2002年度 採集記(茨城県 カミキリ編 -5-)

まずは「リハビリ」から

や〜〜っと、まともに採集へ行ける日が訪れた。

もう、「行ける」というだけで無性にうれしい。

ただ、行くにしても、今年は春が大幅にフライングしている。そのため、この時期は材採集をやったほうがいいのか、それともすでに春物の成虫を野外で採ることが可能なのか、正直なところ判断材料に乏しい...。

まあ、それは実際にポイントへ行ってみなければ分からないため、現場の状況に合わせて臨機応変にいくしかないだろう。

それでは、リハビリを兼ねて久しぶりの採集へ行くとしよう。



2002.04.02 (Tue)

茨城県 某所

   天気:晴れ
   気温:23.3 度
   風力:2(軟風)
茨城産カミキリ、リハビリテーション 編

● 夏日

天気予報によると、本日は軒並み気温が上昇して関東地方でも「夏日」になるという。エルニーニョの影響らしいが、一体どうなっちゃっているんだろうか、天気...。

まあ、ムシ採りをするにはまたとない条件であり、今日を逃すわけにはいかない。

「♪桜咲き満ち麗らかに、心も和む春風よ♪」

昔覚えた歌を思わず思い出してしまった。

東京ではほとんど散ってしまったが、日立市内では今がまさに旬だ。



車のエンジンをかけてみると、すごい温度...。

車内からは蜃気楼のように、熱い空気がメラメラと湧き上がる。


● 土場

北へ向かってなびいている工場の煙を横目で見ながら車を流す。

すると、前方右手に比較的大きな「土場」が見えてきたためちょっと寄り道。

暖かい南風に乗って、ほんのりと材の香りが...。

う〜〜ん、なんか懐かしい。

スギ材しかない土場だが、この時期の優占種「ヒメスギカミキリ」はいるだろうか?

管理室へ一言挨拶して場内を見させてもらう。

材の表面へ何気なく視線を落とすと...。

うお〜〜、いるいる。

多数のヒメスギカミキリが材上をベタベタと忙しく歩き回っている。

やはり今年もこいつらが一番乗りだ。

ただ、あまりに動きが速いため、生態写真は断念。

仕方なく、いつもの記念写真。

今季初の野外成虫である。

写真を撮っている間にも、私の体へ向かって飛来する勢いだ。

ちなみに、こいつらの採集はせず。

[ Palaeocallidium rufipenne (MOTSCHULSKY, 1860) ]

その後、「スギカミキリ」がいないかと時間をかけて隈無く探してみたが、これはスカを食らってしまった...。

ということで、次へ行こう。


● カエデ

関東の南部ではカエデが咲いているらしいが、北部ではどうだろうか?

今度はそれを確かめてみよう。

ざ〜〜っと、標高を上げながらカエデを探す。

しばらく走ったところで、カエデの群生地帯を発見した。標高的には海抜300メートルあるかないかという場所だ。

おおおおっ!

まさにこれから葉を開こうとする瞬間である。

が、これでは当然ムシ採りにならない...。

花が咲くにはもう少し時間が必要だ。


さらに標高を上げたポイントでは、葉さえ出ていない...。

毎回痛感することだが、緯度と標高の差というものは大きい。

というわけで、カエデのスイーピングは潔くあきらめる。


● サクラ

次なる対象植物はサクラ。

日立市内の平野部では見事なまでに「満開」であったが、この辺りではまだ3分〜5分咲きといったところ。

しかし、そんな状況でもこの陽気に我慢しきれなくなったムシ達が多数飛来しているようだ。遠目でも、大きなクマバチがぶんぶんと花の周囲を旋回しているのが見える。

う〜〜ん、その光景を眺めているだけでも気分が高まるものである。

何が入るかは分からないが、とりあえずスイーピングしてみることにした。

すると、アブやハチに混じって、いくつかの甲虫がネットインしたようである。

詳しく見てみると、モモブトカミキリモドキ、各種のハムシとテントウムシであった。

残念ながらカミキリムシの姿はない...。

サクラの幹には、怪しげなムシの姿が...。

何かと思えば、サシガメの仲間だ。

毒々しくて、私はちょっと苦手...。

その後もサクラのスイーピングを何度か繰り返してみたが、結果は同じであった。

ここでも(私の方が)フライングだったようだ。


● 新ポイント

またしばらく県道を流していると、伐採されたばかりの材を置いてあるポイントを見つけた。

なかなか雰囲気がよさそうである。

昨年はこの場所に材などなかったから、新ポイントということになる。


置いてある材は、アカマツとクロマツが中心のようだ。

もちろん、クワやケヤキなどの広葉樹も転がっている。

さあ、何かいるだろうか?

