2002年度 採集記(茨城県 小型種編 -1-)

原名亜種ツヤハダクワガタ

初めて茨城県でツヤハダクワガタを採集してから、どれほど時間が経っただろうか。最初に立派な♂を手にした時の感動は今でも忘れられない。

ツヤハダクワガタは日本産クワガタのなかでは極めてユニークな風貌をもち、一見不格好なのだが何とも言えない魅力を秘めたクワガタである(と思う)。個人的には、時折、異常に採りたい衝動にかられてしまうターゲットの一つでもある。

日本において本種は1属3亜種が知られており、それぞれ原名亜種ツヤハダクワガタ、ミヤマツヤハダクワガタ、ミナミツヤハダクワガタだ。

図鑑によると、原名ツヤハダは主に関東以北、ミヤマツヤハダは関東以西、ミナミツヤハダは四国と九州の一部に生息するとされている。

このうち、私のよく行く茨城のポイントでは、原名ツヤハダを採集することができる。おそらく南限に近いエリアだろう。原名ツヤハダの大あごは、他の2亜種に比較して最も大振りで、非常に見栄えが良い気がする。

案の定、今回は異常に採りたい衝動にかられてしまったので、それに逆らうことなく素直に出撃することとした。ただ、どれほどの積雪があるかが未知数であり、最悪の場合、材がカチンカチンに凍っていれば、まったく歯が立たないこともあり得る。リスクの大きい出撃だ。

さあ、どうなることやら...。



2002.01.15 (Tue)

茨城県 某所

   天気:晴れ
   気温:8度
   風力:1(微風)
茨城県、つーさんの採集記を読んでたらツヤハダを採りに
行きたくなっちゃって、思わず採りに行っちゃった編

● 動機

年が明けてしばらく経ったある日、果てしない暇を持て余していたため、せめてもの暇つぶしにネットのクワガタサイトを眺めていると、「くわ馬鹿」最新号に掲載された「つーさん」のミナミツヤハダ採集記で目が止まった。

赤腐れした材から次々とミナミツヤハダが割り出される写真が、これでもかってほど載っており、私はこれにすっかり感化されてしまった。ちなみに「つーさん」は、ツヤハダ男の異名をもつほどツヤハダとの相性がいいらしい。羨しいかぎりだ。

というわけで、先日の日記にも書いたように先週の火曜日も一度は出撃を決意したのだが、情けないことに「積雪」という2文字に尻込みし、その時は断念してしまった経緯がある...。

しかしながら、今回はどうしてもコンコンと湧き出る衝動を抑えきれない。ここ数日の温暖な気候で雪も溶けているだろうという都合のいい判断の元、ポイントへ向けて愛車のハンドルを切ったのであった。


● 雪化粧

出発時点での気温は15度であり、春かと勘違いするような陽気であったが、ポイントへ近づくに連れて徐々に寒くなってきた。

日陰にはうっすらと雪が積もっている。

う〜〜ん、これは嫌な予感...。

標高を上げると道路の端々に路面凍結が目立つようになり、一抹の不安がよぎる。

やっとポイントへ到着。

それなりに雪が溶けている場所もあるが、林内はやはり雪化粧。

気温はなんと8度、予感が的中した。

まいったなぁ...。

無言で採集準備を整え、雪で倒された笹藪を長靴で踏みつけながら林内へ突入する。

右も。


左も一面の銀世界...。

こりゃ、先が思いやられる。


● 放浪@林内

ツヤハダクワガタのホストは、基本的に赤腐れした立ち枯れや倒木である。正確には「褐色腐朽材」と呼ばれ、朽木につく菌類「褐色腐朽菌(オオウズラタケ、ナミダタケなど)」の分解産物(リグニン)によって、そのような色を呈するらしい。褐色腐朽菌は、主に日当たりの悪い多湿な場所を好むようだ。

樹種に関しては私の乏しい採集経験上、ブナやミズナラなど広葉樹の場合が比較的多いと思われる。

まあ、おせっかいな蘊蓄(うんちく)はこの位にしておいて、真っ白な林内を散策するとしよう。

ざ〜〜っと、周囲を見渡しても良さそうな立ち枯れは視界に入らない。

かと言って、倒木を探そうにも雪の下となっている状況だ。

のっけから途方に暮れることとなる...。

そんな寂しい思いに支配される中、目の前に絶好のルリ材を発見した。

「いつものやつ」を今更....、とも思うのだが、オノを持つ手は無意識に材へ伸びる。

しかし、材の裏側にはすでに削られた跡が...。

結局、幼虫1匹採ることができなかった。

さらに10メートルほど斜面を下ったところに、ブナの倒木が横たわっており、その近くに比較的太い枝が転がっていた。

少し表面を削いでみたが、なかなかの材だ。


お約束のマークも発見。


おおおっ!


ふ〜〜む。


もう一丁。


いくらでも、


わき出る。


いつものやつ。


● 歯が立たず...

ルリクワガタばかり採っても仕方ないので、今後ルリ材は無視することにした。

なにより足の感覚がなくなってきたため、そんなには粘れない。

とにかくトリュフを見つけるブタのごとく、「赤い材」を雪の下から探しださなければならない。

15分ほど歩き回って、ようやくそれらしい材に巡り合った。

幸い、あまり雪もかぶっていないようだ。

もう、こいつに賭けるしかない。

が、いざオノを振り降ろすと「キ〜〜ン」というかん高い音とともに、同じスピードで180度反対方向へ弾き返される。「作用反作用の法則」の実験をしているようだ。

なんて固いんだろう...、まったく歯が立たない。

材はしっかりと凍りついていた。

まあ、すべての部分が凍っているわけではないので、端の方などを削ってみたが、食痕の1本も出てこない。そして、シャーベット状の削りカスが容赦なく顔面へ飛んでくるため非常に痛い。

むむむむ、かき氷を頭からひっくり返されたようになりながらも、可能なかぎり削り続けたが、ヒサゴゴミムシダマシが数頭転がり出たのみでとうとう力尽きる。

「もうだめだ、足がもたない」、一端そう思いだすと私のツヤハダ採集欲など案外脆いもので、妙に温泉が恋しくなり、行きつけの温泉へ直行するのであった...。


● エピローグ

あれだけ冒頭でツヤハダクワガタに関する能書きをたれたが、結局はボーズ...。

「口ほどにもない奴」とは、まさに私のことだ。

それにしても、雪の中で倒木を探すことほど辛いことはない。今回はそんな当たり前のことを、身をもって体験した無謀な出撃であった。

ああああ、春の到来が待ち遠しい。


★★ 採集成績 ★★

ルリクワガタ 4♂♂2♀♀


記載日:2002.01.17
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