2002年度 採集記(福島県 カミキリ編 -1-)

南会津

う〜〜ん、約9ヶ月ぶりの南会津。

どれだけこの時を待っただろうか。

事前情報に煽られ、天気予報に煽られ、テンションが切迫破裂の状態であった。

あと数秒で破裂するという段階で幸いにも家族の了承が得られ、昨年と同様、家族旅行を兼ねた採集行が実現することとなった。

5月前半にタコ採れしたというビャクシンカミキリを始め、クリストフコトラカミキリ、オニヒゲナガコバネカミキリなど、昨シーズンまでに採りこぼしたカミキリムシ達の姿がみるみる頭の中を占領していく。

さあ、もう1秒も待つことはできない。

カミキリ採集の「メッカ」へ向けてスクランブル発進だ。



2002.05.26 (Sun)

福島県 南会津郡

   天気:晴れ時々曇り
   気温:13.2 〜 22.4 度
   風力:4(和風)
福島産カミキリ、1000日の想い 編

● 前日

土曜日は普通に出勤日であったが、外を見ると「雲ひとつ無い」見事な晴天。

南会津へ行きたい私にとっては、これはかなり体に堪える光景だ...。ネットの天気予報を見てみると、南会津も晴れているようであり、気温は26度まで上がると出ている。

さぞや林道沿いや土場では、カミキリムシ達が狂喜乱舞していることだろう。ああああ、天気予報なんて見るんじゃなかった...。火に油を注いでしまった。

う〜〜ん、行きたい、ああああ、行きたい。

しかし、先週は無理をして山梨へ行ってしまったため、今週末も家族を置き去りにするのはさすがに人道に反する。

でも、行きたい、ああああ、行きたい。

よし、これは昨年と同じく、家族もろとも行くしかないか。

ということで、早速、自宅へ電話をかけ「焼肉、温泉、自然と戯れる会(=ムシ採り)」という強引な交渉が成立した。

善?は急げ。仕事が終わると同時に、さっさと家族を拉致して、東北自動車道をぐいぐい北上することになったのである。


● 焼肉フロンティア

さて、今回も南会津の定宿となっている「焼肉フロンティア」に宿泊する予定だ。

当日の昼過ぎに電話をかけ「急ですが、これから行きます、泊めてください」という、常識外れの「ドタ予約」にもかかわらず快く対応していただいた。

本当にいつもありがとうございます。

そんな感謝の気持ちとともに2つの峠道を走りきり、ちょうど夕食時に舘岩村に到着した。

まずは、無事に到着したことを告げ、先に恒例の温泉へ入りに行く。時間がやや遅かったため、近くの弘法の湯にドップリと浸かる。泉質が良いのか、上がったあとも長時間体がポカポカして腰痛持ちの私にはありがたかった。

そして、9ヶ月ぶりの「焼肉+生ビール」を思いっきり堪能し、とても幸せな気分だ。

さて、到着時、フロンティアにはカミキリ屋さんが1人夕食を食べておられ、少しお話させていただいた。その方のお話によると、この土曜日は朝から雨が降り、止んだと同時に強い風が吹き荒れ、おまけに気温は低く、とにかく散々だったそうだ。

う〜〜む、予報と随分違うなぁ...。

明日は大丈夫だろうか?

ちょっと不安になりながら、寝所に就いた。


● 不安ははるか彼方へ

7時に起床し、窓の外を見てみると...。

うお〜〜〜!!

ドピーカンじゃないか。


木漏れ日も目が痛いほどだ。

これは採れないはずがない。

昨晩の不安などどこかへ飛んでいってしまった。

7時半に絶品の朝食をいただき、ここからは臨戦態勢。

徐々にテンションが高まる中、武者震いする手で採集準備を整えた。


● 巡回

眩しいほどの太陽が照りつける中、事前情報を考慮に入れつつ、まずは既知のポイントを中心に巡回することとした。

ここは昨年、多種のカミキリムシを採集した材置き場であるが、年々腐朽が進んでいるようだ。

ぱっと見は駄目そうである。

材の表面のみならず、隙間や裏側まで観察してみるが、ムシの陰はない....。

せいぜい、こいつを見つけた程度だ。

ゴマダラモモブトカミキリ。

[ Leiopus stillatus (BATES, 1884) ]

ということで、早々に移動。

せっかくなので、まだ入ったことのない枝道へ折れてみる。

が、しばらく走った後、「これより先へは行けない外道」と遭遇してしまった。

あああああ。

渋々Uターン...。


次のポイント。

しかし、ここも全く駄目であった。

これだけ天気が良く、時間的にも悪くないと思うのだが...。

やはり材が古いのだろうか?