ゆっくりと材を観察していく。

ん!、アカマツ材の上に何かいるぞ。

おおっ!、ゾウムシだ。

なかなか綺麗な模様をしている。

図鑑によれば、マツキボシゾウムシというそうだ。

[ Pissodes nitidus ROELOFS ]

そして、足下にあったアカマツ材の樹皮が半分剥がれていたので、全部剥がしてみた。

むむむ、これは何の幼虫だろう?、けっこうたくさんいるぞ。

少なくともカミキリムシではない。

ああああ、多分、さっきのゾウムシの幼虫かもしれない。


樹皮の裏側には、うねうねと「地上絵」のような食痕が走っている。


おっ!、これはカミキリムシの幼虫だ。

あまりの暖かさに、クネクネと俊敏な動きをみせる。

ケブカヒラタカミキリ(ノトリナ)の幼虫にしてはかなり大きい。

何カミキリ?

まあいいや、こいつらが羽化するまで毎回ここに来てチェックしよう。

というわけで、これ以上標高を上げても自分の「フライング度」が高まるだけなので、ここで踵を返し来た道を引き返す。


● スギ

復路では、スギカミキリを求めて、スギの木をメインに探してみようと思う。

スギカミキリはヒメスギカミキリと並んで、ちょうどサクラが咲くこの時期に活動する種類だ。林業的にはスギの生木を食い荒らす「大害虫」として知られている。

生態的には夜行性であり、日中は樹皮下などに影を潜めているそうだ。

こんな暑い日に生体を拝める確率は低いだろうが、最低限、羽脱孔などの痕跡だけでも発見したいところである。

いや〜〜、それにしても、今まで何の関心も寄せていなかった「スギ」を探すようになるとは微塵も思わなかった。が、一方でスギは至る所に生えているため、「探す」もクソもあったものではない...。それはそれで骨の折れる大変な作業となる。

加えて、スギ花粉症の人にとって「スギ好きな甲虫」の採集は「地獄」以外の何物でもないだろう。私は今のところ発症していないので、やっておくなら今のうちかもしれない。

事前情報によると、そこそこ年を重ねた木で、樹皮がめくれてたりするものがいいらしい。

素人の見立てだが、この木ではどうだろうか?

このスギと対峙し、表面を丁寧に観察していく。


うむ、ビンゴか?

直径は1センチほど。

おそらく、スギカミキリの羽脱孔だろう。

こんな孔が数ヶ所開いていた。

もしかしたら樹皮下に成虫が潜んでいるかもしれないので、近所にあるちょっとだけ剥がれかけた樹皮をめくってみた。

が、変なゴミムシやカマドウマが出てきたので、悲鳴とともに退散...。

これは別ポイントのスギ。

樹皮はすでに剥がれ落ちており、露(あらわ)になった部位には「食痕」がみられる。

走行的にはカミキリムシのものと思われるが、スギカミキリだろうか。

まあ、相変わらず分からないことだらけだが、ゆっくり時間をかけて確認していこう。

それもまた「採集の楽しみ」の一つである。

ということで、本日はこれにて打ち止め。


● エピローグ

やはりフィールドへ出るということは本当にいいものだ。

本日は結果的に「観察」のみで終わったが、シーズンはもうすぐそこまで迫っていると実感できた。

成果があろうがなかろうが、少なくとも体にしみ込んだ「灰汁(あく)」は抜けたと思う。

さあ、これからが楽しみだ。


★★ 採集成績 ★★

ボーズ


記載日:2002.04.02
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