2002年度 採集記(山梨県 カミキリ編 -3-)

コブ叩き

この時期に旬なカミキリムシとして、コブヤハズカミキリの仲間がいる。

後翅の退化した飛べないカミキリムシであり、ゴツゴツした独特の形態を有する魅力に富んだグループである。

一般的な採集方法はビーティング(叩き網)であり、コブヤハズカミキリ類の潜んでいそうな場所を棒で叩いてネットに落とすことから、通称「コブ叩き」と呼ばれている。

私は今回がまったくの初挑戦であり、採れるかどうかは未知数だが、以前から機会があればやってみたいと思っていた採集である。

さあ、私のネットにコブは落ちるのだろうか?



2002.09.15 (Sun)

山梨県 某所

   天気:曇り時々雨
   気温:12.0 度
   湿度:計測せず
   風力:1
山梨産カミキリ、コブが落ちてきた日 編

● 初陣

先週に引き続き、秋雨前線の影響でこの週末の天気も優れないようだ。

本来、この秋はオオトラカミキリを本命とした採集を有名産地にてやりたかったのだが、天気に嫌われては仕方がない。今年はそもそも運がなかったと諦めるほかないだろう。

しかしながら、9月中で採集に行ける週末はこの日曜日しかないので、それを丸々無駄にするのももったいない。

というわけで、この際目標を変えて昨年トライすることのできなかった「コブ叩き」に初挑戦してみることにした。

コブヤハズカミキリ類の採集なら、枯れ葉の中に潜んでいるところをビーティングにて採集するため、必ずしも晴れている必要はないそうで、この時期の旬でもあることからちょうど良い機会かもしれない。

となると、何コブを採りに行こうかということになるが、ただのコブヤハズカミキリ(タダコブ)はすでに採集済みであるため、その他のコブヤハズ類を狙うべく山梨県を採集地に選択した。

今回のエリアでは、主にフジコブヤハズカミキリ、タニグチコブヤハズカミキリ、それらのハイブリッド(交雑)個体が採集できるそうだ。

まあ、いずれにしても採れる自信は当然1ミリもないわけで、事前に先輩方からいただいたアドバイスを元に、自分なりのイメージを作り上げて採集へ挑むこととなった。

オオトラ採集をご一緒しようと思っていた「びおすけ」さんに連絡をとってみると、コブならぜひ行きたいということで、私の「コブ初陣」の準備は整った。


● 叩くべし

朝7時前ぐらいに中央道のSAで びおすけさんと合流。途中で車を1台にまとめた後、いざポイントへ向かう。

今回訪れるポイントは、ルリクワガタやツヤハダクワガタを採りに何度か通ったポイントであり、だいたいの土地勘はある。

まあ、ガイドは私にまかせてください、と言わんばかりにワインディングロードを駆け上がる。

途中で走行距離がナイスな数字になったため1枚撮影。

う〜〜ん、これは縁起が良い。

きっと展足に困るほどタコ採れできるに違いない。

懐かしい景色の流れる中、いよいよ目指すエリアへ近づいてきた。

その時、びおすけさんが「さっきのとこが林道の入り口なんじゃないでしょうか?」と一言。

「いえいえ、もうちょっと先でしょう」とそのまま直進していくが、それらしき林道はない...。

あれ〜〜〜っと、Uターンしてみると、やはり びおすけさんの言う通りであった...。

恐ろしく土地勘のない私...。

というわけで、前言は早々に撤回。

林道の入り口に車を停め、ヤブ漕ぎOKな完全防備で林道へ突入する。

っしゃ〜〜、コブがいそうな雰囲気@無根拠。


林床はササで覆われている。

自分で作り上げたイメージに従い、林縁のササに引っ掛かった枯れ葉などを半信半疑で順次叩いていく。


教科書的には、このような場所を叩けばいいようだ。


しかしながら、落ちてくるのはこのハサミムシばかり...。

究極の「いつものやつ@コブ叩き」だ...。

ひえ〜〜。

しばらくして「採れました〜」と、びおすけさんが向こうから歩いてくる。

むむむ、もしかしてコブ?

林道に入ってまだ10分と経っていないぞ。

あああああああ。

すごい...。

もう採っちまった、びおさん...。

いや〜〜、おめでとうございます。

状況としては、ヤマブドウが絡まったところで採れたとのことだ。

う〜〜ん、羨ましい、本当にいるんだ、コブ。

「るど:でも、これ何コブでしょう?」

「びお:褐色の紋があるので、フジコブですね」。

同定すらままならない、ど素人丸出しの私...。

まあ、ともかく頑張ろう。

先へ進みつつ、怪しい場所を次々と叩いていく。

おおおお、もう木の葉が色づいているではないか。

秋よのぉ〜〜〜。

1キロ以上歩いただろうか、何百ケ所叩いたか分からないが、落ちてくるのはひたすら例のハサミムシとゴミムシのみ...。

時折、試しに丸まった枯れ葉を手で開いてみたが、必ずハサミムシが入っている。言わばチョコエッグのおまけ@ハサミムシシリーズ状態だ。

やはりコブは私のような素人が狙って採れる代物ではないのか...。

雨露でびしょびしょに濡れたネットが異様に重く感じられる。

いつの間にか下の替え歌を何度もリフレインし、頭も半壊状態...。

「♪ ヒュ〜ルリ〜〜、ヒュ〜ルリ〜ララ〜、外道ばかりが落ちてます〜 ♪」

かなり奥の方まで来てしまい、植生もしょぼくなってしまったため、敢え無くUターン。見落とし箇所を探しつつ、引き返すことにした。

往路では高所の枯れ葉を叩いてきたため、復路では地面すれすれにある下草の枯れ葉を中心に見ていく。

100メートルほど戻ったところで、下草の半枯れを駄目元で叩いてみた。

おおおおお、何か落ちたぞ!

