2002年度 採集記(茨城県 カミキリ編 -4-)

「ヤマブドウ」なやつら

今回から新たなターゲットとして、「ヤマブドウ」をホストとするカミキリムシの探索を始めてみる。確固たる選択理由はないのだが、なんとなく春先に出てくる種類が多いような気がしていたからだ。

さて、「ヤマブドウ」なカミキリムシにはどんな種類があるのかと言うと、しょぼい私の記憶からは、アカネトラカミキリとハセガワトラカミキリぐらいしか思い浮かばない...。

う〜〜ん、これだけの知識で採集をしようというのだから、無謀にも程がある。

で、こっそり「あんちょこ」を参照すると、他にアカネカミキリ、シロオビチビヒラタカミキリなどがそうであるらしい。

ちなみに、ブドウトラカミキリも名前のごとくブドウなのだが、一般に果樹園のブドウに多く見られ、さらには羽脱時期が晩夏〜秋季であることから、今回のターゲットからは除外する。

整理すると、アカネカミキリ、アカネトラカミキリ、シロオビチビヒラタカミキリあたりが目標になりそうである。

残るハセガワトラカミキリの♂はトラカミキリ類の中で最長の触角を有し、めちゃくちゃハンサムな人気種であるが、茨城県未記録種であることと、通常は1000メートルを越えるような高標高地がポイントとなることを考慮すると、本県では厳しいかもしれない。

初回となる今回は、まず記録のある地へ赴いて、目的の材となる「ヤマブドウ」のツルを探すことに力を入れたいと思う。

それでは出発しよう。



2002.03.05 (Tue)

茨城県 某所

   天気:曇り
   気温:13.3 度
   風力:1(軽風)
茨城産カミキリ、「ヤマブドウ」な午後 編

● ヤマブドウ

植物図鑑によると、ヤマブドウはブドウ科の蔓性落葉低木で、各地の山地に広く自生する一般的な植物であるそうだ。

実際に今までの採集行にて、大木に絡みついている姿やヤブを覆い尽くしている現場を何度も目撃している。その葉は幅広で、秋口には深紫色をした小さいブドウの房を多数ぶら下げていることからも、一目でそれとわかる。

もっとも、この時期は葉を落としているため、ツルのみを目印に探すことになる。そして、今回はツルの枯れた部分を割ることによる「材採集」を行おうというわけだ。春先に羽脱する種類であれば、直前のこの時期は成虫で採れるかもしれない。

ちなみに、古くから釣りのエサとして知られている「ブドウムシ」は、ヤマブドウの枯れた茎(=ツル)の中にいて外見もカミキリムシの幼虫と類似しているが、残念ながらカミキリムシの幼虫ではなく「ブドウスカシバ」という蛾の幼虫らしい。よって、見つけた瞬間の「っしゃ〜!」は禁句、そして快感ホルモンの分泌は厳禁ということになる。

さあ、予備知識はこの辺にしておいて、そろそろ出発するとしよう。


● 探索開始

常磐自動車道、北茨城ICを降り、標高を上げる方向へ車を走らせる。

山間部へ突入した辺りからスピードを緩め、道沿いのヤブなどに視線を配る。

しばらく行ったところで、ネムノキに絡まる怪しげなツル植物を発見した。

グリグリと獲物の首を絞める「ヘビ」ようなツルだ。

あるいは、しめ縄のようにも見える。

おそらく、ヤマブドウだと思うのだが...。

早速、見ていこう。


ふ〜〜む、とりあえず「枯れて」いるようだ。

昆虫の羽脱孔と思われる孔も開いている。


おや?


うおっ、蛾の抜け殻だ。

う〜〜ん、これが「ブドウムシ」、つまり「ブドウスカシバ」なのかもしれない。

さて、このポイントではカミキリムシの形跡はまったくないため、先へ進むことにする。

ゆっくりと標高を上げながら、道沿いの植物をルッキングしていると、再びツルの絡まった一角を発見した。

むむむ、ここは結構たくさんのツルがあるぞ。

ただ、さっきのポイントのツルよりは少々表面の色が濃い。

これもヤマブドウ?

