2003年度 採集記(福島県 カミキリ編 -1-)

今年こそ

カミキリムシの野外採集シーズンはこれからが本番であるが、その先陣を切るかのごとくGW前後に発生のピークを迎えるカミキリムシがいる。

そう、ビャクシンカミキリだ。

昨年は私のスタートが遅かったために、このカミキリムシと出会うことができなかったというちょっとした「トラウマ」があり、今年こそはなんとしても採ってやろうと心に決めているカミキリムシなのである。

果たして、彼らに出会うことはできるのだろうか?



2003.05.03 (Sat)

福島県 某所

   天気:快晴
   気温:25.4 度
   湿度:37.5%
   風力:1〜2
福島県、ビャクシンカミキリに会いたくて 編

● ビャクシンカミキリ

ビャクシンカミキリというカミキリムシは、とてもせっかちだ。

図鑑によれば、その活動期は「3〜4月」とある...。

なんでこんな早い時期から、それもまだ雪の残るような寒い中で元気に活動するのだろうか?

私だったら絶対に材の中でゆっくりしているぞ。

ちなみに、昨年の福島ではこの時期に大量発生していたそうだが、本種の発生時期のことなどロクに知らなかったカミキリど素人の私は、当然その恩恵にあずかることはできず、後でけっこう悔しい思いをしていたのである。

まあ、昨年の初福島採集行が5月下旬だったのだから、そもそも話にならないが...。

悶々とした1年が過ぎ去り、今年もそろそろかなぁと思っていた矢先、知人から「ビャクシンもう湧いてますよ」というメールが入った。

うむむ...、湧いたのか、これは居ても立ってもいられないぞ...。

ということで、スケジュールを強引に調整しビャクシンに会いに行くことと相成ったわけである。

で、結局、GWの渋滞を避けるため前日の夜から福島へ入ることにした。

それでは、出発〜!

仕事の終了と同時に茨城を発つ。


● 久々の福島

ひたすら下道を走り続け、午後10時過ぎにポイントへ到着した。

ここまで来るのにかなりのエネルギーを使ってしまったが、車のヘッドライトに照らし出された材の山を見ると、一気に気力がよみがえる。

事前情報にてビャクシンカミキリは薄暮性〜夜行性と聞いていたので、早速、懐中電灯片手に積み上げられたスギの材をチェックしてみる。

さあ、いるかなぁ?

ところが、ムシなど1頭たりとも這っていない...。

う〜〜ん、残念...。

今回のために用意した撮影システムが無駄になってしまった...。

まあ、この時の気温が6度なのだから仕方ないかな...。

というわけで、ビールを2本飲んでふて寝する(車中泊)。

それにしても寒い...。


● 採集開始!

あまりの寒さで目が覚めるが、辺りは薄暗い...。

時計を見ると、まだ6時前だ...。

荷台の奥にしまっておいた寝袋をもう1個引っ張り出して、2枚重ねで2度寝する。

おおおお、これは温かく快適に寝られそうだ。

ZZZZZZZZZZZZ...。

うううう....、気がついたら、すでに昼間のように明るくなっていた...。

これはやばい、早く見に行かなきゃ。

急いで支度を整え、昨晩見回ったスギ材をチェックしに行く。

まずは一番有望な土場へ直行。

う〜〜ん、朝日が眩しい...。

材に視線をやると、ムシがすでに飛来してきているようだ。

おはようございます。

で、肝心のビャクシンカミキリはというと、これがまた1頭も見当たらない...。

材の表裏、上下左右を隈無く探してみるもまったくいない...。

なんでだろう?

上述したごとく、基本的に本種は日が暮れてから採るカミキリムシなのだそうだが、発生のピークに当たれば昼夜を問わず採れると聞いていたのだが...。

居るといえば、


こいつらぐらい...。

[ Palaeocallidium rufipenne (MOTSCHULSKY, 1860) ]

仕方ない、樹皮をめくってみるか。

半分めくれ上がった樹皮を持ち上げてみると...。

うおおおお。

ヒメスギの羽脱風景...。

気を取り直して...。

ああああっ、これは...。

そうだよね?

っしゃ〜〜〜!

