2003年度 採集記(栃木県 甲虫編 -1-)

アキタクロナガオサムシ

このオサムシの存在を知ったのは幾分前のことになる。

前胸背板に渋味のある青色を帯び、上翅に密な彫刻美を装うなかなか格好良い種類であるとは聞いていた。

しかしながら、茨城県ではいまだかつて記録のない種類であるし、正直、自分には縁のないオサムシであると勝手に思い込み、特に興味の湧く対象とはならなかったのである。図鑑を見ても「ふ〜〜ん...」といった感じであった。

そんなある日、偶然にも知人から栃木県にてアキタクロナガオサムシをそこそこ採ったという知らせが入る。

う〜〜む、そんな近い場所で採れているのか...。

というわけで、久々の週末採集へ出かけることとなったのである...。



2003.02.16 (Sun)

栃木県 某所

   天気:雨
   気温:1.3 度
   湿度:非計測
   風力:1
栃木県、軟弱オサ・ゴミ行脚

● あああああ、雨、雨、雨...

早朝、単身で自宅を後にする。

まだ薄暗いなか、半分寝ぼけた状態で高速道へ飛び乗った。

この時間の高速は信じられないほど空いており、カーナビの到着予定時刻も、これまた信じられないほどの早い時間を表示していた...。

ただ、今回唯一憂うつなのは、天気が徐々に崩れ、日中はず〜〜〜〜っと雨が降るという予報だ。

昨日は憎たらしいぐらいの好天だったが、予報では明日もまた憎たらしいぐらいの好天になるという...。

つまり、低気圧の通過に伴う「晴れ日の狭間」のど真ん中の日に採集へ行くという馬鹿丸出しの私なのであった...。

そうこうしているうち、今回のポイントへ着いたようだ。

気温はいつもどおりの低め安定...。

採集方法としては河川敷で材採集することとなるのだが、何分、初めて挑む対象のため、事前情報を加味しつつ大半の作業を手探りで行わねばならない。

採集準備を整え、とりあえず河川敷へ突入した。

河川敷...。

幸い、雨はまだ降ってないので、早いうちに勝負を決してしまいたい。

そんな強い意気込みを胸に周囲を見渡してみると、この河川敷は私がいつも回っている茨城県のものとは異なり、なかなか流木関係が充実しているようである。

う〜〜ん、ゲットは確実!と大いに期待が高まるが、実際に叩いてみるとどれもカリカリに乾燥していて、全く歯が立たないものばかりであった...。

加えて、オサ好みのよく朽ちた材もそれなりに転がってはいるのだが、すでに割られたものが多く、おこぼれにも与れない悲惨な状況であった...。

実際、最初の2時間ばかりは、かなりの「苦戦」を強いられてしまった...。

さらに雨も降りだす始末...。

ああああ、もしかして駄目なのかなぁ...。

と、ため息をもらしていると、ブッシュの向こうにオサムシの入っていそうな材が見えた。

よし、こいつに賭けてみよう。

まずは丁寧に浮いている樹皮を剥がし、直下に何かいないかを確認。

何もいないので、材を崩しにかかった。

ゆっくり慎重にオノをかませ、何刀目かで「ザクっ!!!」と大きく崩れた瞬間、1頭の黒いムシが足下に転がり落ちた。

半信半疑で拾い上げてみると...。

これは...。


前胸背が青っぽいぞ...。

[ Limnocarabus porrecticollis porrecticollis (BATES) ]

っしゃ〜〜〜〜〜!!

採ったぞ〜〜〜〜!!

ああああああ、嬉しい...。

まじまじと眺めてみると、前胸背から上翅両側縁をコメットライクに流れる高貴な紫色、そして上翅の細かな彫刻美が素晴らしい。

噂通りに格好良く、非常に「格調の高い」オサムシだ。

う〜〜ん、やはり本物を見ないと何とも言えないものだなぁ...。

さて、まだ削れる部分が残っているので、もう少し頑張ってみよう。

端の方をしばらく崩していると、もう1頭、オサムシが出てきた。

おおおお、2頭目かな?

と思ったのだが、よく見てみると、ただのクロナガオサムシ(※)であった...。

こちらは単なるつや消し黒で、上翅も比較的のっぺりとしている。

※ 後日、コクロナガオサムシの一亜種であるトウホククロナガオサムシと判明(2003.03.04)


アキタクロナガオサムシ
[ Limnocarabus porrecticollis
porrecticollis
(BATES) ]

トウホククロナガオサムシ
[ Leptocarabus arboreus
parexilis
(NAKANE) ]

この材はなかなか状態が良いようで、当然、ゴミムシなども出る。

う〜〜ん、綺麗なゴミムシ。


ヨツボシゴミムシというらしい。

前脚がちょっと「長介風」...。

[ Panagaeus japonicus CHAUDOIR ]

さらに、もう1種似たような小さいゴミムシもゲットし得た。

この手の美しい紋を持つゴミムシはけっこう好きだ。

また、キバナガゴミムシという大腮の長い乙なゴミムシも出てきた。


ヨツボシゴミムシ
[ Panagaeus japonicus
CHAUDOIR ]

ニッポンヨツボシゴミムシ
[ Dischissus japonicus
ANDREWES ]


ヨリトモナガゴミムシ
[ Pterostichus yoritomus
BATES ]

キバナガゴミムシ
[ Stomis prognathus BATES ]

