2002年度 採集記(福島県 カミキリ編 -2-)

採りこぼし@南会津

今季2度目の南会津出撃となる今回は、昨年のこの時季に採りこぼしたカミキリムシと、追加の欲しい種類をぜひとも採ってしまいたい。

具体的には、シラホシキクスイカミキリ、ニセヤツボシカミキリ、ヤツボシカミキリ、ヤツメカミキリ、モモブトハナカミキリ、ムネマダラトラカミキリ、オニヒゲナガコバネカミキリ、キンケトラカミキリ、トウキョウトラカミキリなどなど、結構多い...。

あとは、カミキリムシではないが、キンヘリタマムシという綺麗なタマムシも狙ってみたいと思っている。

梅雨入りしたこともあり、天気がやや気になるところだが、幸い、この週末はあまり崩れないらしい。

ということで、好天になることを期待しつつ、東北自動車道を北上するとしよう。



2002.06.15 (Sat) 〜
2002.06.16 (Sun)

福島県 南会津郡

   天気:晴れ時々雨 〜
      曇り時々晴れ
   気温:24.1 〜 26.0 度
   風力:1〜2
福島産カミキリ、梅雨の南会津 編

● 下見@栃木県

福島県へ入る前に、ちょっと寄り道したい場所(栃木県)があるので、まずはそこを見に行くことにした。

そして、けっこうな距離を走って、なんとか下見らしい下見はできたと思う。

ただ、今回はあまり特筆すべきエピソードがなかったため、採集記としては書かないでおく。


● 福島県へ

いつもの道へ戻り、ひたすら南会津方面へ車を走らせる。

午前10時の段階で、曇ってはいるものの気温は25度前後と蒸している。

時折うっすらと日が射すほどで、これならカミキリムシの採集には問題ないだろう。

と、ある民家の脇に新鮮な薪が積み上げてあるのを発見した。

う〜〜ん、これは見ておかないと...。

やや大回りをして、材まで近づいてみる。

おおおっ!

何かいるぞ。

むむ、キンケトラカミキリだ。

ということは、ケヤキの材か。

生きているときの体色は、本当に綺麗だ。


うおおお!、あちこちにいるじゃないか。

こいつはラッキーだ。

もう採るのも忘れて、ひたすら生態写真を撮る。

[ Clytus auripilis BATES, 1884 ]

結局、ゲットできたのは4頭のみで、その倍以上は逃げられてしまった...。

でも、ナイスな写真が撮れたので良しとしよう。

余談だが、今までの経験上、迫力があって「ググっ」と心をつかむような写真を撮るには、逃げられるのを覚悟で、できるだけムシに近づいてシャッターを押すことが一番だと思う。

その際、「採る」か「撮る」か、どちらか一方が犠牲になるのはどうしようもない。毎回、この点で葛藤が生じているわけだが、最近は「撮る」をやや優先している。

採集した標本は時間の経過とともに色あせ風化していく可能性があるが、デジタル写真は永久にその美しさを保つ、ということがその理由かもしれない。

まあ、そんなことはどうでもいいか...。

それはそうと、本日も「焼肉フロンティア」に宿泊させていただく予定だ。

また、今晩はネットで知りあった「Kさん」と合流することになっていて、さらに相棒もこちらへやってくるということで、賑やかな採集行となるだろう。とても楽しみである。

そんなことを思いながら、本命のポイントを目指した。


● 舘岩村

最後の峠を越えて、いよいよ舘岩村へ入る。

先月末に来たばかりだが、すでに懐かしさすら感じてしまう。いつ見ても心安らぐ景色だ。

まずは、いつもの土場を見てみることにした。

一見して、材の入れ替えはあまり行われていないようだ。

ムシの飛ぶ姿はなく、材を運ぶ小型クレーン車の音だけが辺りに響いている。

実際、材のひとつひとつを見て回るも、まったくムシの気配はなく、このポイントも年々ムシの数が減っている感が否めない。

結局、見つけたムシはこいつだけであった。

スギ材にいたコブヤハズカミキリ。

どうして、スギにいるんだろうか...。

小一時間問い詰めたい。

[ Mesechthistatus binodosus (WATERHOUSE, 1881) ]

