すると、相棒が「うわっ!」と一声を発した。

何かと思って駆け寄ってみると...。

なんだこりゃ?

うわ〜〜、ゴキブリじゃないか...。

それにしても、熱帯のゴキブリはお洒落である。

まあ、自分の家にいたらそうは問屋が卸さないが...。

再び定位置に立ち、獲物の飛来を待つ。

その瞬間、目の前の草むらから「ふわ〜〜」っと、1頭のムシが私に向かって飛び立った。

スリムなボディであり、飛翔している感じはネキにも見えた。

もしかして、本当にネキか?

あまりに近距離のため、網の長さの調節に戸惑ったが、かろうじてネットの端にくっついたようである。

う〜〜ん、残念ながらネキではなかった...。

でも、初採集のリンゴカミキリのようなカミキリだ。

ここで、しばらくの間ムシの飛翔が途絶えてしまった。

毎日のようにムシの飛翔傾向が異なる。

それはなぜなのか?、今の私にはよく分からない。無理に説明付けをしようとも思わないのだが、本当にムシ採りって不思議なことの連続だ。

もっとも、ムシの生態が詳細に明らかとなり確実に採れるというのも種によってはうれしいことだが、ある意味楽しさを減少させる要素かもしれない。今後も自分の経験を通して、ゆっくりと確かめていこう。

それにしても、待てど暮らせどムシはやって来ない。

結局、あっという間に不毛な2時間が過ぎてしまった。他のメンバーも「し〜〜ん」として動いている気配はない。

最終日だというのに...。

そして、もうすぐ迎えの車が来るという頃、ようやく1頭だけゲットすることができた。

よかった〜〜。

けっこう乙なカミキリムシだった。

というわけで、ここで「ジ・エンド」。泣いても笑っても帰国の準備をしなければならない。

3日間十分に楽しませてもらった吹上げポイントに別れを告げた。

ガイドがそんな我々を可愛そうに思ったのか、この近くに「樹液」の出ている木があり、そこでドルクス系のクワガタが少し採れると教えてくれた。

キャンプへ戻る途中にあるそうなので、帰りがけに見に行くことにした。

なんだぁ、早く言ってよ。


● 樹液採集

そのポイントには数分で到着した。

これがその樹液の木らしい。

ガイドが先頭になって歩いていく。

近寄ってみると、確かに各所から樹液がだらだらと流れ出し、周辺にはむせ返るような発酵臭が漂っている。

状況としては、まさに日本における樹液採集と同じだ。

ガイドが何かをみつけたらしく、木の棒でウロをほじくる。

何が採れるのだろうか?


うおっ!!

ヒラタクワガタが採れた。

すごい。


さらに樹皮をめくってみると、またまたヒラタクワガタが潜んでいた。

生涯初となるヒラタクワガタ樹液採集成功の瞬間だ。

謹んで採集させていただいた。


● 南国感100%

生涯初のヒラタ樹液採集を果たし喜んでいるのもつかの間、今度は車の荷台に乗っている採り子たちがにわかに騒ぎだした。

一体何事?

みんな木の上方を眺めているぞ。

そのうちの1人の採り子が、網を伸ばし木の葉をガサガサとやり始めた。

何かいるんだな。

そして、「わ〜〜〜〜〜お」という採り子たちの声が周囲に響き渡る。

どうもムシを落っことしてしまったらしい。

ただ、幸運にもそのまま地面に落ちたようであり、採り子がすかさず荷台から飛び降り、落ちたムシを拾い上げた。

がぁ〜〜〜。

死ぬほど「超ど派手」なカミキリムシ。

こんなカミキリ今まで図鑑でも見たことがないぞ。

まさに南国感100%である。


顔つきもすごすぎ...。

片方のアゴが欠けているため、結局、私が貰ってしまった。

サンキュー!!

時間にすればほんの10分ほどの採集であったが、最後の良い土産話にはなった。

ガイドの心遣いに感謝。


● 素敵な仲間達

さあ、これで本当にボルネオにおける採集活動は終了だ。

いろんな想いとともに、荷物とムシをバッグに詰める。

そして、午後3時、とうとうキャンプを後にすることとなった。

採り子達が全員で見送ってくれる。

みんなありがとう!!、また来るね!

