2002年度 採集記(山梨県 カミキリ編 -2-)

良い加減

今回訪れる山梨県のポイント周辺では、東日本に生息するゴマフカミキリの仲間が一通り採集できるという。

なかでもゴマフカミキリ属の超普通種である「ゴマフカミキリ」、「カタシロゴマフカミキリ」、「ナガゴマフカミキリ」は、採りたくなくても採れてしまうほど「どこでもいつものやつら」なのだが、その他のゴマフカミキリは最低限「採ってやる!」という決意と気力がないと、出会うことすらまま成らない種類が少なくない。

とりわけ、前回の茨城採集行にて探索を試みたポエキラこと「マダラゴマフカミキリ」を始め、メディオこと「ヨツオビシロオビゴマフカミキリ」、クリブラータこと「フタスジゴマフカミキリ」の以上3種は、産地が散在的で採集にコツがいるということもあり、依然人気の高いゴマフカミキリのようだ。

今までゴマフカミキリと言えば「タダゴマフ」のイメージが強く、正直、あまり目を向けることのなかった対象である。しかしながら、乙なゴマフカミキリの仲間がいるという実態を知るやいなや、チャレンジ精神が自然にムクムクとかま首を持ち上げてくるところが、ムシ好きの悲しい性というものだ。

言うならばアニメの「ドラゴンボール」のごとく、東日本で採集可能なすべての種類のゴマフカミキリを各地へ採りに行ってみたい。もちろん、全種を採集した時点で巨大な「龍」が出現して願い事を叶えてくれるわけではないが、そのぐらいの大きな感動は得られるに違いない。

まあ、それは冗談として、少なくとも今後のルーチンワークにはなりそうである。難しすぎず簡単すぎもしないという「良い加減さ」が妙に気に入った。

ということで、今回は胸を借りるべく既存産地にて勉強してこようと思う。



2002.05.18 (Sat)

山梨県 某所

   天気:雨のち曇り
   気温:21.5 度
   湿度:84.7 %
   風力:1(微風)
山梨産カミキリ、雨天決行 編

● 雨だ〜

今週末は日曜日にどうしても外せない用事が入っているため、出撃できるのは土曜日しかない。

ところが、土曜日の天気予報はこのところの梅雨を思わせる天候の煽りを喰らい、どの地域でも「傘」か「雲」のマークがずらっと並んでいる...。

う〜〜ん、どうしよう。

ご存知のように、カミキリムシはクワガタムシとは異なり、活動がかなり天候に左右されるデリケートなムシであり、基本的に雨はご法度だ。予報を信じるかぎり、これではどこへ行ってもロクな成果が上がらないのは目に見えている。

しかしながら、せっかくの出撃チャンスをみすみす潰すのももったいないので、駄目元を重々覚悟して出かけることに決めた。

幸い、経時的に予報を見ていると、山梨県南部周辺だけは曇りで気温も25度まで上がる予報に変わってきた。

もう選択の余地はない。

事前情報によると、同地では肩部から尾部まで辺縁部をすらっと流れる黄色い紋を持ったカタキハナカミキリや、個人的に数年来採集できていないクリストフコトラカミキリなどが採集できるはずだが、いずれも晴れた日に花や材に飛来する種類であり、この天気ではとても望めないだろう。

そうなると、ターゲットをゴマフカミキリ属に絞って出撃するしかないか...。

私の少ない経験から想像するに、彼らは発生木の周囲でおとなしくしていることが比較的多く、運が良ければ出会える可能性が無きにしもあらず、というのがその理由だ。

というわけで、雨の降りしきる中、止むことを信じて出発するとしよう。


● テンション急降下

スピーディに動くワイパーを恨めしく前方に見ながら、車は中央自動車道を走り続ける。2週間前のGWとは打って変わって、車の数が極端に少ない。

これで晴れていれば、どれだけテンションが上がっていただろうか...。

そんなことを思いながら下道を走っていると、あれよあれよと言う間にポイント周辺へたどり着いてしまった。

しかし、とうとうここまで雨が止むことはなく、そこら辺にある木々や草花はどれもびしょ濡れだ。その光景を見た途端、テンションが最低ラインを突っ切るかのごとく降下を始めた...。

