2002年度 採集記(栃木県 カミキリ編 -2-)

この夏の本命

先週は「ハセガワトラカミキリ」という新星がターゲットとして急浮上し、本来の「本命」を後回しにしてまでチャレンジしてみた。

もちろん、他の未採集種を数種ゲットし得たという大きな喜びがあったのは事実だが、粘った挙げ句に本命のハセガワトラには振られるという、正直、疲れがどっと出る採集行でもあった。

ということで、今回は初志貫徹。いよいよその後回しにしていた「大本命」を狙って出撃しようと思う。

今さら言うまでもないかもしれないが、大本命の名は「オニホソコバネカミキリ」。

学名( Necydalis gigantea )から、ギガンティア、ギガンなどと呼ばれる依然人気の高いネキダリス(ホソコバネカミキリの仲間)だ。私の中ではかなり「憧れ度」の高い1種である。

関東近県において、本種は群馬県に多産することが知られ、これまで数多のカミキリ屋を熱狂させた、ある意味「独特のネキダリス」でもある。

今回はそんな「大物」に、カミキリ採集を始めて2年目の素人が、ロクな情報も持たずたった1人で正面からぶつかることになる。

一体どうなることやら...。



2002.07.20 (Sat)

栃木県 某所

   天気:晴れ
   気温:28.4 度
   風力:1〜2
栃木産カミキリ、「本命」 編 たった一人の「ネオ・ネキダリス狂騒曲 2002」

● 栃木県

冒頭でも書いたように、本種は昔から群馬県に多くの採集例があるカミキリムシであり、当然、どうしても採りたいのであれば、その近辺を攻めれば採集できる可能性も一層高まると思われる。群馬県は、誰しも疑うことなく真っ先に選択するエリアだろう。実際、惨敗はしたものの、昨年、私も一度群馬県でギガンにトライした経験がある。

で、当初は今季も当たり前のように群馬県を攻めるつもりでいたのだが、最終的に本日の目的地は「栃木県」ということになった。

ちなみに、同県における過去の公的・私的を含めた(ギガンの)採集記録は、私の知るかぎりせいぜい数例であり、とても「多産」している県とは言えない...。

なぜ栃木県を選んだのかは、幾つかの理由がある。

まず、群馬のポイントと現在の赴任先とのアクセスが非常に悪くなってしまったこと。そして、昨年来下見を続けているエリアが栃木県にあること。数カ月前に「謎の情報」を仕入れたこと。あまり採れていない地域で採れたらうれしいに決まっているということ。以上が大ざっぱな理由だ。

というわけで、採集地を栃木県に決定したのだが、当然、まったく採れる自信はない。今回も結果は「運」に任せるしかないというのが実情であり、いつもながらの自分の無謀さに呆れてしまう...。

まあ、あまり気張っても惨敗したときのショックが大きいので、今回は肩の力を抜いて出撃することにした。

それでは、前置きはこのぐらいにして自宅を発つとしよう。


● 大勝負

昨年から数えて、すでに3回は当該ポイントを下見しているため、迷うことなく到着。

本日はのっけから「大勝負」となる。

採集成功者の談話を参考にすると、ギガンティアはクワ(主に老木)をホストとし、早朝、日の出の時間帯にクワの葉裏に両後脚を持ち上げて静止しているという特徴的な姿がしばしば目撃されている。そして、日中はクワの木の周囲を飛翔している個体が採集されるケースが多いらしい。

そんなことを頭に入れながら、今まで見た中で一番怪しいと思われるクワへと足を運んでみた。

ただ、ポイント到着の段階で、日の出からは十分に時間が経ってしまっており、その点はちょっと出遅れた感がある...。

うおおお、前回の下見よりかなり葉が茂っている。


本日は「梅雨明け」初日でもあり、空は抜けるような青空だ。


じ〜〜っと、葉を見上げる私...。

ギガンとよく見間違えるハチすらいない。

1時間ほどかけて、有望と思っていたクワを10本ほど見てみたのだが、どうにも駄目なようだ...。

少し移動してみる。

現在でも多少は人の手が入っているクワ畑と思うのだが、ここはどうだろうか?