樹種の同定に自信が持てないが、試しに割ってみる。

やや乾燥した材の内部には食痕が複数走っており、何らかのムシに食われているようである。比較的柔らかく、手で崩していくことが可能だ。

どんどんむしっていくと、ようやくカミキリムシの幼虫が出てきた。

一体、何カミキリなんだろうか?

体長は1.5 センチほど。

大きさからすると、シロオビチビヒラタ?

それとも、他種の若齢幼虫?


アップ写真。

申し訳ないが、私には判別不能だ。

いずれにしても、成虫はまったく出てこない。

残りの材からも多数のこれと同じ幼虫が出てきたのだが、成虫は相変わらず×であった。

でも、昔はカミキリムシの幼虫を「デロレン」などと呼んで嫌っていたのに、今は嬉しかったりするから面白い。

これは次のポイント。

こんな感じで、朽ちたツルが引っ掛かっていたりする。


これもそうだ。


このエリアは、ヤマブドウと思われる材がふんだんにある。

一応、いくつかの材を確認してみたのだが、やはり出てくるのは幼虫だけだ。

もしかして、完全に時期を誤ったか?

単独採集のため、こういう時は困ってしまう。

まあ、悩んでいても仕方ないので、別の材を数本ピックアップし、適当な長さに切って持ち帰ることとした。

こうなったら、家で羽化を待つしかない。


● ウコギ類

ヤマブドウを探している最中、茎にトゲがたくさん付いたウコギ類(タラノキ?)の枯れ枝を発見した。

その枝のアップ。

何か入っているだろうか?

試しに割ってみた。

まあ、割ると言っても、痛いのでそう簡単にはいかないのだが...。

いててて、と割っていくと、いきなり食痕が走る。

平べったい食痕だが、カミキリムシのものだろうか?

さらに削り進めると...。

うぇ〜〜〜、なんだこりゃ?

何かの「前蛹」?

めっちゃ気色悪いぞ。

頭部が小さく、少なくともカミキリムシとは思えない...。

しかし、材はまだかなり残っているため、気を取り直し割っていく。

っしゃ。

今度は「正真正銘」カミキリムシの幼虫が出てきた。

ちょっと嬉しいが、またまた判別不能だ...。

ウコギ類と言えば、せいぜいタテジマカミキリぐらいしか浮かばない。

可哀想なので、割った材をくっつけた後、ガムテープで止めて持って帰ることにした。

何カミキリになるのか楽しみである。

というわけで、本日はここでタイムアップ。

また次回ということにした。

帰宅後、このように材をセットしてみた。

この状態で室内にほったらかしておけばいいのだろうか?

何だか分からない事だらけ...。


● エピローグ

う〜〜む、幼虫三昧...。

今までの経験上、春先に出てくるムシは、この時期に成虫で採れるかと思っていたが、見事に予想が外れてしまった。

図鑑を調べた結果、ヤマブドウに入るカミキリムシはそんなに多くないようなので、持ち帰った材からは冒頭に挙げたどれかの種類が羽化してくれるだろう。うまく育ってくれることを祈りたい。

いずれにせよ、これまでまったく目を向けなかったツル植物にも、ちゃんとカミキリムシが宿っているということが実際に確認できたので、今回は「良し」とする。

今後、本格的なシーズンに突入してからも、本日のポイントでビーティングをしてみれば、産卵のためにやってくる成虫をゲットできるかもしれない。その日が楽しみである。


★★ 採集成績 ★★

成虫はボーズ

持ち帰った材:ヤマブドウ?、ウコギ類(タラノキと判明)

※ ヤマブドウだと思って持ち帰った材は、「フジ(マメ科)」の可能性あり。一番最初に見つけた「ブドウスカシバの抜け殻」が入っていたものは、ヤマブドウと思われる。(2002.03.06)

※ 後日、葛(クズ)ということが判明。(2002.03.09)


記載日:2002.03.05
追記日:2002.03.06
追記日:2002.03.09
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