さて、目的地には到着したものの、ピンポイントな情報は持っていないため、とりあえずは車で流して良さそうな場所を探索してみることにした。

それにしても気が重い...。


● 伐採地

まずは適当に枝道へ入ってみると、比較的広い伐採地を発見した。

散在する切り株を見てみると、どうも最近伐採されたようだ。

雰囲気はいいが、いかんせんこの雨だ。

ムシのいる気配は微塵もない...。

まあ、来た以上はそうも言っていられないので、片手に傘を差して斜面の探索を始める。

樹種としては、クヌギ、コナラ、イヌシデ、オニグルミ、ヌルデ、ヤマグワ、アカマツ、などなど多彩な木が生えており、カミキリムシの成育には事欠かない環境である。

片っ端からこれらの伐採木、切り株、立ち枯れ、生葉、樹幹を見ていくが、カミキリムシはおろか、ハチやアブすらいない状況である。これはかなり厳しい...。

ということで、さすがに諦め、別のポイントを探してみることにした。

このポイントの最高地点から遠方を眺める。

はるか向こうに見える山々の冠は、厚い雲で覆われてしまっている...。

頼むから雨よ止んでくれ。

車へ戻る途中で気がついたが、ここら辺はいわゆる「松くい虫(マツノザイセンチュウ)」の被害が多いようだ。

朽ちたアカマツの残骸や、強制的に伐採された罹患木がたくさん見られる。

見るも無残な光景だ。


● 高台

しばらく車で流していると、今度は上へ向かう枝道を見つけたので、そこを攻めてみる。

階段をひたすら登っていくと、開けた場所に出た。

周辺には白い花が咲き乱れ、かすかながらも甘い香りが漂っている。

これは可憐な花を咲かせるマルバウツギだが...。

せっかくの美貌も、この雨ではどうしようもないといったところだ。


こちらのノイバラも同様。

やっぱり駄目か〜、と肩をがっくりと落としたところ、ある幅広の葉上に甲虫らしき姿を発見。

っしゃ〜〜!、と息も揚々にのぞき込んでみると...。

あああああ、お前か...。

ジョウカイボン(通称バカボン)。

上の「っしゃ〜〜!」は全面撤回させていただく。


宇宙の果てまで飛んでいけ!

ということで、何の成果も得られぬまま、重い足取りで車へ戻る。

晴れる気配のない景色を見てさらにげんなり...。


道端に咲くノアザミの美しさがせめてもの慰めだ。


● なんとか...

さらに探索を続行する。

ライオンバス形式で、左右を見ながらゆっくり走っていると、畑の脇にソダを見つけたため、ちょっとだけルッキングしてみる。

おおおおおおお!

やった〜、カミキリムシだ。

や〜〜っと見ることができた。

アトモンサビカミキリという既採集種かつ「いつものやつ」だが、この状況下で出会えるなら話は別である。


それはもう宝物扱いだ。

いてくれてありがとう。

これで、しょぼいながらもボーズは免れた。

[ Pterolophia granulata (MOTSCHULSKY, 1866) ]

その後、1本だけ林道を探索してみたが、どうにもこうにも駄目であった...。
一見、良さそうに見えるんだけどねぇ。


● 雨が止む

なにはともあれ、車で移動する。

すると、うれしいことに雨が止んできたようだ。

マイナスの領域に入っていたテンションも、急速に「V字回復」してきた。

少なくとも、これで「傘」から開放されるため、ルッキングがしやすくなる。

っしゃ〜、頑張るぞ〜。


● 寄り道

走っている最中に面白そうな小道を見つけたため、ざっと見ておこう。

道の脇にあった枯れ枝。

すでに表面は乾きつつあるようだが、ちょっとしょぼいかな。

などと悲観的に思っていたら...。

失礼...、ちゃんといるではないか。

ヒトオビアラゲカミキリだ。

普通種ながら、シロクロはっきりした紋様がカッコイイ。

[ Rhopaloscelis unifasciatus BLESSIG, 1873 ]

さらに、アリよりも小さなムシが忙しそうに枯れ枝の上を歩き回っているようだ。

ん!

どこかで見覚えがあるぞ。

そうそう、これはヒシカミキリ。

これでも一応れっきとしたカミキリムシだ。

[ Microlera ptinoides BATES, 1873 ]

昨年の採集行@奈良県においても、この2種を同じソダ場で発見した記憶がよみがえる。どこでも似たような感じなんだなぁ。

それにしても、ひたすらアゴを引いて「下を向いている」のは何故だろうか?

もうちょっと、表情を和らげたほうがいいと思うんだけど...。

外道ながら、ビビッドで綺麗なハムシを発見。

図鑑によると、ヤツボシツツハムシというらしい。

[ Cryptocephalus japanus BALY ]

う〜〜ん、雨が止んだせいか、なんだか甲虫の動きが活発になってきた印象だ。

これはもしかして、いけるかもしれないぞ。

ということで、またしばらく歩く。

むむむ、これは何だ?

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