2002年度 採集記(茨城県 カミキリ編 -12-)

今日もさくさく

南会津から帰ってきて、まだ2日しか経っていないが、火曜日はいつもどおりやって来る。

まあ、ここまで採集が濃密になってくると、さすがに疲労の蓄積は避けられないし、当然「行き過ぎ!」というお叱りを受けるかもしれない。下手をすると、採集自体がストレスの原因となってしまう可能性がある...。

しかし、2002年のシーズンは1度限り。出撃できるチャンスを逃してしまえば、2度とその日が帰ってくることはないのだ。

いずれにせよ、行っておけばよかったと「後悔」だけはしたくないので、本日も謹んで出かけることにする。

予定としては、先週と同じルートを「さくさくっ」と攻めてくるつもりだ。



2002.05.28 (Tue)

茨城県 某所

   天気:晴れ
   気温:24.4 度
   湿度:56.8 %
   風力:1(微風)
茨城産カミキリ、悔いのないように 編

● まずはソダを

それでは出発しよう。

本日も眩いぐらいの晴天である。もしかすると、5月中で一番天気が良い日なのではないだろうか。

きっと、カミキリムシも活発に動き回っているはずだ。

まずは、前回の採集行にて見つけたソダ場へ直行する。

よしよし、まだ健在だ。

むわ〜〜っと、草叢の匂いが鼻をくすぐる。

相変わらずネムノキの材には、大量のホタルカミキリが着いている。

今や、すっかり普通種という認識になったが、けっこう綺麗なカミキリムシである。


なかなか良い写真も撮れた。

今回も適当に摘んでおく。

[ Dere thoracica WHITE, 1855 ]

他には何かいないだろうか?

おおっ!

シラケトラカミキリが発生している。

茨城県では初物。

[ Clytus melaenus BATES, 1884 ]

あとは、カラカネハナカミキリ(茨城初)、エグリトラカミキリ、ベニカミキリといったところだ。

一見して、先週とは比べ物にならないほどムシの数は多い。

さあ、林道へ急ごう。

と、車へ戻る途中、道端のヨモギにカミキリムシを発見してしまった。

こんにちは!

キクスイカミキリ君。

1週間ぶりだねぇ。


むむむ、またいた。


シチュエーション的には、大型トラックの往来激しい県道沿いなのだが...。

排気ガスなど関係ないのかもしれない。

そんな環境でも生きていけるとは、こいつらもやはり「普通種」だ。

[ Phytoecia rufiventris GAUTIER, 1870 ]

ということで、このポイントを後にする。


● ベーツヤサカミキリ

滞りなく目的の林道へ到着した。

今までに何度か書いたかもしれないが、最近探索を続けているこの林道は、茨城県内でも唯一「南方系」カミキリムシの記録がある面白いポイントで、ベーツヤサカミキリ、スネケブカヒロコバネカミキリなどが採集されている。

その他にもマダラゴマフカミキリ(ポエキラ)など、他のポイントで公には採れていないカミキリムシの記録があり、県内では幾分エキセントリックなカミキリ相を有している。

とりあえず、今回はベーツヤサカミキリとマダラゴマフカミキリの2種に絞って探索を進めていきたいと思っている。なお、 ポエキラの説明は今までにもしているため、今回は割愛させていただくこととする。

さて、そのベーツヤサカミキリ。

図鑑によると、このカミキリムシは伊豆半島以西に広く生息するが、その分布は極めて局所的なのだそうだ。要するに「珍品」の部類に入るカミキリムシと言えるだろう。

また、活動時期は5〜6月と比較的短く、材採以外ではカエデやクリの花を掬うことで採集されるケースが多いようだ。ホストの植物は、カゴノキ、クスノキ科となっている。

写真を見たかぎりでは、ピドニア(ヒメハナカミキリ属)のように細く華奢(きゃしゃ) であり、一歩間違えばカミキリムシとは思えない外観をしている。

う〜〜ん...。

いずれにせよ、本当にこんな珍しいカミキリムシが「カミキリ不毛地帯」の呼び声高い茨城県に生息しているのだろうか?

はっきり言って、まったくピンと来ない。

もっとも、記録はあるのだから少なくともいる(いた)のだろうが、とても私が採集できるタマではなさそうだ。

まあ、「もじもじ」言っていても仕方ないので、自分の「カン」を信じて思ったように探していくしかないだろう。

ということで、結局、ホストの植物(カゴノキ、クスノキ)を探すのはあまり自信がないため、今回は花をスイープする方法を選択した。

カエデには遅く、クリには早い今の時期だが、何らかの花で代替されることを信じよう。

さあ、蘊蓄(うんちく)はこの位にして、そろそろ花を探しにいこう。


● 探索開始

ぐい〜〜っと、坂を上っていく。

ベーツヤサカミキリに関しては林道沿いにある「花」を片っ端から、ポエキラに関しては前回見つけたコナラ・シデ林を奥の方までえぐってみたい。

ヤブデマリの花上には、ぽっつりとホタルカミキリが1頭。

あとは、トゲヒゲトラカミキリぐらいしかいない...。

[ Dere thoracica WHITE, 1855 ]

先週「満開」だったコゴメウツギのポイントは、すでに花が終わりかけている。

ムシの姿も少ないが、一応、掬っておこう。

なんと、ツヤケシハナカミキリだ。

恥ずかしながら、茨城初。

[ Anastrangalia scotodes scotodes (BATES, 1873) ]