1時間ぐらい材と格闘しただろうか、この段階で体中びしょ濡れになってしまった...。

このままではインフルエンザウイルスとの戦いに負けそうなので、一端車へ避難し暖をとることにした。

で、しばらく温まっていると、採れたし「もういいや」という根情無しのムシがむくむくと顔を出してきた。

というわけで、一路、来た道を引き返す人となる...。


● 寄り道

さて、引き返すのは良いのだが、時間を見るとまだ昼前...。

フルにエアコンを入れ、寒さも感じなくなってきたし、もう一丁いっとくか。

ということで、「途中下車の旅」へ出ることにした。

地元の「いよおそぐるま」に進路を阻まれつつ下道をクネクネと走り、ポイントへ到着した。

首尾よくアイテムを携え、雨の山へ入る。

林道を一人、ポカンと口を開けて、てくてく歩いていると、斜面に良さそうな材がいくつか転がっているのを発見。

なかでも一番美味しそうな1本を崩してみた。

わ〜〜〜〜お!!!

君も、


アキタクロナガオサムシ


だよねぇ?

[ Limnocarabus porrecticollis porrecticollis (BATES) ]

さっきのポイントの個体よりも、幾分前胸背が黒っぽいが、間違いなくアキタクロナガオサムシの♂だ。

ラッキ〜〜!!

さらに2匹目のドジョウを期待して材と格闘してみたが、残念なことに、この1頭で打ち止めであった...。

出てきたのは毎度のゴミムシとコメツキムシだけ...。


アキタクロナガオサムシ
[ Limnocarabus porrecticollis
porrecticollis
(BATES) ]

クロモリヒラタゴミムシ
[ Colpodes atricomes BATES ]


アカハラクロコメツキ
[ Ampedus hypogastricus
(CANDEZE) ]

オオアカコメツキ
[ Ampedus optabilis (LEWIS) ]

ふえ〜〜〜と肩を落とすと、周囲はすごい雨...。

いつものように、眼鏡に付いた水滴で遠くが全く見えない状況だ...。

うううううう、寒い、やっぱ帰ろう...。

びしょ濡れになりながら退散...。

が、未練たらしくも、帰りがけにしょぼい材を叩いてみる...。

おおっと!

ビンゴ〜〜!


いてくれてありがとう。


でも、君は何オサ?

そして、子供のいたずら程度に目の前の崖をちょっとほじくってみると...。

っしゃ〜〜!

でも、君は何オサ?

合計4頭の小柄なオサムシをゲットできたが、結局、何オサか判らず...。

こういうとき、ど素人は手も足も、そしてぐうの音も出ないのだ...。

後日、ゲニタリアを引っ張り出してみようと思うが、それでも判らないかも...。

※ エサキオサムシと判明(2003.03.20)









エサキオサムシ
[ Carabus albrechti esakianus (NAKANE) ]

↓ 副産物@崖...。


スジアオゴミムシ
[ Haplochlaenius costiger
(CHAUDOIR) ]

クロゴモクムシ
[ Harpalus niigatanus
SCHAUBERGER ]

というわけで、ぴゅ〜〜〜〜っと、一気に帰宅したのであった...。


● エピローグ

気象条件的にとても辛い採集行であったが、なんとか目標としていたアキタクロナガオサムシを採集することができた。

それも、2つの異なるポイントで採れたのだから、昨日今日オサムシを採り始めた私としては上出来なほうかもしれない。

それにしても本当に良いムシなので、今度はもう少し数を採ってみたいところである。

そうは言っても、次回はいつになることやら...。


★★ 採集成績 ★★

ヨリトモナガゴミムシ 10 exs.
[ Pterostichus yoritomus BATES ]

エサキオサムシ 4 exs.
[ Carabus albrechti esakianus (NAKANE) ]

アキタクロナガオサムシ 2 exs.
[ Limnocarabus porrecticollis porrecticollis (BATES) ]

アカハラクロコメツキ 2 exs.
[ Ampedus hypogastricus (CANDEZE) ]

アオゴミムシ 1 ex.
[ Chlaenius pallipes GEBLER ]

オオアカコメツキ 1 ex.
[ Ampedus optabilis (LEWIS) ]

キバナガゴミムシ 1 ex.
[ Stomis prognathus BATES ]

クロゴモクムシ 1 ex.
[ Harpalus niigatanus SCHAUBERGER ]

クロモリヒラタゴミムシ 1 ex.
[ Colpodes atricomes BATES ]

コガシラナガゴミムシ 1 ex.
[ Pterostichus microcephalus (MOTSCHLSKY) ]

スジアオゴミムシ 1 ex.
[ Haplochlaenius costiger (CHAUDOIR) ]

トウホククロナガオサムシ 1 ex.
[ Leptocarabus arboreus parexilis (NAKANE) ]

ニッポンヨツボシゴミムシ 1 ex.
[ Dischissus japonicus ANDREWES ]

ヨツボシゴミムシ 1 ex.
[ Panagaeus japonicus CHAUDOIR ]


記載日:2003.02.17
追記日:2003.03.04(オサムシの誤同定を訂正)
追記日:2003.03.20(オサムシの種名が判明)
追記日:2003.04.01(アキタクロナガオサムシの学名を訂正)
採集記(総目次)2003年度 採集記(目次)茨城県 甲虫編 -7- へ続く....