埒が開かないため、次のポイントへ行く。

土曜日の日中に南会津へ来るのは昨年来かもしれないが、雨が降っていないにもかかわらずムシ屋の姿はない。土曜日って、いつもこんな感じなのかなぁ。

それとも、梅雨ということを見越して、そもそもムシ採りには来ない時期なのだろうか?

ムシなどを採っているのは自分だけのような気がして、なんとなく不安になってきた。

とりあえず、ポイントへ到着する。

ここは広大な伐採地跡となっている。

アヤメだかショウブだか分からないが、なかなか風流な景色だ。

どんどん進んでいくと、奥の方に1台の車が止まっており、前回お会いしたカミキリ屋さんがスポーツ新聞を読んでいるではないか。

その姿を見て、ちょっと安心する。

話を聞けば、毎週土日は南会津へ通われているそうだ。

「いつ、どのポイントで何が採れた」など、とにかく情報バンクな方なのである。

今回はキンヘリタマムシも狙っていると言うと、「あああ、キンヘリならあのハルニレだな」と、指を差しつつ即座に答えが返ってきた。う〜〜ん、思った通りとても物知りだ...。

せっかく教えていただいたので、早速、そのハルニレを見に行くことにした。


● ハルニレ好きなムシ達

ネット&ビーティングネットとデジカメを携え、少々急な斜面を登っていき、そのハルニレを下から見上げる。

ふ〜〜ん、何の変哲もないハルニレなんだけどなぁ。

ともかく、この木が一番採れると言うのである。

百聞は一見に如かず、びゅ〜〜っとネットを伸ばし、何箇所か葉を掬ってみると...。


ああああ、入っていた...。

なんともあっけない。

キンヘリとは言うが、辺縁部にはあまり「金色」の帯がみられず、全体的に赤いタマムシであった。

[ Poecilonota pretiosa bellula LEWIS, 1893 ]

おそらく、地域によるカラーバリエーションと思われる。

その後も執拗にスイープしてみるも、採れたのはこの1頭だけであった。

まあ、この曇天でも採れたのだから、晴れていればもっとたくさん採れただろう。

ということで、タマムシはお終い。本命のカミキリムシを狙うことにする。

このポイントにおけるカミキリムシの採集法は、各種の花や葉に飛来する個体を手や網で採るという作業がメインとなる。

まずは、伐採後の「ハルニレのひこばえ」を観察してみる。

背丈としては、高いものでもせいぜい私の背ぐらいで、大抵は上から見下ろすことができるためルッキングは楽だ。

葉にはムシに食われた跡がみられる。

しばらく葉を見ていると、いきなり目の前にムシが飛来した。

むむむ、これはシラホシカミキリか....?

でも白い斑紋が少なく、どうも違うようだ。

これがシラホシキクスイカミキリなのか?

昨年見たのはもっとスリムだったような気もするが...。

それに、白い斑紋ももっと薄かったような...。

おおおおっ!

ここにもいた。

やっぱりシラホシキクスイカミキリだよねぇ...?