重量感があり、ハサミムシとは明らかに異なる何かだ。


あああああ....。


落ちた...。

[ Mesechithistatus fujisanus HAYASHI, 1957 ]

フジコブヤハズカミキリの♂であった。

時間差で嬉しさが徐々に込み上げてくる。

っしゃ〜〜〜〜!!!!!

っしゃ〜〜〜〜!!!!!

っしゃ〜〜〜〜!!!!!

それにしても、なんて面白い採集なのだろうか。

この1発で「虜」になってしまうほどの底知れぬ魅力がある。

昨年のうちからもっと早くやっておけばよかった。今までこの採集にあまり目を向けていなかった自分を後悔した。

ともかく、これでしょぼい下草にも潜んでいることが分かり、着目すべき点が広がったのは大きい。

その後、びおすけさんと再会し、時間がまだ早いため別ポイントでタニグチコブヤハズを狙おうということになった。

ということで、早めの昼食を済ませ車で移動する。

目指すポイントの手前で、良さそうな林道を見つけたのでちょっとだけ寄り道。

カラマツの植林を背景に、広葉樹がポツポツと見られる植生。

林床はササで密に覆われている。

それなりに雰囲気はありそうだ@無根拠...。

早速、林縁を叩いていると、ポロっとネットに落ちるコブらしき物体。

へへへ、また採っちゃった!

う〜〜ん....。

即座に、エセコブヤハズと命名した...。

で、さっさとこの林道を見切ってタニグチポイント近辺へ行ってみると、叩き網を持つ先客が数名...。

う〜〜ん、後から来た我々が無神経にズカズカ入っていっても迷惑だろうから、ここを諦め適当に別の林道へ入ってみることにした。

いくつかの林道を下見した後、結局、エセコブの落ちた林道へ戻ることにした。

入り口から少し入った所に車を停め、ルッキングを開始する。

落ちたムシに思いを馳せる びおすけさん。

2人で小一時間ほど叩き続けただろうか、結局、「ハサミ叩き」「ゴミ叩き」で終わってしまった...。

お互い1頭ずつ採ったし、まあいいか。

ということになり、下山する方向へ車を走らせることにした。

しばらく下ったところで、昔のルリクワガタ材採ポイントを久しぶりに見たくなり、少々道をそれる。

ライオンバスのようにポイントを横目で確認した後、ちょっとだけ先へ足を伸ばしてみた。

すると、妙に魅かれる林道の入り口を見つけてしまった。

もう帰ろうということになっていたのだが、みるみる採集欲が込み上げてきてしまい、我が侭を言って びおすけさんに付き合っていただいた。

暗い林道を歩きながら各所を叩いていく。

しかしながら、緩やかな坂を上りきったところで、植生がカラマツの植林になってしまったため、これ以上先へ行くことを諦めた。

ああああ、やはり駄目だったか...。

所詮、素人のカンなどこんなものだ。

びおすけさんには悪いことをしたなぁ。

反省しながら引き返していると、絶好な枯れ葉の付いた落ち枝が転がっていることに気づく。

そのうちの一角をおもむろに叩いてみると...。

これは...。

[ Mesechithistatus fujisanus HAYASHI, 1957 ]

ひやっほ〜〜〜!!

フジコブヤハズの♀が落ちてきた。

うおおおおお、これで1ペアゲットだ。

あああああ、いてくれてありがとう...。

もう脳ミソは粉砕状態、ありったけのエンドルフィンが出まくった。

はぁ〜〜〜、うれしい...。

少し下っていくと、びおすけさんが見えたため、思わず「ぐ〜〜〜〜!」と親指を突き立て合図する。

「鳩豆状態」の びおすけさんに、今落ちてきた♀を見せると、信じられない様子。にわかに目の色が変わり、しばらくこの周辺でビーティングに精を出す。

私も伐採された後に枯れた樹群を発見したので、それらを叩きまくる。


おおおお、トゲバカミキリ。

う〜〜ん、予想外だっただけに嬉しさ倍増!

[ Rondibilis saperdina (BATES, 1884) ]

結局、お互いに追加のコブは得られず、ここで終了ということになった。

あああああ、感無量...。


帰りの高速では、凄まじい渋滞に見舞われたものの、ほくほく気分の帰京であった。


● エピローグ

生まれて初めてコブ叩きに挑戦してみたが、ど素人にもなんとか1ペア落とすことができた。

総じて、職人芸的なハンティングの要素が凝縮された採集法であると感じた。まさに私が採集に求める楽しさの詰まった方法と言える。

ともかく、あの落ちてきた瞬間の「快感」は表現の範囲を越えた独特なものである。今後は優先してスケジュールに組み込む採集となることは間違いないだろう。

世の中にはいろんなムシを採るための様々な方法があるが、実際にやってみないとその面白さは分からない。

そんなことを実感した採集行であった。

とにもかくにも、お付き合いありがとうございました。 >びおさん

次は違う種類を頑張りましょう。


★★ 採集成績 ★★

フジコブヤハズカミキリ  2 exs.
[ Mesechithistatus fujisanus HAYASHI, 1957 ]

トゲバカミキリ  1 ex.
[ Rondibilis saperdina (BATES, 1884) ]

総計:2 種(含初採集 1 種) 3 頭


記載日:2002.09.17
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