仕方なく、さらに大きな移動をかける。

すると、途中の製材所でカミキリ屋さんをゲット。

その方に聞いてみたのだが、私が見てきたのと同様に、本日はまだあまりカミキリムシが飛んでいないとのことだ。一致した見解としては、陽射しが強いものの、やや冷たい風が強く吹いており、それが原因だろうということであった。

また、その方は先週オニヒゲナガコバネカミキリ(通称:ピニボラ)を南会津で採集されたそうで、これは重要な情報であった。すなわち、すでに発生しているということだ。

その他の情報として、ビャクシンカミキリはそこそこ残っており、クリストフコトラカミキリは全く姿を見なくなったそうである。さらに、かつて採れたと言われるコトラカミキリに至っては、通うようになってから一度も見たことがないと言っておられた。

これらの情報を整理すると、ピニボラとビャクシンは運が良ければ採れる、ということになる。

ということで、ターゲットはほぼ確定した。

ピニボラを狙うならアカマツなどマツ科の材、ビャクシンを狙うならスギやヒノキの材を丹念に見回れば良いということだ。

飛来する時間帯もあるだろうから、マメにいくつかのポイントを巡回したほうがいいだろう。

このようにカミキリムシの攻略予定は立ったが、ここは南会津。コルリクワガタの様子も見ておかなければならない。

こりゃ忙しくなりそうだ。


● 偵察@コルリ

昨日から新潟県境まで国道が開通したそうで、檜枝岐村の奥へも行けるのだが、さすがに家族がぐったりしてしまうだろう。

結局、相棒御用達のポイントへコルリの様子を見に行くことにした。

家族を車に残し、一人で林道へ突入する。

熊が出ませんように...。


林道沿いでは、マルバウツギが5分〜8分咲きといった状態。

何かカミキリムシが訪花していないかと観察してみたが、な〜〜〜んもいないようだ。


コブシは満開。

これは昨年より約1週間早い。

その後しばらく、道沿いにあるブナの幼木を中心に見てみたが、どの葉も完全に開ききっている...。

植物に関しては、本当に季節の進みが早いようである。

ちなみに、見渡すかぎり雪はまったくみられない。

最後の望みとなるのは「トネリコ(アオダモ)」であるが、これが駄目ならアウトだ。今までの経験上、このポイントではブナよりもトネリコの方にコルリが多くついているような気がする。

エゾハルゼミの大合唱の中、いつものトネリコのポイントへ到着した。

さあ、コルリはいるだろうか?

ああああ、駄目だ...。

見事に全開。


花まで咲き始めている始末...。

道沿いは、ことごとくこんな感じであった。

しょうがない、なるべく日陰の場所を求めて、奥の方へ入ってみる。

う〜〜ん、根元にコルリが齧(かじ)った痕跡はあるが...。


おおっ、これはまだいけるか?

なんとしたことか、もうこのポイントでは新芽がほとんどないじゃないか。

カミキリ採集に戻るべく、早々に立ち去ろうとしたところ、数メートル先の新芽に黒い陰を発見した。

やった〜〜〜!!

まだ残っていた。

久しぶりだねぇ。

撮影の後、手に取ってみると♀はすでにボロになっていた。発生後期と思われる。

ここでふと顔を上げると、この周囲には同様の新芽がいくつか残っており、なんとそれぞれにコルリが「鈴なりに」ついているではないか。

残り少ない新芽を多勢に無勢で貪っているようだ。

それらを次々に摘み、ほんの15分程度で合計15頭(10♂♂5♀♀)をゲット。

と、短時間のうちにけっこうな数を採集できたのだが、やはりいくつかの個体はボロであった。いずれにせよ、ここの新芽は来週まで持たないだろう。

ということで、偵察を終え車へ戻ることにした。

さあ、カミキリムシを本格的に探すぞ。


● ビャクシンは?、ピニボラは?

来た道を引き返し、再び各カミキリポイントを巡回する。

時間はもうすぐ12時。気温もぐんぐん上昇している。

これでロクな成果を上げられなければ、何をしに来たのか分からない。

とりあえず、有名な製材所の前に到着した。

ここでは、スギリンさん、がっこさんなど数名のムシ屋さんと出会った。

昨年以来であり、懐かしい顔触れだ。

それにしても、揃いも揃って南会津に集結しているとは、私を含めどうもムシ屋の思考回路は同じなのかもしれない。

ともかく、予期せぬ再会に心が和む。

当然、いろいろと情報交換させていただいたが、今日は全般的にムシの数が少ないらしい。

困ったものである。

ただ、今し方ビャクシンが2頭ほど採れたようなので、スギ材を見に行ってみる。

が、スギの材上には「果てしなくどうでもいいやつら」しかいない。

こいつらでさえ、例年に比し数が少ない印象だ。

[ Palaeocallidium rufipenne (MOTSCHULSKY, 1860) ]

ヒメスギカミキリというカミキリムシだが、もはや説明はいらないだろう。このまま「放置プレー」を楽しんでいただこう。

しばしの雑談の後、予定通りの巡回コースを流すことにした。

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