なんだか、たくさんいるぞ。


う〜〜む、ここにも。


いや〜〜、キリがない。


おおお、そうそう、昨年見たのはこんな感じだった。

ということは、ここに飛来しているやつらは、シラホシキクスイカミキリでOKだろう。

う〜〜ん、幸せ。

[ Eumecocera gleneoides (GRESSIT, 1935) ]

それにしても、これまで虎視眈々と狙っても全く採れなかったカミキリムシが、目の前にこれほどたくさんいると非常に複雑な気分だ。

シラホシカミキリとの鑑別点については、後日、日記などで紹介しようと思う。

さて、このハルニレ、シラホシキクスイカミキリ以外にも、ニセヤツボシカミキリなどのカミキリムシが後食する植物として知られており、実際に昨年もスイーピングにて数頭採集した経験がある。

案の定、本日もニセヤツボシ君がいるようだ。

こいつらは、シラホシキクスイカミキリ以上にすばしっこい。

生態写真はこれが限界だった...。

[ Saperda mandschukuoensis BREUNING, 1943 ]

南会津における今年の「シーズン@ニセヤツボシ」は終わったと聞いていたが、そんなこともないようだ。数的にもそこそこ採集できたので満足だ。

新たな被写体を求め、ひこばえの周囲を振り子のように行ったり来たりしていると、ふと、枝にしがみつくカミキリムシと目が合った。

うむむむ、これは何カミキリだろう?

名前が思い浮かばない。

ハルニレに来るカミキリムシだよねぇ....。

結局、現場では落っことしてしまったため同定しえず、帰宅後、写真をもとに図鑑を調べてみたのだが、外見上は「カラフトヒゲナガカミキリ」に似ている。

ただ、こいつらのホスト植物は、通常はアカマツなどの針葉樹と書いてあり、とてもハルニレに来る雰囲気などはない...。

さっきのコブヤハズカミキリ@スギ材のように、「たまたま」いただけなのだろうか?

謎は深まる...。

まあ、考えていても答えが出ないので、この辺で次の獲物を探すとしよう。


● 白い花

伐採地を一人とぼとぼ歩く。

ざっと見た感じでは、昨年大量のカミキリムシが飛来していた「カンボク」の花は、すでに終わっているようであり、見渡すかぎり白い花はほとんど見られない寂しい状況となっている...。

しかしながら、よく見てみると「ガマズミ」のクリーム色の花が点々と咲いているようだ。

何か飛来しているといいが...。

最寄りの花のところまで行ってみる。

これがガマズミ。

まだツボミも混在している。

さ〜〜て、何かいないかなぁ...。

いたいた。

これはクロハナカミキリ。

何気に未採集種だったりする。

[ Leptura aetiops PODA, 1761 ]

そしてツヤケシハナカミキリ。

一般に、♂はつや消し黒、♀はつや消し黒の他、赤い個体もみられる。

ということで、こいつは♀。

[ Anastrangalia scotodes scotodes (BATES, 1873) ]

ノイバラは満開を迎えており、今がまさに旬。

基本的に「集虫力」はあまり強くないが、写真のムネアカクロハナカミキリはよく飛来してきていた。

[ Leptura dimorpha BATES, 1873 ]

その他は、ホンドアオバホソハナカミキリ、ヤツボシハナカミキリ、ハネビロハナカミキリ、ミヤマクロハナカミキリ、カラカネハナカミキリ、ミドリカミキリなど、この時季の常連客が少ない花を貪るように群がっていた。

またしばらく花を探して歩いていると、ぽつんと1本だけ花をつけているガマズミを見つけた。

あまり期待が持てない面持ちだが、大半の花が終わっている現在、ぜいたくは言えない。

徐々に花へ近づくと、何かカミキリムシのようなムシが乗っかっているのが見えた。

ひゃっほ〜〜!

モモブトハナカミキリだ!!

これ欲しかったのよ。


うひひひ、もう1頭いた。

逃げられはしないかと、ドキドキしながらシャッターを押しまくる。

[ Oedecnema gebleri (GANGLBAUER, 1899) ]

少々しょぼい写真だが、今回はこれが我慢の限界だった...。

写真を撮り終え、早々にゲットする。

実際に2頭を手に取って見てみると、モモブトとは言うものの、どちらのモモも太くない。要するに、こいつらは♀ということだ。

ちなみに、♂のモモは名前の通り太くなっており、ぐい〜〜っとたまらない湾曲を伴うのが特徴的なのである。

そういえば、昨年オオハマウドの花にて採集したのも♀であった。

♂はあまり訪花しないのだろうか?