おったでぇ〜〜。

[ Semanotus bifasciatus bifasciatus (MOTSCHULSKY), 1857 ]

ああああ、や〜〜〜っと出会うことができた。

想像していた以上に良いカミキリムシだ。

ピニボラ(オニヒゲナガコバネカミキリ)の「1000日の想い」までとは言わないが、どれほどこの時を夢見ていたことか...。

それなりに感無量。

気温が急上昇してきたためか、これを皮切りに材の表面をビャクシン君たちがちらほら這い回るようになってきた。

数は少ないものの、ありがたくそれらを採集させていただいた。

当然、生態写真の撮影も頑張ってみたのだが、動きが速いためロクな写真が撮れなかった...。

本当かどうか紛らわしいヤラセ生態写真は嫌なので、今回は指つかみ写真で代用する。

さて、有望なポイントは数ケ所あるため、順に見て回るとしよう。

しばらく走って、次の土場へ到着。

すぐに材の表面でクルクル回っているビャクシンを1頭ゲット。

その後、ヒメスギカミキリを摘みつつ樹皮の隙間をチェックしていると、何やら見慣れないスレンダーなカミキリムシが佇んでいるのを発見。

ひゃっほ〜〜!

スギノアカネトラカミキリだ。

別名、キオビトラカミキリ。

もちろん「ヤラセなし」写真。

[ Anaglyptus subfasciatus PIC, 1906 ]

これも生涯初採集であったため、めっちゃうれしい。

この調子で追加をどんどん、と期待は膨らむのだが、この後どこの土場でもまったくカミキリムシの姿が見られなくなってしまった(ヒメスギ以外)...。

う〜〜む、カミキリムシって微妙なのねぇ...。

気分転換に春物のカミキリムシでも掬おうと、花を探すことにした。


● ナシの花

とあるポイントでナシの白い花がそこそこ咲いているのを見つけたため、早速、掬ってみる。

花はサクラにそっくりだ。

上の方を見てみると、ハチやらアブやらがたくさん乱舞している。

甲虫がいるかどうかは不明だが、美味しそうなところにネットをかけていく。

で、数ケ所掬った後、ネットを手元にたぐり寄せてみると、コメツキムシやハムシがどっさりと入っており、いかにも春らしい。

カミキリムシはシロトラやヒナルリハナがかろうじて採れる程度。

できれば、ハットリイ(クロツヤヒゲナガコバネカミキリ)やトウキョウトラが入ってくれると嬉しいんだけどな...。

汗ばむような陽気の中、ひたすらナシの花を掬い続ける。

あるとき、目の前に1頭のカミキリムシが飛来した。

ああああああ、これは絶対に○○○○(珍品)だ!!

セーフティなネットインにはちょっとしんどい角度であったが、震える手でネットを伸ばす。

よ〜〜し、もう少しでネットインだ。

が、ちょっとした振動でポロっと落ち、そのままどこかへ飛んでいってしまった...。

あああああ、なんという大失態...。

もう一生こんなチャンスは巡ってこないかもしれない...。

それでも、もう一度飛んでくるだろうと、時間を変えて訪れたり、かなり長時間粘ってみたが、再び飛来することはなかった...。

あ〜〜〜〜〜〜〜〜あ...。

何を採り逃がしたのかは、あまりに悔しいためナイショ...。

ということで、フロンティアで早めの夕飯を食べて帰京したのであった...。

久しぶりの焼肉だったが、文句なしの味。これを食べると本当にシーズンインの実感が湧いてくる。

あああ、それにしても逃したアイツだけはショック...。


● おまけ

東京に帰る途中で、ついに大台へ。

あと1キロ...。


う〜〜ん、ここまで早かった...。


● エピローグ

生涯に一度あるかないかのチャンスを逃してしまったことは残念だが、当初の目的であったビャクシンカミキリとは無事に出会うことができた。情報をくださった方に感謝したいと思う。

本来は斑紋の変異を比較したりするためタコ採れしなければあまり意味のないカミキリムシなのかもしれないが、私はどうもタコ採れという状況にはいつまでたっても縁がないようである。

まあ、これも運命あるいは宿命と考えて細く長くカミキリムシと付き合っていくしかないだろう。

さあ、今年も採るぞ!


★★ 採集成績 ★★

■ カミキリムシ科:Cerambycidae

● ハナカミキリ亜科:Lepturinae

ヒナルリハナカミキリ 3 exs.
[ Dinoptera minuta (GEBLER, 1832) ]

● カミキリ亜科:Cerambycinae

ビャクシンカミキリ 8 exs.
[ Semanotus bifasciatus bifasciatus (MOTSCHULSKY), 1857 ]

シロトラカミキリ 2 exs.
[ Paraclytus excultus BATES, 1884 ]

ヒメスギカミキリ 2 exs.
[ Palaeocallidium rufipenne (MOTSCHULSKY, 1860) ]

スギノアカネトラカミキリ 1 ex.
[ Anaglyptus subfasciatus PIC, 1906 ]

総計:5 種(含初採集 2 種) 16 頭

他、コメツキムシ、ゾウムシ、カッコウムシ、ゴミムシ、テントウムシなど

→ 標本写真へ


記載日:2003.05.05
追記日:2003.05.06(標本写真を追加)
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