言葉の違いからたいして会話もせず、かつ短い間のつき合いだったが、なんか妙に寂しい気分になった。

ゆっくりと車が走りだし、彼らの姿がだんだん小さくなっていく。

ガイドの話では、帰りがけに「マルティーニ」なるドイツ人のキャンプへちょっとだけ寄っていくという。

実は、3日目の晩に我々の灯火サイトにも訪れた人物で、かなり愉快なおじさんだ。

彼のキャンプは近くにあり、すぐに到着した。

この方がマルティーニ氏。

あのマーチンホソアカクワガタの記載者でもある高名な昆虫学者だ。

驚いたことに、たった一人でキャンプを張られているらしい。

今回のボルネオ渡航はなんと12回目とのことで、熱の入れようはただ者ではない。現地にも多数のムシ仲間がいると言っていた。

かつては甲虫を専門にされていたとのことだが、今は「ガ(蛾)」を中心に研究されているそうだ。

本来なら会うだけでも大変な方にもかかわらず、「来年もまた来るんだろ?、次は一緒にムシを採ろう!」と気さくに声をかけていただいた。

とりわけ、ムシのことになるととても剽軽(ひょうきん)で、その目はまさに子供のようにキラキラと輝く。

チュウ氏にしろ、沢井氏にしろ、このマルティーニ氏にしろ、言葉も年齢も国籍も一切関係ない。ムシのことでは、すべての垣根が取り払われ、純粋に自然なコミュニケーションが取れる。

確かに、チュウ氏らにはお金を払ってムシを採らせてもらっているという事実はあるが、それをまったく感じさせないほどの手厚い心配りと対応をしていただいた。高い金を払う上等客だからということで、ビジネス上そうしているとはとても思えないのだ。

立場や採集対象の違いこそあれ「みんな単にムシが好き」、それだけだと思う。

ムシ採りの内容も凄まじかった今回のボルネオ採集行だが、それ以上にこのような人々と出会え、言葉では言い表せないほど充実しきった4日間であった。

本当に来てよかった。


● 帰国

車はオフロードを走りきり、舗装道路のところまで戻ってきた。

遠くに見える Trus madi 山にもここで別れを告げる。

あああ、帰りたくない、でも帰らなきゃ。

黙々とそんなことを思い続けていた。


滞在中、私のノドを潤し続けたミネラルウォーターも、今や懐かしさすら感じてしまう。

明日の今ごろは日本にいるんだなぁ...。

飛行機の搭乗まではまだ時間があるため、途中でチュウ氏の自宅で少し休むことになった。

悪路で散々酷使され続けた車。

お疲れさん。

ということで、ご自宅へ入れていただいた。

間髪を入れずに、チュウ氏、相棒、そして私と、ジャングルでの採集話に花が咲く。

チュウ氏が2階から、大量のタトウ(標本入れ)の入った箱を持ってきてくれた。

どんなムシが入っているんだろうか。

ちなみに、このチュウ氏も、チュウホソアカクワガタなど数種の甲虫を記載している人物でもある。

ガサガサとタトウを漁っていると...。

うおおおお、ネキじゃないか!!

うううう、これが採りたかったんだよぉ。

あああ、悔しさが込み上げてきた。

そんな話をしていると、この標本を安く譲ってくれるという。

本当なら自分で採りたいところだったが、記念という意味と、また来て採るという闘志を日本にてかき立たせる意味で、チュウ氏から購入させていただくことにした。

その後、無理を言ってお土産屋を紹介していただき、チュウ氏とはここでお別れ。手厚くお礼を述べ、一路、コタキナバル国際空港へ向かった。

1時間半ほどで、中心街へ入る。到着時は興奮のため、あまり気がつかなかったが、なかなか経済的に発展している都市である。高級ホテルが立ち並び、ケンタッキーやマクドナルドの看板も見える。

市内の中華料理屋でガイドらと夕食をとった後、いよいよ出発ロビーへ。

ここで、本当にお別れだ。

「Thank you very very much ! , I'll be back.」と告げ、彼らと別れた。

空港内へ入れるのは午後10時からということで、空港のケンタッキーで時間を潰す。

土産を買って使い果たす前に、リンギットの記念写真。

本当に良かったなぁ、相棒と楽しかった思い出に浸る。

さあ、時間だ。

不思議な味の「アイス・ミロ(MILO)」を飲み干し、出国手続きへ。

ああああ、押されてしまった...。


ということで、ボルネオさんさようなら...。


● エピローグ

4泊5日のボルネオ採集行、いかがだったであろうか?

当初はゆっくりと1週間隔ぐらいで更新しようかと思ったのだが、記憶や感動が薄れていくのが怖かったため、急ぎ足でアップすることになってしまった。

少なくとも、私が見て、感じて、考えた「ボルネオ」を、採集記というキャンバスにほぼすべて書くことができたと思う。

今後、いつ海外遠征に行けるかどうか分からないが、また機会があれば海外の様子をこのような採集記にまとめてみたい。

来週からは、今までどおり国内での採集となるが、こちらも全身全霊を込めて取り組むつもりなので、楽しみにしていただけたらと思う。

最後に、我々を底知れぬ大自然で包み込んでくれた「ボルネオ」、そして「関係者各位」に心から感謝の意を述べ、今回の海外採集記を終えることにする。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。


★★ 採集成績 ★★

ボルネオの大自然


記載日:2002.04.20

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