ネズミでサシな旅...
へなちょこカミキリロード 2006 最終回
 

 
2006.10.09 (Mon)
 
ネ、ネ、ネズミサシぃ?、なんじゃそりゃ〜〜!

カミキリムシを本格的に始めた最初の秋、ネズミサシ(ネズ)という針葉樹のへんてこりんな名前にまず度肝を抜かれた...。

早速、新調したての植物図鑑で調べてみると、これがなんとも言えず「やる気の無い植物」といった印象で、当時の採集記では帰ってきたウルトラマンに出てくる「ザザーン」というヘドロ怪獣に似ていると比喩した記憶がある。

で、その語源というのが「ネズミの通り道に置いておくと、ネズミが痛がって通れない」ことらしく、つまりその鋭い葉で「鼠を刺す」、ネズミ除けの樹木なのだそうだ...。

う〜〜む、立体的に動き回るクマネズミはヒョイと飛び越すだろうから、おそらく効果はないだろうけど、昔の人はよく考えるなぁ...。

それはともかく、そんな一風も二風も変わった針葉樹を好んでホストにしているカミキリムシがいる、それもオオトラが終わり、コブ叩きもほぼ終わりに近づくこんな秋のど真ん中に活動しているのというだから、汚れを知らないウブなカミキリ屋にとっては、非常に大きな衝撃であった...。

そもそも、針葉樹の葉を掬ってムシを採るなんていう奇想天外な方法自体が信じられなかった...。

そのカミキリムシの名前はケブカマルクビカミキリ、学名 [ Atimia okayamensis ] から通称アテミア(アティミア)と呼ばれている。

本種の外見については図鑑やネットの写真を見ていただければ一目瞭然だと思うが、燻し銀のごとくくすんだシルバーの地色に、墨汁を散らしたようなとても渋い色彩をしたピリリと辛い小粒のカミキリムシである。

ただ、ぱっと見はまさにゲゲゲに出てくる「ネズミ(男)」そのものであり、私が和名を付けるとしたら、間違いなく「ネズミカミキリ」にしただろう。ホストもネズミサシなのだから、この名前以外は考えられない。

そして、採集記では「水木でしげるなカミキリ」とか「ネズちゃん」とか「ビビビちゃん」とか、そんな名前で表現していたはずだ。

さて、私がこのカミキリムシをことのほか意識するようになり、実際に採集へ出かけるようになってから、あっという間に5年という長い年月が過ぎ去った...。

1年目はほぼ下見、2年目は好条件にも関わらず惨敗、3年目は諸般の事情で採集活動を中断、4年目は悪天候で惨敗、5年目の春も惨敗と、本当にいいとこ無しであった...。

もっとも、都合4年目となる昨年は、中国地方に仕事で出張した際、ふさひげさんに貴重なタイプロカリティーのポイントを案内していただき、小雨の降る絶望的な状況ではあったものの、なんとか採らせていただいているため、正確には未採集種ではない。

しかし、そうそう採れるムシではないと分っていながらも、やはり自分の守備範囲とするエリアで、言わば「心のタイプロカリティー」とめぐり逢えていない、それも惨敗続きというのは、まったくもって不甲斐ないこと極まりないのである...。

で、実は今年はもう「真性野外成虫採集」はお終いにして、ルリクワガタやオサ・ゴミ系などを少々やろうか、あるいは条件が良ければ最後のコブ叩きへ行こうかなどと考えていたのだが、正直、これという決定打に欠ける内容ばかりであった...。それにこの3連休はずっと晴れるようなので、落ちるコブも落ちないだろう。

そんなことを びおすけさんと話していると、案の定「アテミアはどうだろうか?」という話題になり、この秋もダメ元で挑戦してみようかということになった。

もちろん、今までの惨敗経験上、気分的に盛り上がるテーマではなく、ちょっとやってダメならコブやドイに逃げようという、いつになくのっけからテンションの低い2人なのであった...。

ピピピピ! ぴぴぴぴ! ピピピピ!

早朝、枕元でけたたましくアラームが鳴ったが、なんだか体が重い...。

いつものような「デジタルな覚醒」とはほど遠い目覚めとなったが、一応、行くと決めたので、いそいそと準備をして車へ乗り込んだ...。

うひ〜〜〜!

重い体と車にムチを打ちつつ高速をひた走り、びおさんとの待ち合わせ場所を目指した。

「うい〜〜っす...」

『うい〜〜っす...』

びおさんもどうやら同じ心境らしい...。

それはそうと、いつもと見た感じが違うぞ!

なんと、メガネをしているではないか!