お次は、ヤツボシハナカミキリ。

こいつも茨城初。

[ Leptura arcuata mimica BATES, 1884 ]

そうこうしているうち、ポエキラポイント(と勝手に思っている)に着いてしまった。

ちょっと日当たりが悪いかな...。

早速、採集準備を整えて斜面へ突入する。

とりあえず、立ち枯れを探していくが、思いの外少ない。

そして、数少ない材を舐めるように観察していくも、ポエキラらしきカミキリムシの姿はないようだ。

実は、案外、期待外れのポイントであった...。

これは車へ戻る途中にあった枯れ枝。

極端に日が当たっておらず、無視しようかとも思ったのだが、いいタイミングで動くムシの影を見つけてしまった。


何かと思えば、トガリバアカネトラカミキリだった。

材上で採集したのはこれが初めて。

同じく、茨城初物。

[ Anaglyptus niponensis BATES, 1884 ]

で、もう1種。

クモノスモンサビカミキリ。

こいつは、本格的にカミキリ採集を始めて以来の「初」。

[ Graphidessa venata venata BATES, 1884 ]

で、おまけのもう1種。

ヒメナガサビカミキリ。

ピンボケ...。

[ Pterolophia leiopodina (BATES, 1873) ]

まあ、エセ・ポエキラポイントは大方こんな感じだ。

それでは、車でもっと先まで流してみよう。

しばらく走っていると、ものすごい日当たりの良い山側の斜面にコゴメウツギが満開を迎えていた。

車の窓からも、ぶんぶんとムシが乱舞しているのが確認できる。

これは見ておきたい。

というわけで、まずはルッキングしてみる。

手の届く範囲にはたいした獲物はなし。

上の方は掬ってみるしかないだろう。

と、車からネットを取りだし、目ぼしい所を数ヶ所スイープしてみる。

ん!、なんだこりゃ?

トゲヒゲトラカミキリやチャイロヒメハナカミキリなどに混じって、細長い褐色のムシが入っているのに気がついた。

動きがかなり速いが、なんだろうか?

手でつかんでみると...。

あああ、これは...。

採れちゃった...。


これぞ、ベーツヤサカミキリ。

本当にいるんだ。

ふ〜〜む、コゴメウツギでもOKなんだな。

[ Leptoxenus ibidiiformis BATES, 1877 ]

ここのポイントでは追加が得られなかったため、さらに先へ行く。

すると、またコゴメウツギの満開にぶち当たった。

言うなれば「グレート・コゴメウツギ」だ。

再びスイープしてみる。


うおっ!!

っしゃ〜〜!

2頭いっぺんに入った。

こりゃあ、すごい。

4匹目のドジョウを狙って、もうひと掬い。

ひゃっほ〜!

けっこうたくさんいるんじゃないか。


さらにこんなやつまで入っていた...。

もう説明はいらないかと思うが、コジマヒゲナガコバネカミキリである。

[ Glaphyra kojimai (MATSUSHITA, 1939) ]

う〜〜ん、もう十分。

というわけで、満載の満足感とともにポイントを後にしたのであった。

それにしても、ベーツヤサが「一撃」で決められるとは思わなかったなぁ...。

シナリオのない展開がまた、採集の楽しくも面白いところである。


● エピローグ

う〜〜ん、本当に今日は採集へ行って良かった。

これで、もし行っていなかったら一生「後悔」していたかもしれない。

ああああ、茨城県って最高だ。

来週もまた行ってみようかな。


★★ 採集成績 ★★

ホタルカミキリ  7 exs.
[ Dere thoracica WHITE, 1855 ]

シラケトラカミキリ  4 exs.
[ Clytus melaenus BATES, 1884 ]

ベーツヤサカミキリ  4 exs.
[ Leptoxenus ibidiiformis BATES, 1877 ]

キクスイカミキリ  3 exs.
[ Phytoecia rufiventris GAUTIER, 1870 ]

エグリトラカミキリ  2 exs.
[ Chlorophorus japonicus (CHEVROLAT, 1863) ]

トゲヒゲトラカミキリ  2 exs.
[ Demonax transillis BATES, 1884 ]

ナカジロサビカミキリ  2 exs.
[ Pterolophia jugosa jugosa (BATES, 1873) ]

カラカネハナカミキリ  1 ex.
[ Gaurotes doris BATES, 1884 ]

コジマヒゲナガコバネカミキリ  1 ex.
[ Glaphyra kojimai (MATSUSHITA, 1939) ]

クモノスモンサビカミキリ  1 ex.
[ Graphidessa venata venata BATES, 1884 ]

ツヤケシハナカミキリ  1 ex.
[ Anastrangalia scotodes scotodes (BATES, 1873) ]

トガリバアカネトラカミキリ  1 ex.
[ Anaglyptus niponensis BATES, 1884 ]

ナガバヒメハナカミキリ  1 ex.
[ Pidonia signifera (BATES, 1884) ]

ニンフハナカミキリ  1 ex.
[ Strangaliella nymphula (BATES, 1884) ]

ヒメナガサビカミキリ  1 ex.
[ Pterolophia leiopodina (BATES, 1873) ]

ベニカミキリ  1 ex.
[ Purpuricenus temminckii (GUERIN-MENEVILLE, 1844) ]

ヤツボシハナカミキリ  1 ex.
[ Leptura arcuata mimica BATES, 1884 ]

総計:17 種(含初採集 2 種) 34 頭


記載日:2002.05.29
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