さて、「いつものやつら@この時季」を摘みつつ、ほとんどの花を見てしまったため、ここで視点を変えて土場のポイントを見に行くことにした。


● 土場

時間は昼をとうに過ぎており、かなり空腹になってきたが、食事をするのも面倒なのでそのまま土場へ直行する。

前回よりも、新しい材が幾分増えているようである。

最初に、井桁に組まれたスギ材を見てみる。

さすがにビャクシンカミキリは残っていないだろうなぁ....。

おや??

ヒメスギカミキリがカッコウムシに食われている...。

まるで「ハブとマングース」のようだ。

ふ〜〜む、カッコウムシは肉食なのか...。

でも、この光景はどこかで見たことがあるなぁ。

気のせいかな。

いずれにせよ、結局、いるのはヒメスギカミキリのみであった。

別の材でムシを探すことにする。

っしゃ!

やや古めのサワグルミ材に、スレンダーなカミキリムシを発見。

セミスジニセリンゴカミキリだ。

[ Eumecocera trivittata (BREUNING, 1947)1935) ]

や〜〜っと、今回2種目の未採集種をゲットできた。

おおお、材の陰に何かいるぞ。

チャイロホソヒラタカミキリ。

周囲の様子を窺っているのだろうか?

[ Phymatodes testaceus (LINNAEUS, 1758) ]

極小のシラケトラカミキリ。

ヒメクロトラカミキリと変わらないほど小さい...。

[ Clytus melaenus BATES, 1884 ]

それなりの時間をかけて、置いてある材を一通り見てみたが、たいした獲物は追加できなかった。

一応、ここで採集した種類を自分の記録として下に列挙しておく(五十音順)。

アトモンサビカミキリ、エグリトラカミキリ、カラカネハナカミキリ、キスジトラカミキリ、シロトラカミキリ、ナカジロサビカミキリ、ハネビロハナカミキリ、マルモンサビカミキリ。

ここで雨が降り始める。

もう1ポイント回ろうかとも思ったが、栃木の下見を含めかなり長距離を走ってきたためさすがに疲れた。

ということで、本日の採集は終了。温泉に浸かってゆっくりしよう。

一路、伊南村にある「窓明けの湯」へ直行した。


● 合流

さて、温泉を堪能した後、今度はフロンティアへ向かう。

そろそろ「Kさん」も来ているかもしれない。

「来ました〜〜」と、ドアを開け中へ入ると、マスターご夫婦しかいない。「Kさんは到着されてますか?」と聞くと、すでに奥の部屋でゆっくりされているという。

で、その部屋まで行き、やっとKさんとの初対面が叶う。

Kさんは、お仕事を定年退職されたのをきっかけに、昔なさっていたというカミキリ採集を復活。その際に、私のHPを見つけて即座に私へメールを出すという、かなりの情熱派だ。それがご縁となって、今回の合同採集が実現することになった。

今季、早くも2度目の南会津採集行となるのだから、その熱の入れようが窺える。

さあ、細かい話はビールを飲みながら。

ということで「乾杯!!」、グラスとグラスがぶつかり合う。

朝から何も食べていなかったため、最初の一杯であっという間に酔っぱらってしまった。

その後は、ひたすら「ビール&焼肉&ムシ談義」。とても楽しい一夜を過ごすことができた。

10時ぐらいに外はすごい豪雨となり、それより30分ぐらい遅れて相棒が東京から到着した。聞けば前が見えないほどの強い雨で、スピードが出せなかったらしい。お疲れさん。

さあ、これでメンバーが揃った。

明日は晴れるとの予報が出ているため、とても楽しみである。

W杯を見た後、「爆睡」のはずだったのだが、ちょっとだけ「金縛り」....。

やはり疲れていたのかなぁ...。

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