「あれ、前からメガネしてましたっけ?」と聞くと『ううん、気がつかないうちに、かなり視力が落ちてたので、作ったのよね...』とのことだ。

どうりで今まで採れそうで採れないムシが多かったわけだ。

でも、それって老...(後略)。

いずれにしても、メガネを装着したからには今後の快進撃が期待できそうである。

さ〜〜〜て、これからどうしようか...。

まあ、朝一番からどうしようもへったくれもないのだが...。

そう、2人ともこの朝の段階から「終了病」におかされているのだ...。

予想していたこととは言え、かなりの重症である...。

とりあえず、渋々と地図を取り出し、適当にエリアを決めて、まずはホストであるネズミサシの探索を行うことにした。

ということで、ぱぴゅ〜んぴゅん...。

・・・ 移動.com ・・・

で、第一目的地に到着...。

ネズミサシがたくさんありますように....、というアリヅカムシより小さな願いとともに出発...。


今日はススキからフェイス・オフ...

う〜〜ん、天気だけはいい...。

すると、いきなりアケビを発見...。

もう食べちゃうもんね...。


う〜〜ん...


たくさんあるけど、どれも中身がない...

仕方なく先へ行くが、本命のネズミサシはまったく見つからない...。

基本的には尾根筋にあるアカマツやヒノキ中心の雑木林なので、条件的には悪くないと思うのだが...。

時折林縁を叩いてみるも、どこもパリパリ@シャリシャリでムシが落ちる気配は微塵も感じられない...。

もう、なんでもいいから落ちてきて!


かろうじて...

なんとなくやる気の感じられない落ち方だが、アカクビナガハムシというのかな?

カミキリムシのように「ぎいぎい」と音を出すのでちょっとびっくり...。

ありがたく泣きゲット...。

結局、このエリアではネズミサシを見つけることができず、すごすごと退散...。

一旦、車の近くまで戻り、今度は別方向へ行ってみることにした。


やはり、天気だけはいい...

しばらく歩いていると、モミの樹幹に...。


おおおお...

こんなところにもオオトラがいるとは...。

これは新発見!

で、その後もぷらぷらと周辺を彷徨ってみたのだが、ネズミサシはないようである...。


ど〜ですかぁ〜?

ダメだね〜ということで、さらに先へ...。

おや、何か張り紙がしてあるぞ...。


なんと、お気軽クラブ...

お気軽なら、そっちへ行ってみるか...。

ん!


ドロボーはいけませんョ...

まったく雰囲気が感じられないので、一旦車道へ出て戻ることに...。

これだと遠回りになるが、来た道を(再び登って)帰る気力がない...。

傍らを猛スピードで車がビュンビュン通り過ぎる中、脇の茂みにもっさりとした樹影を発見した。

おおおお、あった、ネズミサシだ!


ああああ、やっとあった...

かなり樹勢がしょぼく、背後を頻繁に車が往来し、電線もあるという、最悪のシチュエーションだが、背に腹は代えられない。

勇気を出して掬うべし...。

ガサゴソ、ゴソガサ...。

一歩間違うと車に轢かれかねないが、電線に細心の注意を払いながら決死のスイーピングを試みる...。

外に飛び出した場所だけを何回か掬い、急いで安全な場所へ避難...。

一応、期待を持ってネットをのぞき込むが、クモとテントウムシだけであった...。

が〜〜ん...。

ガックリ肩を落としながらまたしばらく歩いていくと、運の良いことにもう一本を発見。

今度は先ほどより掬いやすい位置にあり、木も大きい。

早速、びおさんに掬ってもらう。


さあ、入るか...


珍しく力が漲っています...

「どう?」

『いねぇっす・・・_| ̄|○ 』

「厳しいねぇ...、せっかくだから既存産地を見に行きますか?」

『行きましょうか...』

ということで、一路、いつもの御神木へ...。


それにしても、天気だけはいい...

とりあえず、いつもの場所に車を停めて、いつもの順番でネズミサシを見ていく。

が、例年のごとく、どこも×であった...。

本当にいないねぇ...、時期と天気はバッチリなのになぁ...。

「あと1本だけ既知のネズミサシを見て、もうヤメにしましょうかね、で、コブは乾燥しすぎでさすがに落ちないだろうから、ドイを採って今日は早々に帰りませんか?」

『うんだ・・・。そうすっぺ・・・。』


果たしてメガネの効果は?

「入ってますか?」

『ダメポ...』

でへへへ、じゃあ、もういいですね...。

敗北感とともにネットを荷台へ仕舞い、ドイのポイントまで車を走らせた...。

で、ポイントに到着。

ドイは楽勝で落ちるでしょう、とタカをくくりながら採集を開始。


相変わらずオオトラはたくさんいるようです...


そして、相変わらず材もゴロゴロ...

これは2桁軽いとみた...。

が、予想に反し、これが全く落ちない...。


チビコブはなんとか...

ドイもコブと同じく乾燥し過ぎているとダメなのだろうか...。

非常に手厳しい状況ではあるが、まあ、1頭は採らないと寂しすぎるので、もう少し頑張ってみる。

頼むから落ちてくれ!

日陰のやや新しめの材へ渾身の一撃!


感謝!

