オオクロカミキリ  Megasemum quadricostulatum KRAATZ, 1879
カミキリムシ科
クロカミキリ亜科
クロカミキリ族
オオクロカミキリ属

今回は採集時の同定が疑わしい種類を選んでみた。

これは福島県南会津郡にて灯火により採集した個体で、採集時の同定はサビカミキリであった。

本種が属するクロカミキリ亜科のカミキリムシは、日本に3族が知られている。

この仲間は主に針葉樹の伐採木上で発見され、灯火に飛来することもある。

ノコギリカミキリ亜科と同様に原始的な形態をしており、夜行性の種類が目立つ。また、互いに似ている種類が多いため、素人の「絵合わせ同定」では間違う危険性も高い。

ほぼ日本全国に分布し、活動期は7−8月となっている。

【採集データ】
福島県南会津郡 2001.07.21 灯火

体長は29.0ミリ

 → 採集記


触角孔と複眼の位置関係

カミキリムシ科→クロカミキリ亜科は省略する(今後の種で紹介予定)。

まず、第一段階として、ケブカマルクビカミキリ族(属)を除外する。

ケブカマルクビカミキリ族(属)の場合、「触角孔(=触角の基部)を複眼が上下および後方の3方から取り囲む」とある。

本個体では、浅く後〜下方が取り囲まれている程度で、少なくとも上方にはかかっていない。

実はさらにもう1点、「基肢基節孔後方が多少なりとも開く」というポイントをチェックしなければならないが、書いてある意味がよく判らないので今回は省くことにする。

とりあえず、触角孔と複眼の位置関係にて、ケブカマルクビカミキリ族(属)は除外できるだろう。


触角長、大あご

次に、クロカミキリ族(属)とマルクビカミキリ族を鑑別する。

この鑑別は容易であり、クロカミキリは「触角が数珠状で短く(♂でも上翅まで届かない)、大あごが大きい」特徴がある。

本個体の触角は数珠状ではなく、長さ的にも先端が上翅まで届いている。

さらに大あごも見えないぐらいに小さい。

この段階で、クロカミキリは否定的となる。

したがって、マルクビカミキリ族ということが決定。

触角長に関しては、♂では上翅先端の1/3を越え、♀では1/2に届かないとあるので、この個体は♀であろう。


前肢脛節の端刺

そして「前肢脛節の端刺」が、1本か2本かを確認する。

本個体は写真のごとく「1本(矢印)」である。

クロカミキリ亜科に属し、前肢脛節の端刺が1本のカミキリムシは下記の4属6種。

1.ケブカヒラタカミキリ属(1種)
2.マルクビサビカミキリ属(3種)
3.ムナクボカミキリ属(1種)
4.オオクロカミキリ属(1種)


前胸背板、頭部の点刻

次は上記4属のうち、ケブカヒラタカミキリ属を「前胸背板、頭部の点刻」の特徴にて除外する。

ケブカヒラタカミキリ属は「前胸背が縦長」とあるが、写真では縦横ほぼ同長。

また、「頭部の点刻が明瞭」とあるのに対し、この個体の点刻ははっきりしていない( 矢印)。

前胸背をさらに観察して、マルクビサビカミキリ属(採集時同定のサビカミキリが含まれる)と他の2属(ムナクボカミキリ属、オオクロカミキリ属)を分類する。

前胸背板の中央に「広い凹み」があり、多数の果粒が存在すればマルクビサビカミキリ属ではないとのことだ。

実際には、 矢印のように「広い凹み」があり、多数の果粒も存在している。

したがって、本個体はマルクビサビカミキリ属ではないことが決定した。

すなわち、この段階で採集時の誤同定が判明してしまったことになる...。


上翅端内角

というわけで、最後はムナクボカミキリ属とオオクロカミキリ属の鑑別を行なえば終了となる。

それには、上翅端の内角が「尖っているか(=ムナクボ)」「丸いか(=オオクロ)」という点に着目する。

本個体は緑線で示したように、明らかに「丸い」ため、オオクロカミキリということになる。

今回は♀であるため関係がないが、♂の場合は「前肢基節に刺状突起があるか、ないか」でも鑑別できるそうだ。

参考のため、写真を載せておく。

これは腹側より前肢の基節部をスケッチした図である。

オオクロカミキリの場合は矢印のような、「刺状突起」があるらしい。

なければ、ムナクボカミキリということになる。


オオクロカミキリでも、♀の場合はそのような突起がない。

と言っても、写真では判りづらい...。


エピローグ

初めての誤同定であったが、これでどこに着目すべきかがよく理解できた。

つまり、この手のカミキリは「前肢脛節の端刺」「前胸背板の形態」「上翅端の形態」などにまず着目すれば大きな間違いをしなくて済みそうである。

まあ、1種増えたわけであり、それは「うれしい誤算」と言えよう。

というわけで、関係各所を訂正しておいた。

記載日:2001.09.08

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