オオホソコバネカミキリ  Necydalis solida BATES, 1884
カミキリムシ科
ホソコバネカミキリ亜科
ホソコバネカミキリ属
ホソコバネカミキリ亜属

まずは最も思い入れの強かった「ネキダリス」の同定に挑戦してみたいと思う。

これは青森県にて採集したもので、採集時の同定はオオホソコバネカミキリの♀である。

ブナ林に生息し、主にブナ(特に多い)、ダケカンバ、ミズナラの衰弱木や立ち枯れに飛来することが知られている。

ほぼ日本全国に分布し、活動期である7〜8月に多産地のブナ林へ行けば、比較的容易に採集できる種類と言われている。ネキの入門種といったところだろう。

ちなみに、体長は24ミリであった。

【採集データ】
青森県 2001.07.25 ブナ立枯表面

 → 採集記

それでは同定を始めよう。


腹部

カミキリムシ科であることは調べるまでもないので、最初は図説の「ホソコバネカミキリ亜科」の欄から見ていこう。

まずはカミキリをひっくり返して、腹部を観察する。

「腹部第1節(矢印)が幅広く、他の節と幅がほぼ同じ」であれば、ホソコバネカミキリ亜属とのことだ。

こいつはそれに当てはまる。
ちなみに「腹部第1節が細長く、他の節より幅が狭い」場合は、アイヌホソコバネカミキリ亜属だ。


後肢腿節

次に、後肢腿節の特徴を観察してみよう。

この個体では、後肢腿節遠位端が緩やかに太まっている(緑色線)。

これはホソコバネカミキリ亜属の特徴であり、逆に急に強く太まる場合は、アイヌホソコバネカミキリ亜属だ。
これで、こいつはホソコバネカミキリ亜属であることが確定した。


上翅尾側端

次は上翅尾側端を見ろと書いてある。

鑑別ポイントは、上翅尾側端が「裁断状」か「鋭角的に尖って上反している」かである。

この個体では前者の「裁断状」、つまりハサミで一刀のもとに丸く切り取ったような形をしている。少なくとも、鋭角に尖ってはいない(緑色線)。
ちなみに後者の場合、トガリバホソコバネカミキリであることが決定する。

黄色矢印の説明は後ほど。

というわけで、先へ進む。


触角

次は触角の特徴を見なければならない。

触角の先端部の色を確認する。

もし、ヒゲシロホソコバネカミキリであれば、先端部8〜9 節(矢印)が白(♂)、または8〜10 節が黄褐色(♀)とのことだ。

こいつは黒単色のため、ヒゲシロホソコバネではない。


前胸背板


前胸背板中央部は凹み、「ふたこぶ(矢印)」がある。

中央部が凹まない場合は、カラフトホソコバネカミキリに決定するが、この個体は違うようだ。


再度、触角

ここでクロホソコバネカミキリを除外するため、もう一回触角を観察する。

触角第4節は第1節とほぼ同長で、♂♀とも第3節よりも短ければ、クロホソコバネではない。

まさにそのとおりであり、クロホソコバネの可能性はなくなった。

さて、だんだん核心に迫ってきたぞ。


再度、上翅の形態

さあ、これで最後。

再度、上翅の特徴を観察する。

「上翅の会合部が中央よりやや頭側」に存在していれば、オオホソコバネカミキリと確定するのだが...。

一方、上翅会合部が尾側末端にあれば、ホソコバネカミキリということになる。
この個体は矢印のごとく、かなり頭側に上翅の会合部が認められる。

よって、ようやくオオホソコバネカミキリであることが決定し、採集時の同定に誤りがなかったことが判明した。


エピローグ

いや〜〜、本気で同定作業を行なうとなると、かなりしんどい。

あまりの鑑別ポイントの多さに尻込みしてしまうが、今回のように採集した個体を自分の目で詳細に観察し、地道に知識を蓄積していく他ないだろう。

「カミキリ屋に王道なし」といったところか...。

しっかし、これらの特徴を逐一調べ上げていかれた先輩方はすごい。

というわけで、今後もこのような形で目ぼしい種類、あるいはよく見かける種類から同定作業を行なっていけたらと思う(シーズンオフのライフワークとなるだろう)。

ただ、更新には時間がかかる可能性大です...。

記載日:2001.08.12

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