下の方から上の方まで、葉の裏という裏を凝視していく。


止まっていないし、飛翔もしていない...。


さらに、もう1ポイント。

この一帯も散々見て回ったが、やはりギガンの雄姿は視界に入ってこない...。

う〜〜ん、本格的に駄目だ。

基本的に、有望と思い込んでいるクワがあまりに多すぎて、どこに当たりを付けていいか分からないと言ったほうが正しいかもしれない。

その後、これらのポイントを信じて、3〜4巡してみたのだが、一度たりとも「怪しい影」が見つかることはなかった...。

ふ〜〜む、そもそもここには棲息していないのか?、あるいは発生&活動時期を外してしまっているのか?、それとも私の探し方がど下手なのか?

真の理由は分からないが、精神的にちょっとヘコむ...。

そうこうしているうちに、陽はますます高くなり、気温は30度に届く寸前となってしまった。

う〜〜ん、下見を重ねて個人的には「ここだ!」と思っていたポイントだが、さすがに諦めたくなる。

今後の選択肢は2つ。(1)このポイント周辺でとことん粘るか、(2)あっさりと諦めて他のカミキリムシを採って楽しむか。

夏の陽射しが燦々(さんさん)と照りつける中、しばし考えた末、後者(2)を選択した。

というのも、いくら2年以上も「憧れ続けた」大本命とは言え、趣味の採集は「苦行」とは違う。採らなきゃいけないという「義務感」が出てきてはつまらない。駄目なら駄目で視点やポイントを変え、また次回気楽に挑戦すれば良いのである。

採れなかったことは確かに残念だが、こればかりに固執して精神的・肉体的に疲労困憊していては、「採集を楽しむ」という基本路線からは脱線してしまうし、欲を言えば、採れるなら「さくっ」と採れて欲しい。

ということで、あっさりとギガン採集を諦め、ポイントを後にすることとした。

ちなみに、このポイントで唯一見掛けたカミキリムシ。

シナノクロフカミキリ...。

[ Asaperda agapanthina agapanthina BATES, 1873 ]


● 林道へ

びゅ〜〜んと、栃木県内を快調にドライブ。

本当に夏らしい景色の中、思い出の林道を目指した。

その途中、道沿いの「白い花」などをルッキング。

今の時期、ゴトウヅルが旬のようだ。


目の前にいたヤツボシハナカミキリ。

[ Leptura arcuata mimica BATES, 1884 ]

そんなことをしながら、目的とする林道へ到着した。

すると、昨年と同様の光景が...。

う〜〜ん、今年も車で入れないのか...。

仕方なく、車を置いて林道を歩く覚悟を決めた。

ややガレた地面に足を取られながら、「あの木」を目指す。

2つの台風が過ぎた後とはいえ、さほど林道は荒れていないようだ。

君も落石には気をつけよう。


う〜〜ん、なんか「夏」な雰囲気だぞ〜〜。


林道沿いにはノリウツギが多数見られる。

状態としては3分咲きほどで、少々フライング気味だが、咲いている部分にはムシが「ぶわ〜」っと群がっている。


うひひひ、これはいい感じだ。


ヨツスジハナカミキリのジャンプ。


有象無象の重要構成員、ニンフハナカミキリ。

こいつらは見るだけ...。

[ Strangaliella nymphula (BATES, 1884) ]

これはマルガタハナカミキリという普通種。

[ Judolia cometes (BATES, 1884) ]

ここで、手の届かないところを網で掬ってみると...。

ラッキー!!

オオハナカミキリだ。

一度に2頭も採れてしまった。

なぜかこの林道では縁がある。

[ Konoa granulata (BATES, 1884) ]

さて、ノリウツギでの採集を随所で行いつつ、「あの木」へ徐々に近づいてきた。

うへぇ〜〜。

こりゃひどい...。

「全面通行止」なわけだ。

まあ、徒歩なら何の問題もなく通れるのでよかった。

が、この路肩崩壊地点を過ぎた辺りから、何だか「獣臭く」なってきた。

路上には「糞」が所々に落ちており、どう見てもやばい雰囲気がする。

糞といっても、コロコロした純草食動物のものではなく、明らかに雑食性動物のものと思われる。

「熊だ...」、一瞬でそう確信した。

しかし、あと200メートルほどで「あの木」なのだ。

熊に出会わないことを祈りながら前進した。

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