ああああ、いてくれてありがとう...。

これで一安心...。

叩き網を畳み、そそくさと車へ引き上げる。

道へ出てみると、びおさんもドイとチビコブを1頭づつゲットできたとのことで、すでに終了病も末期という伸び切った状態になっていた...。

頭から湯気が出ている...。

さ〜〜て、念のため、帰りにさくっとネズミサシをもう一回だけ見て帰りましょうかね...。

ポン、ポン、ポンとネズミサシを逆順に再確認していく。

が、先ほどと同様、何の成果も得られなかった...。

なんでいないんだろう...。

基準産地での経験が全く活かせないのはとても悔しい。

そうだなぁ、一応、聞いてみるか...。

ここまでやってダメだったので、我々のやっていたことが正しかったかどうか、知人に聞いてみることにした。

すると、ご親切にもいろいろとアドバイスをいただけ、厚い心の雲の隙間から一筋の光が見えてきた。

ありがとうございました。

すぐに びおさんに報告し、アドバイスに従ってもう一頑張りしてみようかということになった。

その場所を見るだけでも勉強になるはずだ。

というわけで、その場所へ...。

適当に車を停めて、林内へ突入。

林内はアカマツのしょぼい二次林になっていて、すぐにネズミサシも見つかった...。

これは中国地方の環境と似ているな。

ただ、目の前のネズミサシはなんか見覚えのある樹形をしている。

あああ、そうか、これは初めてここへ来た年に掬ったネズミサシじゃないか...。

すっかり記憶力が衰えてしまったようだ...。

堂々と大ボケをかましてしまったが、落ち着いて周囲を探索してみると、実はかなりの数のネズミサシが生えていることが判明。

いてくれ! いてくれ! びおさんと大興奮しながら、それらを掬っていく...。

そして何百ヶ所を掬っただろうか、そんな悲痛な願いも虚しく、アテミアが2人のネットに入ることはなかった...。

こりゃ、本当にダメだね。

「このエリアのアテミアは絶滅!」と高らかに宣言し、この場を後にした...。

まあ、それでも環境の勉強にはなったから、また新しいポイントをコツコツ探そうね。 >びおさん

そうだね。 >るどちん

そうお互いを慰めながら、車を停めた場所まで戻ってきた。

精根尽き果てたという気持ちで一服しながら周りを眺めていると、何やらこの周囲にもネズミサシがけっこう生えているようだ。

まさかなぁ、ここまでやって1頭も採れないんだから、ここだって同じだよな...。

でも、一応、やっておくか...。

最後の力を振り絞り、手前から順に掬っていくことにした。

何本目だったろうか...、


うむ...、あのてっぺんの辺りにオーラが...

入れ〜〜〜!


う〜〜ん、君たちの愛のオーラだったのかな...

そんなことはないはずだ。

チクチクする痛い枯葉をかき分けつつ丁寧にネットの中を確認すると...、

ああああ、これは...。


入ってた...

っしゃ〜〜〜!!!!!!!!!!!!!

これぞ憧れ続けた 心のタイプロカリティ!

絶滅していなかったぞ!

「採れたぁぁぁぁ〜!!」

年甲斐もなく思わず大きな声を出してしまったが、めちゃくちゃ嬉しかった。

これを見たびおさんの目もみるみる本気モードとなり、メガネの下からキラっと閃光が放たれた。

ここはびおさんに任し、私は追加を得るべく違う方面へ行ってみることにした。

頑張れ、びおさん。

さて、別の林内、ここはとても薄暗くあまり期待できない状況であったが、雨でも採れたという変な自信がネットを伸ばさせた。

すると、今度は一撃!

小さな1頭がネットの底にコロっと転がっているではないか...。

おおおお、また採れた...。

おそらく、さっきのがメス、これがオスだと思う。

ああああ、これで思い残すことはない...。

急いで びおさんのところまで戻ると、びおさんは地べたに座り込んでいる...。

もう採れなくて諦めちゃったのかな?

「どう? こっちはもう一頭追加できたけど...」

『採れた』

ん? これは私にまた採れたの? と聞いているのか、びおさんが採れたのか、どっちだ?

よ〜〜く見ると、若干にやにやしているので、これは採れたな。

もう一度「採れたの?」と聞くと...、

『うん』

おおおおおお!

おめでとう〜〜!

なんだぁ、しれっとしているから、ダメなのかと思ったよ。

ここで悲願成就の証、久々の堅い握手!

この握手まで5年もかかってしまったが、嬉しさは5倍以上である。

ということで、2006年のシーズンは、最後の最後で驚くべき逆転劇とともにめでたく終えることができたのであった...。

なにはともあれ、お疲れさま&おめでとう。 >びおさん


うひ〜〜〜

★★★ 採集成績 ★★★

ケブカマルクビカミキリ、チビコブカミキリ(ミヤマ?ヘリグロ?)、ここのドイちゃま。

その他、超ビミョーなムシなど。

Walking data:16,373歩/8.186km/547Kcal

記載日:2006.10.11

 
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